#115 三魔将軍
さてどうしたものかと考える間もなく相手が襲い掛かってきた。ゴルドレスさんは大剣を垂直に振り下ろし、アルドリア王は踵落としをしてきていたので剣に魔力を込めて受ける。
「・・・少し見込みが甘かったみたいだ」
デビアとして覚醒し身体能力・魔力が格段に向上した今の状態、この2人の攻撃を受けれると思ったがまさか弾き返せるほどの余裕があるとは思わなかった。理由として両者共に魔力を使って戦うのだが無理やり死体を動かしている状態なので強みがない。過去に見せてもらったことのある武器術(確か※獣獄だったか?)なら今頃自分は叩き潰されていただろう。目の前で何が起こったか分からないと言った感じで顔を見合わせるビース族きっての実力者達。
「この強さで生きたゴルドレスさんとまた戦ってみたかったな。今ならいい勝負出来...いやそれはないか」
アルドリア王の強さはベルゴフさんから聞いた話だと『アルドリア王のこと?あぁ拳術のキレがとんでもないな流石に白虎種だったな。まぁ姉貴(フィオルン様)よか弱いから安心しな!』と言っていた。あとは先程受けた攻撃の感じからしてもベルゴフさんや三魔将軍、凶猛のフュペーガの様にパワーに特化でもなく、この間戦ったジャックの様な速度特化でもない、技に特化した拳術士の様だ。
魔力を使わなくても英雄並み、紫ランク相当の実力を持っていても不思議ではない。だが実は自分もこれまで旅をしてギルドカードの色は青色になりかかっていて、他のみんなも同じく青色になりかけだ。その中でもベルゴフさんは既に紫色になりかかっており、王家の認証さえあればいつでも紫ランクとなれるだろう。
「ゴルドレスさん、アルドリア王、そろそろ楽にしてあげますから暴れないでくださいね」
「「ウガァァァァァ!」」
「どうも2人共暴れたいみたいですね付き合いますよ」
2人がそれぞれ構え直してゴルドレスさんは回転斬りを、アルドリア王は姿勢を低くして勢いよく回し蹴りを放ってきた。それほど早くないので回避行動を行い、そのまま空に飛んで単調すぎる行動を見ていた。
ここまで2人の動きを見てきたが流石に揃い過ぎている。操る相手の力が強大だと単調な命令しか送れないか、そもそも死体に無理やり魔力を込めて動かしてる為に先程から2人の行動が被っているのかもしれない。(縦斬りと踵落とし、回転斬りと水面蹴り、それと攻撃を仕掛けてくるタイミング)
「ふうむ、1人ずつしかまともな攻撃を命令できないものじゃな。それにしてもこれは見事な{ドーム}を貼るものじゃな。見立て通りやはりヒュード族ではなくデビア族じゃったか勇者よ」
真上から声がして振り向くとそこには三魔将軍、叡智のサピダムがいた。
「なんでお前までここにいるんだ!」
「いたっていいじゃろう?もうこの国は我ら魔族の国といっても過言ではないか?」
「そうさせないために今ここに自分達が来てるんだよ!」
「まぁまぁ怒るでない。儂はこの実験が終わったら帰るから頑張るんじゃよ?この戦場にはもっとめんどくさいのがおるからな」
一体何のことを言っているんだ?剣に魔力を纏わせて弱点と思われるところを斬り抜いて2人を元の死体に戻す。{ドーム}を解除して城内に向かったウェルン達を追った。
斧と白金の拳がぶつかり合い周りで戦闘していた人たちがその衝撃によって吹き飛ばされる。今俺が相手しているのはエクスキューション三闘士剛力のドーガである。しかしこいつも中々やるもんだな四割の力で今のところ対処してるがもう少し本気でやるか。
「中々やるな同郷の拳術士よ!俺の斧を生身の身体で耐えるやつなんぞ初めてだ!」
「へっ!刃物に負けるような鍛え方してたら師匠が地獄から拳入れにくるからなっと!!」
「お!?うおぉぉぉ!!!」
もう一割ギアを上げてボディーブローを3連続で放ち相手の体制が崩れる。顔がさらけだされたのでそこにストレートを思い切りぶち込む。鎧越しではあるがかなりの手応えを感じドーガがよろけた。その瞬間術式が展開され大きな聖術の柱に飲み込まれた。遂には体勢を崩して地面に這いつくばるドーガがおり何やら苦しそうだった。
「き、貴様ら2人だったのか!?卑怯だぞ正々堂々1人ずつ戦え!」
「確かに私達は卑怯かもしれません。それほどあなたのことを敵視しているからこそ相手しているのです」
「たがが俺如きにそんなに人数をかけて本当にいいのか?今頃我が部下たちがお前の兵士を...」
「そんな簡単にやられないと知っているからこそ。今ここにあなたを倒すためにミュリルと私とベルゴフがいるんですよ」
「3人じゃねぇか...まぁいい、もうこの弱い生物を演じる必要がないのなら本気を出すとしますか」
渾身の五割ストレートとミュリル様の聖術を受けかなり瀕死状態のはずであるドーガ・べレイス。奴は立ち上がり身体のあちこちからまるで泥のような塊が出てきて身体が二回り大きい姿へと変化した。
「どういうことだ?おまえはドーガ・べレイスじゃないのか!?」
「まぁ半分正解半分不正解といったところだな。今目の前にいる人は純度100%のドーガ・べレイスで少し身体がおおきくなっただけですよ?」
「喋り方が変わったなそれが素なのかドーガ、いや三魔将軍夢幻のドリューションて言った方がいいのか」
「やっぱりそうなんじゃないかと思ったわ。でなきゃアルドリア王とゴルドレスがやられるわけないもの」
「なんだ気づかれていたのか。だから人っ子1人の対処にしては手厚かったんだな」
高笑いを始めたそいつの他に強大な魔力を感じた。そちらの方向に目をやると突如砂柱が上がっていた、忘れもしないこの闘気は...
「ああ、やっと外に出てこれたぜ!これで思う存分壊していいんだよな?サピダム!返事は聞かねぇぞもう我慢出来ねぇからよぉ!!」
距離があるというのにこちらまで聞こえてきた。その声で奴が三魔将軍凶猛のフュペーガという事が確定した。あっちの戦場に対抗できるのは誰一人としていないはずだ。これはだいぶ不味い状態になってしまったヒルドリア軍が全滅するのも時間の問題かもしれない。
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※獣剣術 秘技 陸の剣 獣獄
剣に魔力を込めて地面へと叩きつける剣術
その威力はすさまじく巨大なクレーターを作るほどである
アルド砂漠に存在した高砂丘は全てこの剣術の練習台となり全て潰されている




