魔界らしくない魔界が出来るまで
魔界。そこでは力が全てであり、戦が全てでありました。
さて、そんな魔界には一人のワガママ姫と呼ばれる姫様がいました。ワガママ姫は、その名の通り、とてもワガママでした。
ですが魔界で最も強い魔王様の力を王子の中で一番に継いだのは、ワガママ姫でもあったのです。
しかし、力が全てなどと言っていた魔物達も流石に、そのワガママに付いていけず、周りの魔族は遠ざかっていきました。
「おにぃーさまぁ!大好き!」
ワガママ姫は、国民からの信用を失ったとはつゆ、知らずに1番のお気に入りである兄の八の王子に今日も抱き付きます。
とんでもない爆弾を秘めたワガママ姫の感情をコントロールできるのは、八の王子だけでした。
八の王子はとても病弱で全く強くありませんでした。魔王の子供なのに、知性さえない魔物にさえ、負けてしまうほどに弱かったのです。
ですが、ワガママ姫の為に八の王子はずっと殺されませんでした。そんな八の王子を国民は優しいのだと思いました。
「お兄様、私を利用する事に傷つかないで下さい。国民を導けるのは、力がない兄様だけなのです。」
「分かっている。」
ある日、八の王子は、平民の少女に恋をしました。それにワガママ姫は嫉妬に心を焦がし、一つの山を消し飛ばしてしまいます。
八の王子は自分の心を閉じ込めることにしました。
その少女を会うことは二度となくなり、ワガママ姫に付き合います。国民は八の王子が、かわいそうだとだと思いました。
「あの子が好きならば、決して、巻き込んではいけません。間違えないで下さい。お兄様は、私が選んだ『王』なのですから」
「…そうだな。すまない。」
とある時人間が攻め込んできました。一の王子と二の王子が交渉に大失敗したのです。八の王子はワガママ姫に邪魔されながらも
人間と話し合い、その場を丸く収めました。国民は八の王子はとても賢いのだと思いました。
「お兄様。たとえ恐れていても国民の前で恐れてはいけません。どれだけ崖っ淵にいようとも最善の手をうってください。」
「…あぁ。その通りだな」
こうして八の王子は数々の難題をどんな不利なところからも脱出していきました。そんな八の王子に国民は、
頼もしいと思いました。
勇敢なのだと思いました。
かっこいいと思いました。
安心できました。
そして、王に最も相応しいと思いました。
力がなく、戦を好まず、温和で、これまで…そんな王を民は求めました。
「お兄様を王にする最後のーーーーです」
「……ッ、あぁ、そうだな」
何人もの王候補が敗れていき、そして最後に残ったのは、ワガママ姫と八の王子でした。この対決は、多くの国民が参加しました。ワガママ姫に着いていくものは一人もいませんでした。
その戦いはとても激しく魔界中を巻き込みました。それでも、賢い八の王子のお陰で死亡した魔族はたった一人。
そんな不思議な戦争でした。
そして、やっぱり、最期まで立っていたのは八の王子でした。
「おにい、さま。王は、なみだ、を、たみ、の、前で、は。流し、ては、なりません…。」
「……ッすまない」
性格が悪いワガママ姫に優しい八の王子は涙を流して付き添いました。結局、ワガママ姫の死に涙したのは優しい八の王子だけでした。
「この、民達の次…に、すき、でした」
「 …………僕もだよ。」
魔界はそれから八の王子…魔王によって生まれ変わりました。
力で押さえつける政治は無くなり、王族は国民から支え続けられ、慕われる国へと変わりました。
この魔王様に国民は一生「ありがとう」と届けたと言う事です。
めでたし、めでたし
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これが無意味な行動であることは理解している。
だが、 私の師であり、友であり、敵であり、愛しい妹に、届けたいと願おう。君が一番に大好き国民の言葉と共に。
ありがとう。