#1 新たなる始まり
この世界にはかつてラ・ザイールという魔物、魔獣、竜や魔族などを使役する魔王がおり、世界を征服するべく多くの村は滅び多くの命が奪われていった。
このことに対して五つの国メルドリア・アルドリア・サルドリア・エルドリア・ヒルドリアから、何度も連合討伐隊が結成され多くの兵士が犠牲になり、さらには魔王を倒すべく旅に出かける若者達も魔物や魔獣にやられ続けた。
実質世界が魔王に支配されている中そんな世界に一筋の光が差し込んだ、それは勇者ゴレリアスとその仲間達だった、魔王が住みしダンジョンへと到達しそして自らの左腕と引き換えにラ・ザイールを討伐し長きに渡る闇が蔓延る暗黒の時代が終わった。
・・・はずだったこの世界にまたも危機が訪れようとしていた、そしてその時代の渦に巻き込まれていく少年ソール達の物語である。
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「ふー今日も終わった」
「お疲れ様、はいこれ」
「ありがとう」
と言って冷たい水を渡されてクタクタの体へと補給する、訓練の後に飲む井戸の水は最高だ、そんな感じで一息入れたあと帰路へついた。
「そっかもう来週かーソールがメルドリアに行っちゃうのは」
そうやって残念そうな表情を浮かべるのは幼馴染みのウェルンである。自分達もまだ赤ん坊の頃村の門の前で放置されている所を見つけられ、それ以来隣のおじさんの家で暮らしている女の子だ。そして自分の好きな子でもあるのだが彼女は・・・
「おーいソール!ウェルン!」
「あっコルロ!もしかして村周辺の警備の帰り?」
「そうだぞ、なんてたって俺はこの村の守人だからな!ソールも訓練の帰りか?」
「えっ?あっ、そうそう」
「なんだソール疲れてんのか?そんなんで王都に行けるのかぁ?」
「違う違う、ただ自分は・・・」
「あぁ分かった分かった、じゃあまた今度手合わせしてやっからなじゃあなー」
と言ってコルロは走り去って行った、そうウェルンが好意を抱いているであろう人物とは、自分の親友で村一番の狩りの達人のコルロだ。森の中で暮らす自分達には狼や猪がよく報告され、魔物が村を襲ってこようとしているのを倒したり、様々な対策を施し村を守る役目である守人を任されているのがコルロだ。
そして彼自身はあんな感じの性格なので他人の恋愛的な好意に気づかない。傍から見ている自分としては心が痛い。そんな片思いが実らぬままウェルンとコルロは十数年経ち2人が20歳、そして自分も来週で20になる。その翌日には魔能を確認をするために一時的に王都メルドリアへ行くこととなっている。
魔能とは個人個人が持つ潜在的な能力のことで、例えばコルロは{気配感知}という魔能で魔能保有者を中心として知らない気配を半径100mほど感知するというもの。おかげで村に接近してくる魔獣などを事前に察知して簡単に狩ること出来たりする。
じゃあウェルンの魔能はと言うと・・・なんと不明なのである。何故かは分からないが確認されない、いや正しくは魔能はあるのだが何か分からないらしい。魔能測定器には汎用的な魔能しか判定が出来ないため、個人専用の魔能は保有者自身が生きていくうちに気づく、そして自分で名前をつけて任意で報告する。なのでウェルンの魔能は個人魔能{個能}と呼ばれるものになる。こういうものは大体親から遺伝するものが多い、だがウェルンは親がどんな魔能だったかそもそもどんな顔なのかすら分からない。その為魔能を特定することが出来ないのである。
自分の両親はと言うと魔能を持っていない。その為自分はまず魔能を保有しているかどうか怪しい。だがそれでも20になったら魔能を調べなければいけないというのがこの世界においての常識なのである。大体の魔能持ちは冒険者になり世界中を巡る旅へと出掛ける。
だがコルロは『俺はこの村が世界中のどんな村より大好きだから死ぬまでここで暮らす!!』と言って村を警護しておりこの言葉に村中の人がみんな感動を覚えた。でもそれは自分にとっては微妙な気持ちだった、おそらくそうなるとウェルンもこの村に暮らし続けるだろう。自分は冒険者となって世界中を巡りたいがこの村で暮らしていくのも悪くないかもしれない。来週の出発の日に近づくにつれて日に日に悩むのであった。
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「「ソール誕生日おめでとう!!」」
「ありがとう!ウェルン、コルロ!!」
毎日悩んでいるとあっという間に20歳の誕生日を迎えていた。村中の人がみんなお祝いをしてくれた。時間も経過し日が暮れてきたので今はコルロの家でご飯を食べている。コルロの両親は旅人となって世界中を巡っていて帰ってくるのはたまに、というかここ数年会ってないような気がするな。
「いやーあのソールも遂に20になったか魔能あるといいな!」
「やめろよお前みたいに俺は魔能無いかもしれないんだろ」
「いーや私みたいに分からないかもしれないよ?」
「「確かになー」」
「ソール自身はどんなのがついてて欲しいとかあるの?」
「そうだなーうーん思いつかないや!」
「なんだよそりゃ!まぁ戦闘においてはこの村で俺の次に強いんだからなついてる魔能によっちゃあな」
そう魔能によってこの世界は王国騎士団の団長などより一兵士の魔能の性質が上位だったりする。だがそこに関してはやはり経験がものを言うのでなんとも言えない。どちらも兼ね備えている人はほぼほぼ有名人や実力者である。まぁついててほしい魔能はやはり{勇者のオーラ}である。