表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トゥルーテークオーバー  作者: 新村夜遊
知るべき時

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/246

#107 海底王国ヒルドリア

 船で揺られている間自分は育ての父に言われ長年続けてきた習慣の一つである瞑想をしていた。弐の剣を使えるようになるまではこの行為自体に意味を感じなかった。大気に漂う澄んだ魔力を自身に取り込む修行だと気づいた。

 これが出来るようになってから魔力を纏わす為に必要な魔力量が減りより効率よく高威力の武器術を繰り出せている。父親が言うには極地まで追い込んだ剣術士は皆別人のような身体能力を一時的に得られるようになる。身体を揺らされたので瞑想を解くと視線の先に都が見えた。


「お兄ちゃんあそこがヒルドリアだよ!」


 ヒルドリアの上には光り輝く球体があり、まるで日が射しているかのような光が当たっていた。地上でいう所の太陽みたいなものでおそらくだが魔道具なのだろう。


「このままヒルドリア城に到着しますので準備の方をよろしくお願いします」

「着く前にあの上にあるの聞いても大丈夫ですか?」

「ああ{人工太陽}ですね。あれはゴレリアス一行の方々と別れる際にミュリル様がノレージ様からもらった魔道具です。定期的に火と光の適性を持つ者が魔力を注ぐことで輝きを維持することが出来るのです」


 あれ程の質量の物をどうやって運んだのか気になった。聞いて見ると最初は手に収まるほどで輝きに応じて大きさが変わるらしい。中は魔力を増幅する構造になっており、魔力を注ぐ量は少なくても大丈夫らしく誰でも込めることが出来るとのこと。

 そんなことを考えているとヒルドリア球領に入っていき城へと近づいていく。今までメルドリア・アルドリア・サルドリア・エルドリアと四つの国の城を見てきた。外観は鑑賞するためと言っていい程とても綺麗な作りをしていた。


「きっとヒュリル様が生きておられると知ったらミュリル様大変喜ばれますよ」

「うん...そうだけどでもお父さんが...」

「キュミー、自分も大切な人を亡くしたことがあるんだよ、でもその人達ってそういう顔になるのを望んでないんだよだから笑顔でいないと空から見てるお父さんも悲しんでるかもよ」

「うん分かった私絶対に悲しまない!笑顔でお母さんに会う!」


 城の高いところに近づいていくと上部が開閉され、船着き場みたいなものが現れた。そこには顔をベールで覆った高貴な女性と兵士が数人構えていた。真ん中にいる方がおそらくミュリル・ヒルドリア・フィンシー様だろう。

 ゴレリアス一行として共に魔王討伐の為に同行し、世界で水術と聖術においては右に出る者はいないとされている。噂ではミュリル様の顔を見た人は皆心を奪われてしまうので、いついかなる時も顔を隠しているらしい。


「あの噂本当なんですね」

「ええ...そうですね。ミュリル様は男女見境なく虜にしてしまう為普段から顔を隠して生活しておられます」

「効かない人もいるんですか?」

「はい、ヒルドリア王家であるヒュリル様、キール様やゴレリアス一行の方々も効かなかったらしいです」


 血がつながった人達が効かないのは当たり前なのかもしれない。それ以外の人はどうして効かなかったんだ?でもそうじゃないと一緒に旅が出来ないか。何かしらの条件があるのだろうか?船着き場に到着して城に降りたつ。何故か即座に槍を向けられ咄嗟に剣に手をかけた。ミュリル様が手で制してくれたおかげで辺りの兵士が槍を構え直した。


「兵士が失礼しました。誰が来るとは言っていなかったので他種族が出てこられたので遂構えてしまったのでしょう」

「ジューグラさん伝えてなかったんですか?」

「いえ連絡したのはサーチャーですので...」

「ええ連絡しましたよ?緊急の用事があるので城に向かいますと」

「あなたにはあとで話をします」


 頭を抱えるという言葉はこういう時に使うんだろうな。サーチャーさんは何かしましたか?と、とぼけた顔をしている。後でまたジューグラさんの攻撃が飛んでいきそうだ。


「そこに隠れていないで出て来なさい、私はあなたに会いたかったのですから」


 自分の後ろに隠れたキュミーが一歩ずつ前にゆっくりと進んでいきその目には涙を浮かべていた。


「お母ぁぁさん!!」


 キュミーがそのまま胸に飛び込み子供を抱きかかえる。あれだけ不安そうにしていたキュミーだったが安堵の表情を浮かべている。親子の再開か、血で血を洗う再開にならなくて良かった。

 その光景を見て何故かエルドリアで遭遇した魔王軍のコルロに似た竜騎士のことを思い出した。互いに刃を向けていたので驚きしか出てこなかった。そもそも命をやり取りをしている最中だというのに自分はそこで躊躇してしまい結果的にエルドリア王はやられてしまった。

 だが次に会った時はもう躊躇しない。もし生きていて操られているのならば正気に戻す方法を探す。その方法がないもしくはコルロでないのならば必ず倒して安らかに眠らせる。それが自分が彼に出来ることだろう。


「我が子ヒュリルを連れてきて下さりありがとうございます。送り届けて下さったあなたのことを聞いてもよろしいですか?」

「はい!自分は...」


 自分のことを話し始めた。ここまでの旅路と起きた事象全てのことを伝える。『そうですか...それでは着いてきてください』と言われた。自分達は後を着いていき部屋に案内され少し待つようにと伝えられた。しばらくすると執事の人がやってきてその人に案内され玉座の間に辿り着く。ミュリル様の隣の席にはキュミーが煌びやかなドレスに着替えて座っていた。


「もう少しで会えますよ」


 その言葉に後ろを振り返るとそこにはウェルンがいた。その姿を見た瞬間自分は先程キュミーと同じように彼女の元に駆けだしていた。ウェルンが腕を広げながら近づいてきて自分も腕を広げた。ウェルンは横を通過してキュミーに抱き着いていた。その後ろから歩いてきたベルゴフさんに熱い抱擁を受けた。いやうれしくないわけじゃないよ!でもなぁなんか思っていたのと違うんだよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