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アリスにお任せ!

終わり部分に加筆しました。

誤字訂正もしました。

辺りを見渡す。どうやら公園にいるらしい。

有明の月がアリスさんを照らしている。


「・・・ほえ?」


必死で目を擦り、涙を拭うアリスさん。


「アリスさん・・・」


こんな時、何て言おう。口下手な自分を呪うよ。

コミュ力最強のミシャさんなら何て言うかな?

・・・・・・・・・・・。


「えへ。来ちゃった」



ポクポクポクち~ん



アリスさんのゴミ屑でも見るような、蔑んだ眼差しが突き刺さります・・・。



「・・・というのは、冗談で」


そうそう冗談ころころですよ。

つまりは・・・・


「アリスさんが心配で・・・。私の発言で嫌な思いさせてしまったんじゃないかと・・・。ごめんなさい」


うん。そうだよね。まずは謝らないと。

アリスさんは何度か深呼吸をしたかと思うと、バレリーナのように美しくターンをし、私にお辞儀をした。


「・・・オーダのせいじゃありませんわ。先ほどのは、単なる八つ当たりですの」



それから、2人でベンチに腰掛け話をした。アリスさんのお家は、代々輸入雑貨を扱うお店を開いていたそうだ。この国で3本の指に入るくらいの大きなお店だったらしい。

『だったらしい』というのは、もう、そのお店は存在しないからだ。

アリスさんのお父様(略してアリパパ)は、目利きには定評があり、仕入れた雑貨は、すべて大当たり。国中で大流行になるくらいのものすごい売れ行きだったそう。(ちなみに、オーダが愛用しているKIZAMIシリーズもアリパパが仕入れたのが始まりらしい)

そんなわけで、アリスさんも商売繁盛で絵にかいたようなお嬢様ライフを送っていたそうな。

しかし、そんなある日重大事件がおこった。

コルトゥ経済史に残る『魔法特許の悪夢』と呼ばれる事件だ。(オーダは知らない。呆れ顔のアリスさんに教えてもらった)

特許によって、輸入業を営む商会が相次いで倒産に追い込まれていったのだ。



魔法特許法第1条第1項

新たに魔法の用途・技術を開発した者は、特許を出願することが出来る


魔法特許法第1条第2項

新たに魔法の用途・技術を開発した者とは、発案者、製作者をいう

但し、国外制作物に関しては、この限りでない。



本来、発明者のみに許されているはずの特許に、例外があったことを誰しもが見落としていた。この事件が起きるまで、誰しもが『魔法特許法第1条第2項但し書き』の恐ろしさに気がつかなかったのだ。商人は、輸入をしているだけで発案者ではない。だから、当然特許は取得できない。皆が当然のようにそう思っていたのだ。


しかし、とある法律家が、そこに目を付けた。

売れ行きの良い輸入商品について一斉に特許を出願したのだ。


こうして、アリパパのお店の主力商品も特許をとられてしまったのだ。その上、取得された特許のロイヤリティーは、利益の8割にも上った。(この国の特許は、ロイヤリティーは自由に定めることが出来るとされている)


その結果、商品を売っても利益を得ることができなくなってしまい、商いが傾いた。

アリパパは、これを挽回しようと新商品を探しに行く途中、海難事故で帰らぬ人となった。同行していたアリスさんのお母様も一緒に・・・・。


まだ幼かったアリスさんには、とても商いを続けることはできずに、そのまま廃業となったそう。



アリスさんに、まさかそんな過去が・・・。

それは、怒られても仕方ないよ。カワイさんのお墨付きを頂いた気分で、なんでもうまくいく気になっていたもの。


「私、浮かれてました。いくら皆さんに美味しいって行って頂けても、それだけじゃ、お店は経営していけませんよね」


調子にのってました。


「そんなことないですわ!アレは八つ当たりですの!完全な私怨ですの!オーダの料理なら繁盛間違いなしですわ!」


いやいや。法律のこと、この世界のこと、全然知らないくせに調子こいてました。(遠い目)

まずは、そこからだよね。


「ありがとうございます。でも、アリスさんのおかげで目が覚めました」


うん。なんか後光が差した気分。煩悩が消え去ったかのように晴れやかな気分だ。


「ほえ?」


「私は、山から出てきたばかりで世の中のことをほとんど知りません。商売云々の前に、まずはそのことをしっかり学ぼうと思います」


だよね!


「ちょっと待つのですわ!」


「その為に、規則正しい生活を送り、礼節を重んじ、社会常識を身に着け、私に出来ることをコツコツ・・・「ちょっと待つのですわ!」」


アリスさんが、なぜか涙目になってます。


「どうされましたか?」


「オーダ突っ走りすぎですの。すっかり置いて行かれてしまいましたわ、私。・・・商売に必要な法律や常識は私がお教えいたしますわ!」


アリスさんが名探偵のポーズをピシッと決めた。


「私、こうみえて法律をたしなんでおりますの」


そういって、不敵に笑った。


「ほえ?」


「私、魔法特許士なんですのよ」


「ええええええ!」


なんと!アリスさんは、最年少で合格した魔法特許士で、現在、魔法特許庁で働いているそう。

それは、鬼に金棒。オーダにアリス様だね。


「ありがとうございます。ぜひお願いします!」


ぺこりと頭を下げる。


「・・・べ、べべつに、オーダの為じゃありませんから。法律家は弱者の為に存在するからですわ。決して勘違いしないでくださいませ」


そう言いながら、プイッと顔を横に向ける。

照れてる。照れてる。いや、これは、デレてるな。

思わず、笑ってしまうと、アリスさんも笑った。

2人で、声をあげて笑った。




「「お姉さま?」」


そこに、アリスさんをうんと小さくしたような双子の女の子が立っていた。



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