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アリスと一緒

「おじゃまします!」


怖いもの見たさ?いや好奇心?

失礼な感情を抱き、ちょっとドキドキしながらアリスさんのお家へ上がる。

(本当、失礼だよね!でも、廃墟かってくらい朽ちてるのよ!こんなオーダを許して!)


う~ん。クラシック・・・・。

床が大分斜めになってるよ。

リフォームの匠もびっくりの瑕疵物件だよ!

ここにビー玉置いたら確実に転がるからね!


キシキシ不穏な音をたてる廊下を通り、リビングへ案内される。


「ありゃ?」



・・・・・・・・・・


なんということでしょう!

廃墟と間違われ続けた築60年のアリス宅が、華麗に大変身!

足の悪いおじいちゃんを長年苦しめた腐りかけの床は、木目が美しいフローリングに張り替えられ、ピカピカと輝いています。光あふれるリビングの中央には、匠お手製のダイニングテーブル。そして、おばあちゃんの大切にしていたキルトは、オシャレなダイニングチェアに生まれ変わりました。


って思わず頭の中で流れてしまったよ。

だって、明るいおしゃれなカフェ風のお部屋だったから。

町の中華料理店に入ったら、実はマキシムド○リでした!ってくらいの驚きだよ!


「・・・とっても可愛いお部屋ですね!」


「当然ですわ!私を誰だと思ってらっしゃるの?」


アリスさん、ドヤってる。

鼻の孔膨らんでます。


「お姉さまが、きれいにして下さったのですわ」

「私たちも、お手伝いしましたの!」


ツインズも、ドヤってる。

鼻の孔の膨らみ方までそっくりだ。


「アリスさんがリフォームされたのですか?」


「当然ですわ!」


って、匠もびっくりのリフォームっぷりでしょ。

また、キャラ追加ですよ、アリスさん。


「最初この部屋見た時、お化け屋敷かと思いましたわ」


「こんな家に住むのかって、泣いてしまいましたの」


廃墟からのリフォームとは!これからツインドリル改めTAKUMIです!


「それより、オーダお腹ペコペコですの~」

「私もペコペコですわ~」


ツインズが潤んだジト目でこちらを見上げてくる。

可愛いわ~。

はあはあしちゃいますわ~。(決して変態ではありませんことよん)


「すぐに用意しますね」


テーブルに、先ほどのお料理を取り出し並べていく。

2人のお顔がキランキラン輝いてくるのがわかる。


「こんなお料理はじめて見ましたわ!」

「初めてですの!」


ローズちゃんもデイジーちゃんも、すごい勢いで食べてる。

良い良い。たくさんお食べ。

子どもは、たくさん食べないとね。

大きくならなくちゃね。


「美味ですわ~」

「美味ですの~」


2人とも可愛いわ~。


「オーダは、この国一番の料理人ですのよ」


アリスさんドヤってる。

鼻の孔がまた膨ら(略)

でも、褒められるの嬉しい!

オーダは褒められて伸びる子ですから!(これ何回でも言いますから!)


「すごいですわ!オーダ」

「すごいですの!」


うんうん。可愛いな~。癒されるわ~。

東京砂漠?異世界砂漠?で乾いた心に染みるわ~。


そんなこんなで、可愛い2人のお食事を見守りつつ、アリスさんとお話をする。

聞いてびっくり。

アリスさん・・・まさかの苦労人なんだよ。

親御さんを亡くされてから一人で妹さんをで育ててきたんだって。

しかも、親御さんが亡くなったと聞いて、悪い輩が群がり、財産も取り上げられてしまったそう。(酷い話だ)

没落した家も立て直したいし、魔法特許士にもなりたいし、妹達も育てなきゃだし、でもお金が無い。

身寄りのない子供たちが、真っ当な方法でお金を稼ぐには、身体を売るか冒険者になるしかない。で、冒険者になろうって決めたけど、どうすれば良いのかわからない。だから、国一番と謳われているテンペストさんを訪ねて、なんとか弟子にしてもらったんだって。(何度も断られたそう)

それから、正式に『犬と月』のメンバーに加入し、今に至るそう。

辛いこともいっぱいあっただろうに、そんなことを微塵も感じさせず、ほんのり誇らしげに明るく話すアリスさん。バーゲンで狙ってたお洋服が、無事ゲット出来たの~。っていうくらいのノリ。

全然、ウエットじゃないの。


アリスさんのこと、とっても好きになっちゃったよ。(二度とツインドリルなんて言いません!)


