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死神ベイビー!  作者: 鷹
死神と地縛霊
8/14

8.赤ちゃんはつらいよ

大変遅くなりました。

現在、俺は口からエクトプラズムがでかかっている。

俺自身がエクトプラズムだけど!

これで憑依から抜けだせたらいいんだけどな!

はい、出れません!

体中を洗われ、傷を手当てされ、オムツを取り替えられ、着替えさせられ…。

終わる頃には精神的にぐったりしていた。

中身は覚えてる限り50数年物のい年した地縛霊だぞ?

暫くエクトプラズム放出状態になり、そこからじわじわとくる傷の痛み!

現実逃避したくなるくらい、痛い。

あまりの傷の痛み具合に泣く事すら出来ずのたうち回っている。

特に頭と足の裏!

足は骨折でもしたかのように包帯がぐるぐる巻きにされている。どうやら足の皮が捲れ、爪も剥げかかっていたみたいだ。

草で保護したものの、やはり負担は大きかったようだ。

頭は脳に損傷はないものの、傷が結構深いらしい。

手当てしてくれた医者らしき人の言葉からそう推測された。

暫くは熱が出るらしい。

そして、あまりにも泣かないので、産まれながらに痛覚に異常があるのではとまで言われてしまった。

違うから!

中身はいい年した地縛霊だから我慢できるのであって、痛覚バリバリありますから!!

なんて、言える訳もなく。

首が座ってない赤ん坊が寝返りなんてしたら大騒ぎになるので、脳内でのたうち回っている。

ぬおおお…っ!

寝かされたベッドを手で叩いて痛さを紛らわしているが、効果はあるわけない。


「大丈夫?」

素敵紳士は心配そうに覗きこんできた。

おでことおでこをこっつんこ。

碧色の瞳と目が合う。

そこの使用人達! 微笑ましい様子でみーなーいーでー!?

「少し熱が出てきてるね…。おでこ冷やそうか? ワタリ、氷嚢とタオル持って来てくれ」

「かしこまりました、旦那様」

朝にお茶を持ってきたあの初老の男性、ワタリと呼ばれた使用人は一礼して退室していく。

「旦那様、後は私たちが…」

側に控えていた使用人達が素敵紳士に進言するが、

「だーめ、僕がやる」

と、頑なに拒否した。

タオルでおでこに浮かんでいる汗を拭いたり、ワタリと呼ばれた使用人から氷嚢を受け取り、俺の頭の下にあてがったり甲斐甲斐しく世話をする素敵紳士を使用人たち困惑している様子だ。

「旦那様、そろそろお食事にしませんと…」

給仕係の使用人の女性が恐る恐る声をかけてくると

「あ、そうだね。赤ちゃんにはミルクが必要だよね!」

これまたキラキラした笑顔で言う素敵紳士に、そうじゃねーだろってツッコミたい。

多分女性の使用人は素敵紳士の食事の事を言ったんだと思う。

眉尻を八の字に下げ、困ったように手をくんだ。

「旦那様、ミルクにございます」

って、ワタリいいっ!?

トレーに乗せられた人肌に温めれた、ミルクの入った哺乳瓶を素敵紳士にさしだしながら、

「乳母のご用意も出来ておりますがいかがいたしますか?」

ワタリいいっ!?

「乳母か…。この子との相性があるからね。それはまた今度。いまはそのミルクでいいよ」

俺を抱きあげ椅子に座り、ワタリからミルクを受け取ると俺の口に哺乳瓶を添えた。

「飲めるかな…?」

う…。

飲まないといけないよな…?

俺自身はともかく、この身体の赤ん坊には栄養が必要だ。

意を決して口に含みミルクを飲む。

人肌に温められたミルクは少し甘く、少なくとも半日以上水しか飲んでいない身体が全身から栄養を補給している感じがした。

噎せないように時々哺乳瓶を外し様子を見ながらミルクを飲ませてくれる素敵紳士は妙に手慣れているような気がした。

哺乳瓶の中のミルクを飲みきると抱えこんで左側の脇腹を優しくさする。

何度もさすられるうちにゲップがこみ上げてきた。

「けふ」

「よく出来ました」

頭を撫でてまたベッドに戻し、ミルクで汚れた顔を拭き取ってから、濡れタオルを額に置く素敵紳士。


ほんとに手慣れてる。

赤ん坊の胃って大人と比べて徳利形だから、吐き戻ししやすい。椅子に座れる位になるまで飲み込む事か下手な赤ん坊はミルクや母乳と一緒に空気も必要以上に飲み込んでしまう。

空気をたくさん飲み込んだままにしておくと胃の中の空気が母乳やミルクを吐き戻しやすくなるから、外からの刺激で貯まったままの空気をださないと、赤ん坊は苦しくてグズって泣き出したりする。

吐き戻ししてしまうと、気道がふさがって赤ん坊は危険な状態になる事もあるので、ゲップさせるのは正しい。

背中を軽く叩くより左側の脇腹をさする方がゲップもでやすい。だから下品とか言わないで欲しい。


「旦那様、赤ん坊がかわいいのはわかりますが、旦那様も朝食を召し上がりませんと。本日は午後から会議のご予定が入っております」

「ええ~、この子と遊んでたい」

「駄目にございます。」

「ワタリのケチ」

「さあ、朝食の用意を!」

ワタリ、スルーしたよ。

というか、俺で遊ぶんじゃねぇ!

素敵紳士の肩を押して、ワタリは食事の用意されたテーブルに座らせる。

観念したかのように、素敵紳士は食事を初めた。

時折、赤んおれが気になるのかチラチラこっちを見ながら食べる素敵紳士。

なんか、居たたまれないのだが…。


しかし、ハイドランジアで見たことがない食事メニューだな。

山型の器に盛られたピラフ? パラパラしてないから確証は出来ないが…。

箱形に焼かれた黄色いのは卵か?茹で卵もあり…。

ペラペラの黒い紙みたいなの、それ食べ物? 黄土色のスープに、焼かれた魚にはライムが添えられ、その横に盛られている謎の白いもの。切り揃えられた緑色の野菜に木屑みたいなのがかかってるし、茶色の具だけを取り出したスープの中身みたいなの、しわしわの赤い実、やたらしんなりしたサラダ?

飲み物まで緑色してるよ…。

わからん…。

素敵紳士は2本の棒を器用に使って口に運んでいる。

国も違えば、食文化も違うか。

ハイドランジアは貿易国家。

少なくともハイドランジアの人間ではないよな。

大陸から来たか、外海から来た人間…。

覚えている限り50年以上時代の流れを見てきたけど、俺が見てきた世界は紫陽花公園の中からみただけの小さな世界だったらしい。

そもそも地縛霊だからその場所から出られなかったんだけど、なんかもやっとする。スッキリしない。

まあ、考えても仕方ない。


とりあえず、寝よう。

体力回復優先じゃーい!












素敵紳士様の朝食メニューは

御飯、お浸し、海苔、卵焼き、煮物、漬物、味噌汁、梅干し、焼き魚、緑茶。(順不同)

日本食最高です。


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