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創作ホラー

私の『一行怪談』集(3/19更新)

作者: 狂言巡

ホラーというジャンル上、猟奇的な表現を含みます。閲覧の際はご注意下さい。

 赤ん坊をつめ込んだタクシーが通り過ぎた。






 憧れのマドンナのスカートの中の秘密なんて、知りたくなかった。






「朝になっても母さんが目を開けたまま眠っているんです、どうしたら起きてくれますか?」






「あたし結構嫉妬深いわよ」と前置きした女の家は、たくさんの骨格標本が飾られていた。






 当て所なく彷徨う虚船が一斉に進み始めた先では、誰かの訃報を耳にする事になる。






「あの子の胸が大きいのは、谷間にある口が毎日肉を貪り食っているからなんだって」






 あのラーメン屋は今日も朝から長い行列が出来ているが、出てきた客は一人もいない。






 ありふれたビニール傘を借りパクしたら、毎日数十本の草臥れた傘が家の前に置いていかれるようになった。






 イライラを発散するために街路樹を蹴ると、笑う生首がゴロゴロと落ちてきた。






 後ろには殴って下さいと縋りつく生徒、前にはビデオ片手に微笑む生徒の母親。






 海が見える某地のペンションでは、朝起きると海水で濡れた足の冷たさで目覚めるらしい。






 授乳したいが、現在泣き喚いている赤子本人から手足を折られてしまったので歯痒さが胸を焼く。






 王子様は人魚姫を刺身にして食べてしまいましたとさ。






 夫の顔が、日に日に実家に置いていった元カレの息子に似てきている。






「お返死下さい」とかいう怪文書が最近毎日届くので、ちょうど処分に困っていた不倫相手を送ってみた。






 御神籤を引くと「早く気付いて彼らは」と急いで書いたような、拙く掠れた字が書かれていた。






 お向かいの駅、上下とも『地獄』だって。






 お向かいの食堂、ホント美味しいんだけど注文した物を完食するまでずっと動物の鳴き声しか出なくなるのがちょっとねぇ……。






 俺とお茶しないって……だーれが腰に女の子達が巻き付ついチャラ男の誘いになんてのるもんか。






 オンライン肝試しができるアプリをインストールしたら、家が心霊スポットになるなんて……。






 顧みない反省しない悔い改めない『自分は正しい』人間達は、とうとう地獄でクーデターを起こし、地上へ帰っていった。






 海外で事故に遭った兄が片腕を喪った同時刻に、実家で突然死した鯉の腹には彼の右腕が収まっていた。






 片付けを終えた冷蔵庫から出ると、豚が人間をミンサーにかけていた。






「家庭教師を雇ったのよ」という妻の話を聞き、何故かさんざん貢がせた挙句捨てた昔の恋人の顔を思い出した。






 学生鞄から伸びる手が「助けて」とサインを送ってくる。






 辛口のラーメンが喉に引っかかって咳き込むと、ころりと口から目玉がこぼれ落ちた。






 気に食わない結末だった映画にヤジを飛ばすと、スクリーンの向こうから銃弾が飛んできた。






 昨日まで飛ぶようにジュクジョが売れていたのだが、今日の売り上げから考えるに、発注はコウコウセイを多目にした方がいいな。






 今日食べた夕食は、明日誰かの朝食になっているのだろう。






「靴を探す夢をよく見る」と話していた姪が、消息を絶ってそろそろ十年だ。






 軽自動車と同じくらいの大きさのヤモリが団地の中に入っていった。






 鯉のぼりが歌っている時は気を付けろと子供の頃によく注意されたものだ。






 ゴキブリめ、先日亡くなった母親の顔に化けたところで見逃されると思うなよ。






 ゴミ捨て場に子供がいたが、指定の袋に入っていたのでそのまま回収車に突っ込んだ。






 子守唄を口遊む女は、決して包丁を手放さない。






 最近子供の数が減っている。親の手に届く前に餌を山から探しに来た動物が平らげてしまうからだ。






 最新式の草刈機を買ったので、早速家中に蔓延る動く雑草を刈り取る事にした。






 さっきからうちのインターフォンを連打してるやつ、こっちが何を言っても「いらっしゃいませ」しか言ってこない。






 猿が出てきたから鍋にして食べた夢を見たと言い出した友人は、猿のいないはずの山へ入って出てこない。

 





