プロローグ この世界は
この世界には、ファントムと呼ばれる化け物がいる。それが現れたのは突然のことだった。
ファントムは人間を取り込んだりすることで数を増やしたり力をつけたりしている。
だが、近年では取り込まなくても触れるだけで人間をファントムにすることができる能力をつけているらしく、人間は皆恐怖し、ギスギスしている。
この世界はファントムによって変えられてしまったのだ。人間の世界を呑み込むほどの脅威によって。
人間たちは諦めて逃げるか、意を決して戦うかの二択しかない。いや、その二択を選ぶのが大半なだけで、ほかにも選択肢はあるのだが。
だけど、そのどちらを選ぼうがその人の勝手なのだ。
にもかかわらず、そんなことで人間は争ってしまうのだ。人間同士で争っている場合ではないのに。
その一方で、二択以外の選択をしてもあまり知られてはいないが人間同士での争い、というよりもいざこざが起きている。
この物語はその渦中にいる一人の少女のものだ。
始めにいっておくが、これは、一人の少女が自分にとって最良の居場所を獲得する物語だ。どんな辛いことがあっても最後は幸せを得る物語、つまりはハッピーエンドだ。
この最悪な世界で少女が時に残酷に、時に美しく戦っていく。
そして、最後にはファントムを、さらには世界を巻き込む。
この世界は理不尽で残酷だ。
だけど────・・・
この少女の世界は最高に輝くことを。