被害者の会
三カ月が経ち、ようやく身に起こったことを冷静に見つめられるようになった。
犯人は手慣れていた。美咲はそんな印象を拭いきれずにいた。
絶対に許せない。
レイプという卑劣な犯罪に、このまま泣き寝入りしてはならない。ようやくそう思えるようになった。
とは言え、警察に相談するのは憚られた。時間が経っているし、何よりあんなことを一から説明し、質問されたくはない。セカンドレイプの心配もある。
『あなたから誘ったんじゃないですか』
などと言われでもしたら、自分がどうなるか分からない。
そこで美咲は自らの勘を頼りに、ひとまずネットで調べることにしたのだった。あの慣れた様子なら、他にも自分と同じような目に遭った人がいるかもしれない。そう思って。
成果はすぐに現れた。
今年に入ってから美咲の住む地区だけで、最低でも三件は同じような被害にあった女性がいたのだ。
ミサキ:絶対に許せません。力を合わせて、犯人を見つけませんか?
ルカ:そりゃあたしも犯人には死んでほしいよ。あんな変な物入れてきてさぁ。
ジェット:賛成です! 警察に突き出して、社会的に抹殺しましょう!
ハイム:正直言って、素人の手では限界があると思います。……それに怖い。
なかなか話は纏まらなかったが、何度か互いにやり取りする内、一度直接会って話すことになった。乗り気でなかったハイムも、美咲が「何の罪もないあたし達がこんな目に遭うのは間違ってる」と強く主張すると、最後には折れた。
そして当日、場所はファミリーレストラン。
テーブルの上には女性誌を目印として置いておくと皆で決めてあった。美咲は一番乗りし、それを実行した。
ほどなくハンドルネーム――ルカを名乗った今時の女性が現れ、続いてハイムも姿を見せた。ハイムは長い髪で顔を隠してはいたが、綺麗な顔立ちだった。
ネット上で何回か話していたからか、割合和やかな雰囲気で三人は自己紹介を始めた。
が、そこにジェットが現れると、空気が一変した。ジェットは男だったのだ。
「すみません黙ってて! でも妹が皆さんと同じ目に遭ったって聞いて、それで……」
強く拒否を示したのはハイムだった。
美咲にしてもまだ男性と関わるのは怖かっただけに、ハイムを応援したい気持ちになった。ジェットの体格が良かったのもあるだろう。ルカだけは興味を示していたが、それは妹の為に立ちあがった兄としてではないように美咲には思えた。
「ミサキさんが一緒で良かった」
店を後にすると、囁くような声でハイムが言った。
「だって、私もまだ怖いし。っていうかルカさん大丈夫かな? 二人で」
「あの人は大丈夫よ。ねえ、この後二人でもう少し話さない?」
提案が嬉しく、美咲は快く了承した。自宅が近いと言うので、徒歩でハイムの自宅に向かう。
「犯人、男だと思った?」家に入り鍵を掛けると、そう言ってハイムの口が笑った。
「また会えて嬉しいな、ミサキちゃん」
ハイムの手の中で、黒光りするモノが唸りを上げた。