 実演販売コーナーで、人の腕が三枚に卸されている。






 品だしをしていると、棚の奥から窮屈だと言わんばかりに腕が飛び出してきた。






 しゃくりしゃくりと、押し入れから咀嚼音がする。






 上空に海があるような、こんな晴れた日には、何処かで溺れ死んだであろう誰かが降ってくる。






 除光液でマニキュアを落とそうとすると、爪も溶けてしまった。






 修理に出していたという時計の振り子は、老女から若い女性に交換されていた。






 上階の部屋に遊びに行った弟を迎えに行ってくれと頼まれたが、私達が住むフロアが最上階じゃないか。






 乗車する前に首を取るのを忘れてしまって恥ずかしい思いをした。






 上京して一番驚いたのは、晴れた朝に金木犀の花をむしゃむしゃ食べに現れる老婆はほとんどいないという事だった。






 人面獣心を人工的に作ってみたのだが、どうやらただの動物ではなかったようで、全く処置にしようがない。






 数年前から通院しているが、殺し屋がやってきて、雀に話しかけられ、アスファルトがクリーム状になる日には未だやってこない。






 ステレオから流れる合唱コンクールの課題曲は、全員の断末魔だった。






 センス抜群の可愛いお菓子の家には扉がなく、家の奥から咀嚼音が聞こえる。






 せっかく愛しい彼女の部屋のクローゼットに入れたのに、此処から見えるのは包丁を持ってウロウロしている男だけだ。






 その石に触れると、父と兄に殴られて土の中に埋められるまでの母を見る事が出来るので寂しくはない。






 存在しない店員の態度の悪さを責められても困る。






 逮捕された理由は、この一年間一人も殺さなかったからだ。






 痴漢したJKは下半身が無かったので見逃してほしいと男は警官に懇願する。






 つれない彼女、取り出して部屋に連れてきても絶対目を合わせてくれないんだ。






 電気屋のテレビの前を通りすぎると、ちょうど自分がデパートの入口で通り魔に刺される映像が映し出された。






 とある学校の焼却炉は、夕方になると「火をくれー」という叫び声が聞こえてくるそうだ。






 ドアを開けると、便器ではなく古井戸があった。






 トイレを済ませて席に戻ろうとすると、俺がスナックのママと楽しげに話していて、一番端の席で常連客と似た男がちびちび酒を飲んでいた。






 どうしてもレースで一番になりたかった選手は、勝ち続けるために死ぬまで車から降りられなくなった。






 突如謎の激痛に苦しむ人々には影が引き剥がされたようになくなっていた。






 どの本を手に取っても、私と同じ名前で同じ職種で同じ食べ物が好きな登場人物が殺されていた。






 トマトジュースの点滴は上手くいかなかったので、次は青汁で試す事にした。






 泣き声が混じるようになってしまった店内放送に、お客様達はみんな「笑い声が煩い」とサービスカウンターにクレームを残して去って行く。






 なんて事だろう、老若男女問わず全ての人間がマイクロビキニしか着られなくなってしまう呪いが発動してしまった!






