#127 仮初が終わる
「エクスキューションの連中を連れてきてやったてわけよ」
「どうやって連れてきたんですか?」
「えっ、簡単よ。エクスキューションマクイル支部の術線を借りて、乗っ取りもどきをしたらすぐ飛んできたぞ?」
それ下手したらシーウェーブさんがやられていたのでは?結果的に上手くいったようで辺りで鳴っていた金属音が止み。辺りで戦っていたアルドリア兵から紫色のゲル状の物体が出てきて術式で転送されていった。
「今の転送術式まさか...どうやらここでお別れのようだ、命拾いしたなソール、そしてネクロパイレーツよ」
「なんだよ俺が着いた瞬間引いていくなよ。確かに俺よかエクスキューションの連中の方が先に戦ってるがよそんな一瞬で変わっちまったのか?」
「どうやらそのようですシーウェーブさん。辺りで戦っていたアルドリア兵から気味の悪い何かが出てきてましたから」
「次に会った時はこうはいかないからな覚えておけ...」
血が滴る背中を抑えながら竜騎兵は転送術式に消えていく。一瞬の静寂の後辺りから歓声が上がり始めた。互いに多数の犠牲者を出しながらも今ここにヒルドリア軍とアルドリア軍の戦いに幕を閉じた。だがこれを皮切りにあちこちで魔物や魔獣の動きが活性化が始まるとは知らずに今は勝利を噛みしめていた。
戦いから数日が経過しアルドリア獣国にて国葬が行われた。この戦争で亡くなったアルドリア、ヒルドリア両軍多数の兵士の名が読み上げられていた。そして最後に王家の名が読み上げられようとしていた。
「我らがアルドリア獣国騎士団団長。竜の子供、獣剣術の使い手、ゴルドレス・ビース、そしてビース族でも稀有な白虎種でもあり我が伴侶であった、アルドリア王...いえホワイガー・アルドリア・ビース」
「海底王国ヒルドリア第5代国王にして勇者ソールより武器術を教えられた我が夫。竜の子供、鱗槍術の使い手、キール・ヒルドリア・フィンシー」
花を慰霊碑に手向けしばし黙祷を捧げた。
ミュリル様とフィオルン様がこちらに向き直ってそれぞれ拡声術具を取り出した。目の前の映像術が施された鏡の前に立ち世界各地の対応する巨大な鏡に2人の姿が映し出された。
「この戦争で我らが負った傷は癒えないかもしれません」
「それでも私達は前に進まなければなりません」
「今ここにいらっしゃる我がアルドリア獣国、海底王国ヒルドリア、自警団エクスキューション」
「そして鏡の向こうで聞いている、国に残してきたヒルドリアの民達。メルドリア王国、サルドリア帝国、エルドリア共和国、並びに冒険者の皆様方」
「まず私達は皆様に謝らなければなりません。四十八年前に勇者ゴレリアスと共に戦い魔王軍、そしてゴレリアスが倒したとされる魔王ラ・ザイールは封印されただけで今も生きています」
「ここ数年神隠し、スタンピード、異常気象などが起きていたのは魔王軍の三魔将軍。叡智のサピダム、狂猛のフュペーガ、夢幻のドリューションの魔族達の計3体を筆頭とし魔王復活へと動き始めました」
「ヒュード、マイオア、ビース、ウィンガル、フィンシーの五種族。そして過去の大戦でその大多数が身を隠してしまったデビアの方々」
「魔王ラ・ザイールだけは蘇らせてはいけない。また先も視えない暗闇の時代が始まってしまいます!」
「「1人1人が出来る限りのことをしてこの世界を守りましょう!」」
とある場所の前で座る1人の老人が手持ち鏡で演説を聞いていた。鏡の向こうで話す2人と同じくゴレリアスと共に旅をした世界最高齢のウィンガル族が座って聞いていた。冒険者ギルドを作った術の祖にしてマジックアルケミストと呼ばれる者、ノレージ・ウィンガルだ。
「これで遂に世界全体にかけていた術を解いたのじゃなミュリルよ。ようやく世界そのものが魔王軍のことを長い時を経て皆が再認知しだすのじゃな」
48年前にも同じような演説を行いこれを聞いた世界全体の者達を皆{幻}で包んだ。まだ魔王が生きているということをあの時点では広めなかった。人々は希望を失い再び魔王軍が復活した時に儂らと共に戦える者達も少なくなるのではと思ったからだ。
元々冒険者というものはあったが傭兵と変わらなかった。儂は冒険者ギルドを作りその中で仲間を作ったり自警団を作らせたりすることで、冒険者というものをより巨大な物へと成長させることが出来たはずだ。
「今度は儂も共に魔王城へと行けたらいいがの、ゴホッゴホッ...」
48年前はエルドリアの方で一大事があったために儂は魔王城目前でゴレリアス達と別れ、次に会った時には左腕を失ったゴレリアスと悲しみに暮れた若者達を見た。
あの中で今も生き残っているのは儂、フィオルン、ミュリル、アンクル、ゴレリアスの5人。あの当時の仲間だけでは勝つことは出来ないが全員が揃えば魔王以外にならば苦戦もしないはずじゃ。
「ウヌベクス、フィーザー...お主らも空から見ているのか?旅の途中で死んでしまったウヌベクスはさておいてフィーザーよ、お主も儂を置いていったのじゃな」
ウヌベクスは21、フィーザーは78でこの世を去ってしまった。じゃが儂も生を受けてもうすぐ226となる。もしかしたらそろそろヌシたちの元に逝ってしまうかもしれない。その前に仕事をこなさなければならぬからなもう少し待っていてくれ。
「もうこの場でやることは終わったの。そろそろあの場所に向かうとするかのじゃあ行ってくるぞ」
儂は翼を広げ空へと上昇してから元いた場所にあった慰霊碑に向き直り礼をし、目的の場所に向けて飛んでいく。儂が今から向かう場所は魔王軍三魔将軍である叡智のサピダムの研究所があるとされる場所だ。
メルクディン大陸の北東部に位置しており、激しい吹雪が舞う極寒地帯そんな場所に儂はいる。持てる儂の力を持ってしてもどこまで戦えるかは分からない。昔に比べたら練度は高くとも全盛期に比べたら保有魔力量に関しては雲泥の差じゃからの。
「ゴレリアスよ、儂に生きる意味をくれたことに対して今ここで感謝を伝える。お主が今どこで何をしているのか結局分からなかったな。もしあの世で会えるならば皆一緒に酒でも飲めたらいいの。もう何十年だろうが何百年だろうが儂はお主らのこと待っててやるからの」




