役場へ
地図によると、役場は、マルメロ通りの先にある。トルダ川とは反対方向に、つまりは北の方角に進むと、これまた大きな通りと交差する。これが、プラム通り。で、プラム通りを右折すると、森が見えてくる。その森の先が役場だ。
この森が、とっても素敵だった!
自然との共生を大切にしているのがよくわかる。
素晴らしい!
サクラ、プラム、マルメロ、りんご、栗・・・足もとにはとっても可愛い赤いきのこ。
原っぱには、ヨモギやオオバコ、それに木イチゴまで!
ふふふふふ。
無料食材の宝庫やで~。
なんせ無職のこの私。
節約大事ですから。
必ず、採取しにくることを固く決意。
近いうちに戻る。
アイルビーバック!
ピクニック気分で森を抜けると、赤レンガの建物が見えてくる。
町役場だ。
町役場に入り、案内係りの女性に確認し、1階受付に並ぶ。
「次の方どうぞ~」
10分ほどで私の番が来た。メガネのおばちゃんだ。
「住民登録に来ました」
「ここに手をお願いね~」
カウンターの白い石に手をかざす。
ギルドと同じ魔力認証かな?
「オーダさんね~。ご出身は、トガリ山・・・。トガリ山ってどのあたり?ドゥーさん知ってる?」
同僚の女性達に聞いている。
おいおい個人情報だだもれですよ~。
「知らないわ~」
とソバージュヘアのおばちゃん。
この人がドゥーさんか。
「私も知らな~い」
と、白い髪のボブのおばちゃん
「私知ってる!私、ユスリナ町の出身じゃない?」
って、アバンギャルドな黒髪ショートのおばちゃん。
『じゃない?』って知りませんけど~。
「ユスリナから3時間くらいよね?ユスリナも田舎町だけど、あそこは別格よね。そもそも、あそこに人が住んでたことにびっくりよ~。あそこで暮らせるのは、賢者くらいでしょう?人が住める環境じゃないでしょうに?神隠しにあう恐ろしい魔の山だって聞いてるわ~」
どんだけ田舎なんだよ、トガリ山・・・。
「魔の山って、私も聞いたことあるわ!昔、冒険者達が騒いでた!財宝が眠ってるはずだとか、魔力が高まるとかなんとか言っちゃってさ」
とソバージュ頭のドゥさん。
「はいはいはいはい。で、その冒険者達は二度と戻って来なかったんでしょ?」
と白髪のボブ。(スポンジ○ブみたいね!)
「その話、100回目!」
とメガネさん。
「はははははは」
大爆笑の4人。
女3人寄れば姦しいとはいうけれど、すんごい良くしゃべるな・・・
本当すごい。
何がすごいって、あれだけ、しゃべりながらも、さくさく仕事を進めてるってこと。
黒い羽虫をあやつり、ノートに記録。さすがベテラン。
ちなみに、ギルドで見た羽ペンを使う人は誰もいない。
もしかしてこれってすごい技術?
しまいには、
「はははははは。あ~おっかし。あ~住民登録終わりました~。次の方どうぞ~」
だからね。
なんとなく敗北感を感じつつ、受付を去る。
どの世界もおばちゃんパワーは健在だね!