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死神ベイビー!  作者: 鷹
死神と地縛霊
6/14

6.ブリードの覚悟

遅くなりました。少し短めです。

所変わって冥界───


冥界を統轄する霊界では、混乱を窮していた。

現世を映す水鏡が突然波をうち、水しぶきが辺りに舞い、映像が乱れ、ノイズのような耳障りな音が鳴り続けている中、統轄部では原因究明を急いでいた。


ダンッ!!

『紫陽花公園から地縛霊が一体消えただと!?』

机を加減なくたたきつけせいで書類が至るところに舞うが誰1人として拾う者はいない。倶生神が行き交い、死神達も各部署へ走り回っているからだ。

『はい! 原因は未だ特定できておりません!場所はハイドランジア、紫陽花公園高台のようです!』

『なっ!? 引き続き調査しろっ! 現地周辺にいた死神達にも協力を仰げ! 』

『了解しました!』

指示を飛ばしている死神、死神統括ハデス。

冥界の死神達を纏め、各部署に情報を迅速かつ円滑に伝達する。

ハデスは先程部下から報告を受けた情報を、冥界をおさめる閻魔大王に伝える為席を立つ。

『よりによって、ハイドランジアとは…。あの方になんと申しあげればよいのだっ…!』

足早に閻魔大王が裁判を執り行っている閻魔庁へ急ぐ。

『ハデス様!』

通路を歩いていると告死天使アズライールのアリエルが白い翼をはためかせ翔んできた。

見た目は天使だが、死を告げそして死を執行する天使だ。アリエルは閻魔大王の秘書をしている。

『閻魔大王様の所に行く』

『では、あの情報は…!』

アリエルの言葉を遮り、ハデスは首を横にふった。

『原因は不明だが、事実らしい』

『そんな…』

うつむき、祈るように手を組むアリエルの手に自分の手を重ね震える手を止めるハデス。

『取り次ぎを頼む』

『…はい』


───閻魔庁、裁判の間


霊界で異変が起きている最中、閻魔庁では亡者の裁判が開かれていた。閻魔大王は倶生神が報告した裁判記録を元に目の前の亡者に向かって問う。

『──で、あるな?』

『はあ? 俺はそんな事してねーぞ! 証拠あんのかよっ!』

白いローブを着た男の亡者は叫んだ。

『黙れ。倶生神の記録は正確だ。浄玻璃鏡を映せ』

閻魔の補佐官が、現世を映す浄玻璃鏡を亡者の前に置く。暫くして鏡面が揺れると、鏡の前にいる亡者の生まれた瞬間から、早回しで再生される。そして、生前亡者行った行動も、死ぬ直前の事も映しだされた。

『これでも違うというのか?』

『お、俺じゃ…』

亡者は顔が青ざめ目が泳いでいるが、閻魔は亡者の言葉を遮るように尺を机に叩きつける。

『冥界の裁判にて虚言狂言は通用しない。判決を言い渡す!

酒に薬を仕込み殺害、金銭の窃盗、強姦、暴行これらの罪で叫喚刑に処す! 煮えたぎった鉄の中で8000年罪を改めるがいい! 連れて行け!』

獄卒に引きずられ、罵詈雑言を吐く亡者を横目に見ながら次の裁判記録を手に取る。

煙草に火をつけ、裁判記録に目を通していると、一瞬視界の端にはいった浄玻璃鏡のノイズのはいった映像に気付き、目を移す。

『…何だ?』

徐々に鮮明に映しだされる映像に、閻魔大王は加えていた煙草を取り落とした。

『─っ! アリエル!!』

閻魔大王の裁判が一段落するのを待ち、ハデスの取り次ぎを伝えにきたアリエルは震え上がった。

地の底から鳴り響くような低い声に、震えながらも閻魔大王の呼び出しに参上する。

『お呼びでしょう……』

『ブリードを呼べぇっ! 今すぐに!!』

『は、はいいいっ!?』

血走った目の閻魔大王の形相に、アリエルは飛び出した。取り次ぎを待っていたハデスは、状況を察し入室する。

浄玻璃鏡に映しだされた映像。

ブリードが赤ん坊と一緒にいた姿に、閻魔大王は床に落とした煙草をギリリと踏みつけハデスと目をあわせた。

『状況を説明しろ』

『…御意』


─冥界の門


ブリードは冥界の門で足止めされていた。

『急いでいるんだ、通して!』

『駄目です。違反した痕跡がある以上、しかるべき調査を終えるまで冥界の門は通過出来ません。案内人、ブリード・マクスウェル、取り調べが終わるまでこちらの禁固室に拘束させていただきます』

ブリードは冥界の門番、ゴズとメズに捕らえられていた。

赤ん坊に憑依してしまったヘンリーにさ迷えるローグウィスパーの印を付けたことで、ゴズとメズの審査に引っ掛かってしまった。

本来、さ迷える魂達ローグウィスパーに印を付けるのは、行き場を無くした霊や迷子の魂の救済の為、案内人自ら冥界の門まで送り届ける。

途中で迷子にならないよう、また、迷子になっても分かるように案内人自身が標識になって導く。

しかし、生きている者に印を付けると言う事は生きていながら死んでいるという事になる。

本来なら、告死天使アズライールにより、夢枕なり虫の知らせだったり告げられるはずの死が、執行出来なくなるからだ。

生きている者には人でも動物でも寿命がある。

寿命が狂えば、冥界の輪廻の魂の循環にズレが生じ、現世に影響がでる。

ブリードがした事は、冥界にとっても現世にとっても危険な事だった。

禁固室に閉じ込められ、ブリードは必死に扉を叩くが門番達の様子は変わらない。

『閻魔大王様に重要な話があるんだ! お願いだから…っ』

ガンッと扉を拳で叩き付け、そのまま膝を付き俯く。唇を強く噛んだせいで血が滲む。

『お願いだからっ…!』

その時、静かに扉が開いた。

『ブリード様、閻魔大王様がお呼びです! 至急、召喚に応じて下さい!』

アリエルが門番を伴い、ブリードに告げる。

『アリエル……分かった』

『…あなたが条例違反をするくらいです。余程の事があったのでしょう?』

ゴズとメズに死神の鎌を取り上げられ、両手を拘束されたまま禁固室をでる。

アリエルの言葉には静かに呟いた。

『…ヘンリーが……』

『…っ!? ヘンリー様に何かあったのですか!? 詳しい経緯をご存知なのですね?』

焦った様子のアリエルにブリードは首をかしげる。

『冥界で何かあったの? 普段なら冥界の門が開け放たれてるはずなのに、警備も監視も厳重になってる。ヘンリーの事と何か関係あるの?』

ブリードの問いにアリエルは答えなかったが、明らかに動揺していた。

『…私からは何も申しあげられません。閻魔大王様の元に参りましょう。ハデス様が詳しい経緯をご存知です』

閻魔大王の補佐官と合流し、アリエルとブリードは閻魔庁へと向かった。















刑罰は日本地獄からお借りしてます。例えば黒縄地獄は黒縄刑、叫喚地獄は叫喚刑という感じです。

ゴズとメズは漢字で書いてもよかったんですけど、一応異世界設定なのでカタカナです。倶生神にかんしては、のちに関わってくる予定ですので説明は書いてません。次回はヘンリー君が頑張ります。

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