 何度買い替えてもサンドバッグは泣くわ逃げるわでストレスはたまっていく一方だ。






 何度買い直しても目覚まし時計のアラームが呻き声にしか聞こえない。






 人間の家に婿入りした従弟が「鬼の俺達よりおっかない」と泣いている。






 猫が道路に飛びだし、ぶつかった衝撃でトラックは反対斜線に吹っ飛んでしまった。






 眠る私、化粧と着替えをする私、食事をする私、仕事に行く私、買い物をする私、風呂に入る私、趣味に耽る私……『本当の私』がやれる事は何一つ残っていなかった。






 バケモノの肚から生まれた絶世の美少年は、母が絶命したと同時に醜い化生に成長した。






 這って移動しないと生きて渡り切れない廊下があるという。






 母にお仕置きとして、自分の両手足が弟妹に縫い付けられてしまった。






 母が再婚して祖父母の実家から出ていくまで、食べられる茸というものは遺体の膚に直接生えてくる物だと思っていた。






 初めて自分の給料で買った車のトランクに、中学生の時に自殺した姉が詰め込まれていた。






 深い落とし穴に仇敵を落としたものの、いつまでも相手の声が絶えないため、這い上がってこないか不安で穴から離れられない。






 久しぶりに家族全員で食卓を囲んでいると、「ただいまあ」という声が玄関から聞こえた。






「人を殺してしまった」と交番に駆けこんできた男の腹部には、何本もの刃物が突き刺さっていた。






 ベランダのない六階の窓の外側に、友人の顔が逆様に貼りついている。





 

 勉強は嫌いだが、常に手や足が飛んでくる家よりは学校が好きだ。






 ポップコーンマシンのボタンを押したら、乳歯が出てきた。






 ホームシックにかからないのはきっと、排水溝から家族の声が聞こえるからだろう。






 ホームステイ先はいわゆる「出る」物件であったが、夜な夜な幽霊をイビリ倒している生身の住人の方が恐ろしかったと先輩は話す。






 毎朝校門の前で「子供を返して」と怒鳴っている中年女の腹が、少しずつ膨らんできている事に気付いた。






 毎年正月と盆に、実家の庭に埋めた娘から「シネ」とだけ書かれた葉書が届く。






 毎晩壁から伸びる手が倉庫を荒らしてくれるので、新人いびりのいい口実になっている。






 前を並んでいた客同士が相討ちになったため、いつもより会計が早く済んでラッキーだ。






 水色のスモッグを着た幼稚園児が乗せたバスが最終駅に着くと、杖をついたお年寄りがぞろぞろと降りてきた。






 妙に項をバリボリ掻いてる猫背の客の傍を通り過ぎた時、項に「ゴメン」と読める赤い痣が見えた。






 向かいのマンション、朝八時きっかりに全ての窓から誰かが手を振ってくる。





 

 無口な息子と反対に、押し入れからは頻繁に泣き声や笑い声が聞こえてくる。





 目玉焼きハンバーグを頼むと、眼帯をつけた店員が真っ赤に充血した目玉が乗ったハンバーグを持ってきた。






 もう数百年くらい経つが、現在も天国と地獄は改装中のままだ。






 燃え盛る電車に乗りこんだ人達は、みんな嬉しそうにはしゃいでいる。






 元カノと別れたのは表向き元カレと妙に仲がいいという理由にしたが、本当は彼女と一緒に邦画を観るとエンドロールに入るまでジッとこちらを見つめてくる人物が映るからだ。






 桃を割ったら雉と犬と猿が入っており、骨をしゃぶっていた。






 約半年の海外出張を終えた自分を温かく出迎えてくれた妻と子供は、こんな顔をしていただろうか。






「夢の中でも仕事や勉強に頑張れるシステムが開発されました!」





来年の選択科目なんだけど、『自殺』か『殺人』で迷ってるんだよね。






 ラストの家庭訪問、窓から鈴なりに老人達の顔が並んでいる一軒家だなんて聞いていない。






 訳あって引き籠りをしていた男は、今カーテンの隙間から自宅を包囲している武装集団に気付いた。






 ワンコインでたらふく料理を食べさせてくれる定食屋の自宅から、餓死死体がゴロゴロ発見されたらしい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何だか背筋が凍ってしまうほど怖かったです... 評価とブックマークさせて頂きましたのでこれからも頑張ってくださいね!応援してます!
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