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トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
知るべき時

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108/246

#108 集中修練


「はぁぁぁぁぁ!」


 ウェルンが杖を構え術式を展開しバーティカルを形成する。術人形に向けて飛ばしその途中で剣の形に変わり深く突き刺さって爆発が起きた。この一週間でウェルンはミュリル様に個人指導してもらい、聖術の練度が飛躍的に向上し自分とネモリアさんはというと...


「おーう坊ちゃん休みは終わりだぞぉ!」


 少し離れた距離から瞬時に詰めて自分の前に現れ拳を振るってきたベルゴフさん。動きに盾を合わせて勢いを完全に殺すが下からもう一つの拳が飛んできた。ギリギリ躱したと思ったら襟を掴まれて空中に投げられる。


「空中に投げ出されたらどうするんだぁ?」

「ソールさん!」


 名前を呼ばれた方向に手を伸ばすとさらに上に投げられ態勢を整え下を見据える。そこにはネモリアさんが弓を構え狙いを定めていた。


「{荒風鳥(ストーム)}!!」


 魔力を帯びた矢を打ち出すと鳥が具現化され、激しく羽ばたかせてベルゴフさんが地面に向けて吹き飛ばされた。今のは新たに会得した鳥弓術で肆の弓{荒風鳥(ストーム)}を放ちベルゴフさんと距離をとったのだ。

 地上に降り立つとベルゴフさんは距離を詰めてきており、ネモリアさんが応戦しようとするが左腕を振るうとネモリアさんが立ち眩みを起こした。自分も迎え撃とうと剣を振るうが空を斬る。いつの間にか背後に回っていたベルゴフさんに蹴り飛ばされネモリアさんと衝突し共に倒れこむ。


「きゃあ!」

「っててて、大丈夫ですかネモリアさん!?」

「ええなんと、ハッ...離れてぇぇ!!」

「えっ?」


 戦闘で研ぎ澄まされていたのか分からないが、ぶつかった衝撃で自分が地に手をつけその下にはネモリアさんがいる。まるで自分が押し倒しているという状況を即座に判断出来た。そんなことに気づいた頃には既に遅く自分の左頬には平手打ちが決まり甲高い音が鳴り響いていた。


「あっごめんなさいソールさん、私ったらつい...」

「決まり手はまさかの味方の攻撃か!ガッハッハこりゃ傑作だ闘気も教えたら簡単に身に着けられそうだな」

「いやーそんな気がしますよ。あれだけ速い攻撃を出せる人は中々いないですよ」

「そうですか?ベルゴフさん今度闘気術も教えて下さい!」


 実際油断していたとはいえあれだけ腕のスナップが効いた速い張り手。過去に喰らったことは一度も...いや一度はあるな。元気にしてるかなセリルちゃん?それにしてもあの体躯で放ったにしてはかなりの威力だったな。


「お兄ちゃん大丈夫?」


 手を差し伸べられたのでそれに応じ身体を持ち上げる。キュミーも現在とある人に鱗槍術を習っている最中で今はその休憩中なのだろう。


「どうぞソールさんこれどうぞ」

「あ、ありがとうございますキールさん」

「いえ命の恩人である貴方方にはこれぐらいでは物足りないですからね。今後もお手伝いさせていただきますよ」


 この人はキール・ヒルドリア・フィンシー、つまりキュミーの父親でこの国の王であるミュリル様の夫である。キュミーのことを守り海に散ったと思われていたがどうやら違ったようだ。

 ウェルン達が流れ着いた第一ヒルドリア球領で囚われの身となった。魔物を作り出す核として利用されていたところを助け出された。ウェルンの応急処置により一命を取り留めた、キールさんに案内され先にヒルドリアへ到着出来たらしい。


「お父さんそろそろ次の鱗槍術教えて!」

「いいぞー今そっちに行くよ―」

「お兄ちゃんも頑張ってね!」


 手を振り返しながらその一つ一つの動作を見て心の中でかわいいなぁと思ってしまう。ミュリル様の娘なのだからそう思ってしまうのは仕方な、


「いててて!?」

「ソール?何キュミーに見惚れてるの!」

「えっいやそんなことは...あるけど...」

「ふーん否定しないんだ。まぁ本当にキュミー可愛くなったもんね。そういえばソールこの後暇?」

「うん?ああ、ベルゴフさんが今日はネモリアさんのことを鍛える日だって言ってたから、この後は空いてると思うよ」

「やった!じゃあ準備してくるね!」


 出口に駆けていくウェルンの後を自分も追うように訓練場を出て自分の部屋に戻る。メルドリア以来のデートだ、前と似たような間違いはしないぞ。意気込んだものの何を着て行けばいいんだ?ウェルンはきっとおしゃれな格好になるだろう。だが自分にはどう組み合わせたらおしゃれになるのかが分からず途方に暮れていた。その様子を見ていた外で待機していた執事の方が部屋に入ってきた。


「どうやらお困りのようですね勇者様」

「あっはいそうですね。どんな服を着ていこうかと思ってまして」

「それならば私にお任せください」


 手を叩くとどこに待ち構えていたんだというぐらい、突如としてたくさんの人が部屋に入ってきた。いつの間にか椅子に腰かけさせられて髪のセットからすべてをやられた。もみくちゃにされながらも人がいなくなった後、鏡を見るとそこにはいつもと違う綺麗な格好をした自分の姿があった。


「これでよろしかったでしょうか?」

「ありがとうございます!それじゃあ迎えに行ってきます!」


 にこやかな笑顔で送ってくれる執事の方々に手を振った。足早にウェルンの部屋の方に曲がると誰かにぶつかってしまった。


「すいません前を見ていませんでした大丈夫ですか?」


 自分がぶつかった彼女の横にはベールが落ちており素顔がさらされていた。とても驚いた表情をしていたが怪我が無いことを確認して手を差し伸べる。身体を持ち上げ落ちてるベールも渡して自分はその場を後にした。

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