そんなこんなで、ツインズのお食事が終わったので、みんなでデザートタイムにした。

デザートのキャラメルナッツバナナアイスクリームをキラキラした瞳で見つめる3姉妹。

(穴が開くかと思ったよ)


3人そろって、スプーンでアイスクリームをすくい、パクリ。

黙々とパクつく3人。

ありがとう!言葉が無くても伝わるよ。

だって、3人とも目がキラキラしてるから。

食べ終えたところで、ようやく口を開く3姉妹。


「オーダ、とっても美味ですの。また食べたいですの!」

ありがとうデイジーちゃん。

また作るよん。


「冷たくて、甘くて、苦くて、カリカリですわ。美味ですわ!」

しっかり者のローズちゃん、食レポ上手ですわ。


「うううう・・・・美味ですわ~」

って、アリスさん泣いてるし。


「オーダのお店、絶対に成功しますわ!」

「間違いないですの!」

ツインズのお墨付きも頂きました!


「オーダのパン、買いに行きますわ!」

「買いに行きますの!」


ありがとう~。

これまで、漠然とブルジョワな方達向けかな~って思ってたけど(テンペストさんとかミシャさんとか)、ツインズみたいな普通の小さな子達が気軽に買えちゃうくらいの商品も作りたいな。

うううううん。

でも・・・手ごねだし、一人だから、作れる数に限界があるからな。

ブルジョワ層向けだし、単価あげれば良いって簡単に考えてたけど・・・。


「オーダ・・・どうしたんですの?古井戸から響いてくるような唸り声あげてましたわよ?」

とアリスさん。


考え事すると、無意識に唸り声あげちゃうタイプなんです、オーダは。

えへへ。


「えっと、ちょっとこれからのことを考えてたんです」


「これからって?」


「ローズちゃんやデイジーちゃんくらいの小さな子供たち向けの商品も作りたいなって」


くまさんの形をしたクリームパンとか。亀さんのメロンパンとか。

ビジュアルも、可愛いくて、美味しくて、低価格のものを。


「それはとっても素敵ですわ!」


アリスさんの目がキラキラしてる。アリスさんは、本当に妹さん思いだね。


「はい。・・でも、私一人では、そこまで量を作れないものでどうしたものかと・・・・」


怪訝な顔をするアリスさんに、パンの作り方を簡単に説明する。

酵母の仕込み、こねこね&発酵、生計、焼き・・・。

時間も手間もかかります。一朝一夕にはいかないよね。


「・・・良くわからないのですが、手でこねるところ、魔法でやることは出来ませんの?」


「!!!!」


その発想は全くもってありませんでした!

あっ!無理だ。

私、木魔法使えない。


「確かに、その工程を魔法で出来たら、かなり助かります。でも、残念ながら私、木魔法が使えないんですよ。せめて、調理器具なんかがあれば良いんですけどね~」


ホームベーカリー的なのあっても良いよね?

って、あれ、ツインズの瞳がキラキラ・・・いやギラギラしている!


「お姉さまが、オーダと一緒にお店を開けば良いのですわ!」

「お姉さまは、木魔法が得意ですの!」


「「!!!!!」」


アリスさんと見つめあう。

アリスさんと一緒にお店を開く・・・?


何そのグッドなアイデア。とってもワクワクしちゃうんですけど。

あれだけ、きめ細かいカワイさんが私に木魔法を授けなかったこと。

アリスさんと出会ったこと。

ケンカして色々話したこと。

点と点が繋がるように。

パズルのピースがピタッとはまるように。


こういうのを、神様のお導きっていうのかしら。


「よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げる。


「お引き受けしますわ!」

そういって、誇らしげに微笑むアリスさん。


「でも、オーダの為ではありませんからっ!」

えへへ。安定のツン頂きました!





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