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私の居場所は  作者: 衣月美優
第一部 居場所は血溜まり
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第十章 三年の時を経て


 機械技師として列車製作をし続けて三年経った。列車はほとんど完成し、来週の試運転でその調子によって微調整するだけとなった。


 それにしても、思ったよりも随分とはやく列車が完成した。


 まぁ、人手がこの三年で増えていったから、はやくできたのだろう。思えば、国民の三分の二くらいはこれに携わってる気がする。


 とはいえ、どんなに若くても十五歳。わりと年配の人が多いから三分の二くらいいてもおかしくはない。


 実際、若者はその三分の二のうちの四割いるかいないか。力仕事の多いこの仕事では少ない。それに、この中には力のない女性もいるからそれぞれにどんな仕事を与えるかというのが作業効率に重要なのだ。


 でもみんな、自分たちのためのものだから手を抜かないし、一生懸命やってくれたから、とくに作業が滞ることもなく終わったのだ。


「俺たちの仕事もこれでやっと終わるよ」


「短かったけど、すごく長く感じたよ」


「これで襲われても大丈夫だっていう心の余裕が持てるな」


 みんなそれぞれこの仕事が終わることに安堵し、明るい未来を見ていた。


 だから、まさかこんなにもはやくこの列車を使うことになるとは誰も予期していなかった。







 試運転の三日前。みんな変わらない日常を送っていた。


 私は仕事もなかったから、家で最近造った武器の微調整と持っている武器すべての手入れをしていた。


 最近造った武器というのは鉄砲のようなものだが、鉄砲よりも少し小さめで軽い。それに、通常の鉄砲よりも威力が強い。


 ここ最近、新型のファントムが出たと聞き、造ったのだ。


 新型のファントムはひとつ前の型のファントムと同じで触れるだけで人をファントムにさせる力はあるが、その潜伏期間が長い。すぐにはファントムになったかどうかわからないのだ。


 しかも、ファントムになっても見た目は人間のままなのだ。だからこそファントムというものは恐ろしいのだが。


 また、そのファントムは鋼のように硬い身体らしく、ちょっとやそっとでは死なない。


 だから、私はこの鉄砲を造った。もちろん、これで殺せるかはまだわからないが。鉄を破壊することには成功した。


 また、武器だけでなく薬品の開発もしている。薬品といっても治療のためのものではないが。


 血を採取してその血をこの薬品につけることで、ファントムになったかなっていないかを判断できる。ファントム発見薬とでも言おうか。


 私はこの三年間、ただ列車製作に励んでいたわけではない。ファントムに対する知識を増やし、日々鍛練を積んでいる。戦闘力は三年前の私よりもずっと上がっている。


 頑張るのは、力をつけるのは、この国にいる人たちを守るため。私と共に逃げ延びた人たちを守るため。


 ただそれだけのために、私は今も生きている。







 カンカンカン、と鐘の音が国中に響き渡った。


「ファントムが国のそばまで来ている!」


 聞こえてきた言葉は、みんなを一斉に恐怖に陥れた。


 私はその言葉を聞き、逃げ惑う人々を掻き分けて家へと向かった。武器や薬品を取るためだ。


 私は普段から仕事着のため、身軽に動ける。仕事中と同様に髪を横で一つに結び、武器などを手にして、また腰につけた小さな鞄に必要なものを入れて、ファントム討伐に向かった。


 逃げ惑う人々は領主の部下たちの誘導により、まだ試運転をしていない列車へと向かう。混乱状態の中でも、ファントム討伐隊はファントムを倒すべく戦っている。


 私はそれよりもさらに前線、ファントムだらけのところで戦う。



 この国の用心棒として、私は戦う。私の命は二の次だ。



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