#11 謎の魔術師
翌朝自分は目を覚ましてすぐに襲撃された村の復興を手伝っていた。ウェルンは聖術で負傷者の手当てをしている。聖の術適性には唯一回復術が使えて尚且つ攻撃術は高威力なのだがただ一点消費魔力がほかの術に比べて高いことが欠点だ。
「すいませんちょっと魔力足りなくなってきちゃったんで・・・」
「いえいえこれでだいぶ治療が進みましたありがとうございます」
村医者はそう答えてニッコリすると助手の人を連れて違う家へと問診へ向かっていった。こちらに歩いてくるウェルンは少し疲れた表情をしていた。かなりの人に回復術を使ったのだろう。
「お疲れ様ウェルン、はい魔力剤」
「あ、ありがとうちょっと魔力使いすぎちゃったみたい」
と言ってウェルンは村宿に向かっていった。かなりの人を治療する為に魔力を使ったので少し休むのだろう。自分も朝から働きづめだったので大木の下で腰を下ろした。この大木からは聖の魔力が溢れていて魔物は近づけない。今回の襲撃でもこの大木は避難所となっていた微かに魔力が回復しているような気もする。
「でもなんでここまで魔物の動きが激しくなってるんだ?」
「冒険者さん!冒険者さん!」
「ちょっとあなた!怪我治りきってないんですよ勝手に出歩かないで下さい!」
ん、なんだ?なんか騒がしいな何やら慌てて駆け寄ってくる村人が...いや怪我人か?そして後ろから先程の医者の助手の人が追いかけてきてる。駆け寄ってくる村人が安静にしてた方がいいというのが近づくにつれて分かるぐらいにひどい怪我をしていた。こちらも急いで駆け寄る。
「どうしたんですか!?」
「いやあんたを冒険者と見込んで、ゴホッゴホッ」
「大丈夫ですか?今回復術をかけます」
表の騒ぎに村の人々も集まってきた。ウェルンも戻ってきて損傷がひどいので応急処置を行う。だが完全に傷を塞ぐことは出来はしなかったが先程よりは安定しているように見える。
「はぁはぁ、いや急ぎだったもんでほんとすいません」
「何か急ぎで頼みたいことでもありましたか?」
「あっ、そうだった、フゥ...私はとある人に頼まれて王国のギルドに依頼をしにいくところだったのですが途中で傷が悪化してこの村で治療を受けていたんです」
「ここまで重症なのはもしかしてですけど他の村の生存者とかだったりしますか?」
「そうです!私、ここより北にあった、村から来た者、です」
「落ち着いて話してくださいまた傷が開かないようにゆっくりでいいので」
「は、はい!あの方が言うにはこの魔物達の本拠地が分かったので応援を呼んできて欲しいと」
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「どこからどう見てもあの不自然な建造物が本拠地だね」
「こんな野原が続いてるなかに新しめの神殿があるわけないもんね」
石造りの神殿いやダンジョンが野原の中にぽつんとあった。先程から入口を監視しているがサタニエルが時折どこかに飛んでいったりしている。昨晩襲撃した魔物達の本拠地はここと見て間違いがないだろう。ウェルンと一緒にダンジョンの入口へと足を進め中へと侵入していった。内部では魔物達に遭遇しながらもそれらを倒し階段を降りていき地下2階に到達すると大きな扉がありその前で少し休憩をしていた。
「ふぅ流石に応えるなぁ、もう少しだといいんだけどな」
一休憩を終えて城の城門ぐらいの大きさはある扉を開けると奥で誰かが倒れていた。その周囲には村を襲撃したサタニエルよりは二回りほど大きいのが十数匹は息絶えていた。そしてまだ新しめの血の匂いがし倒れている人に近づくにつれてだんだんと音が、ん?この音って...
「あの人もしかして寝てない?」
「そうだね、聞き間違えじゃなきゃこれいびきだよね」
「あっ待って!罠かもしれな」
疲れ果てて寝たのかどうかは分からないがこんなところで寝かすわけにもいかない。いびきをかいている目の前のおじさんを起こそうとすると姿が突然消えた。代わりに黒い何かが自分の身体に降りかかってきた。
「ふぉっふぉっふぉっ、ここまで冒険者が来るとは思わなかったぞ」
声がした方へ振り向くとそこには黒装束の男といびきをかいて寝ているおじさんがいた。いや待て待て今のはなんだ?あんな術はどの系統にも分類されないぞ。
「ソール、今のは魔術での幻惑と妨害よ」
「ふぁっふぁっふぁっ!そこのお嬢さんはよく分かっておられる、そしてそこの坊っちゃんは初めて喰らったかの」
今のが魔術なのか。確かに便利かもしれない幻惑はとても使いやすそうだ。妨害術も喰らったらしいが特に不自由を感じるわけでもないので効果を実感出来なかった。とりあえず目の前の敵を何とかしよう。あの黒装束は攻撃を仕掛けてきた。でもどうして自分らと同じ言葉を話せるんだ?魔物ではないのか?
「あなたは何者ですか、魔術を使うということはあなたもこの迷宮に関わりがあるのですか?」
「そうじゃな正解じゃ儂は{あの御方}の意思を伝えるためにこの場所に迷宮を作ったのだ!」
「その人も眠らせたのはお前なのか?」
「こやつは上の階層に配置してきたB級のサタニエルを全て倒して儂のもとに辿り着いたところを魔術で眠らせようとしたのだが、ここに入った途端こやつ急に寝おったのじゃまぁ寝てくれてありがたいがのぉ」
ここまであまり強い敵と遭遇しなかったのはあの人が全て倒していたからなのか。この部屋の中にあるB級サタニエルの亡骸から判別できることがある。あの寝ている人は少なくともここに来るまで見かけたおよそ30個の亡骸、つまりそれら全てを倒していることになるので、赤ランク2人相当以上の強さを持っている。
あとなんだか気になることを言っていたな{あの御方}?まぁそれはまず無力化させてから事を運んだほうが良さそうだ。あの今眠っている人からまず遠ざけさせないと戦いづらいな。
「ソール行くよ、前と違って今度は止められるかもしれないから」
「ウェルン・・・」
コルロのような悲劇は起こさせたくないその一心なのだろう。そこに関しては自分も一緒だ。悲しませたくない人が隣にいる、こいつを倒して悲劇の連鎖を止めるんだ!だがこの時は知る由も無かった簡単な薬草採取依頼を受けていなければ自分と勇者について、そして魔王軍との戦いに干渉することがなかったかもしれない。そんなことは知るはずもなく目の前の魔術師へと挑んでいくのだった。
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どうも作者の新村夜遊です
更新が毎度不定期ですみません
自分でもなんとか捻り出して文を書いている状態なので
だいぶ変な小説になっているかもしれませんが
それも含めて楽しんでいただけたら少し気が晴れます
現在ストックはありません毎回描き終えたのと同時に投稿しています
いやーほんと文が降りてこない日々が続いておりますが
長い目で見ていただけたら幸いです
次はもっと早く出せたらなと・・・思、います
2020/03




