来ちゃった①
待ちに待った、週末の朝が来た。
安定の早起きで目覚めると、いつもに比べ部屋は薄暗い。
屋根をパラパラたたく音。
窓を開けてみる。見事な土砂降りだ。まるで、バケツをひっくり返したよう。
今日は、教会前広場のファーマーズマーケットに行く予定だった。
でも、これじゃおそらく中止だろう。
そもそも、こんな大雨の日に外出するなんてありえない!
雨の日は家で過ごすに限るからね。
とりあえず、起きて朝の支度をすることにする。
いつもの通りに、りんご先輩にご挨拶。
発酵は順調の様。シュワシュワ良い感じ。
この調子なら、明日、明後日には、良い頃合いだろう。
もうすぐパンが食べられる!
テンションが上がったところで、朝食だ。
今朝は、スムージーにしよう。
<バナナ豆乳スムージー>
材料
・バナナ
・豆乳
・はちみつ
KIZAMIⅡに材料を入れて、ポチッと。
グラスにそそいで出来上がり~。
いただきま~す!
うん。美味しいね。安定の美味しさ。
バナナ・豆乳・はちみつ最高の組み合わせ!
手軽で満足の朝食だ。
で、朝食を簡単に済ませたのには、訳がある。
あんこを炊くのだぜ。うふふ。私はつぶあん派。
<つぶあん>
材料
・小豆
・砂糖
・水
鍋に、小豆と水を入れ、さっと下ゆでする。灰汁抜きですぞ!悪抜きですぞ!代官様!
ザルに上げ、また鍋に戻し水を入れて、今度は、コトコト煮ていく。ここで、しばしマツコデラックス。本でも読みながら、しばしマツコデラックス。こういう時テレビ欲しいよね。
それで、小豆が破けて、柔らかくなったら、再度ザルに上げる。で、またまた鍋に小豆をもどし、砂糖を入れて、火にかける。小豆から出てくる水分がなくなるまで、焦げないように混ぜ混ぜマゼラン祭り。
わっしょいわっしょい!
これで、粒あんのできあがり~!
自分であんこを炊くと、好みの甘さに調整出来るのが嬉しいね!
たっぷり作ったから、当分楽しめる。何に合わせようかな~。
そんなことを考えていたら、
『ちりり~ん』
ベルが鳴る。
(インターフォンみたいなものだ)
?????
誰か尋ねてきた?
1階に下り、扉を開ける。
「来ちゃった」
そこには、魔性の猫娘が立っていた。
(いやいや。来ちゃったじゃねーよ!)と内心思いながらも、ドキリとしたのもまた事実。
だって、ミシャさん可愛いんだもん。可愛いは正義だ!
「・・・どうも。ミシャさん?えっと?どういうことですか?」
何ともお間抜けな返事をしてしまう。
「あはは。今日は、お休みだし、予定も無かったから遊びに来たんだよ~。もうずぶ濡れだよ。入っても良いかな?」
雨でぬれたシャツが張り付いて、色っぽいのなんの。
これ、私が男だったら、大変なことになっちゃうぞ~。
「・・・どうぞ。散らかってますが・・・」
ドギマギしながら2階に案内し、ミシャさんにタオルを渡そうとするが、
「・・・ありゃ?もしかして、もう乾いてます?」
ミシャさんの服はすっかり乾いていた。
「あはは。ありがとー。優しいね~オーダは」
魔法か。いつの間に・・・。
「えっと、私の家、良くわかりましたね?」
「あはは。私、ギルドの職員だから~」
個人情報ダダ漏れかよっ!
「良いお部屋だね~」
「祖父が亡くなる前に色々手配してくれたみたいで・・・。私も気に入ってます」
「そうなんだ~。ところで、なんで、部屋に雑草が干してあるの?」
昨日採取した、雑草をザルに入れて、つるしてある。
晴れたら天日干しするのだ。しかし、聞き捨てならんぞ!
「雑草じゃないですから!ハーブですからね。お茶を作ってるんですよ」
「お茶を作るの?なんでわざわざ?紅茶があるのに?」
不思議そうにこちらを見つめる。うん。可愛いなぁ~。
そっか。この世界では、ハーブティーを飲む習慣が無いんだね・・・
「ハーブ茶には、独自の効能があるんですよ。紅茶は、眠気防止に効果がありますよね?で、例えば、カモミール。これは、紅茶とは反対に安眠効果があるのです。だから、神経が高ぶって眠れないときに、飲みます。ラベンダーは、リラックス効果です。不安や怒りを鎮めてくれます。こんな風に、ハーブによって効能も色々あるんですよ。香りもそれぞれ違いますし。だから、気分や体調にあわせて、お茶を選ぶんですよ~。オリジナルにブレンドしても楽しいですし」
ミシャさんが、大きな目を真ん丸にして驚いている。うっ、可愛いなぁ~。
「あはは。やっぱりオーダっておもしろい!その話、もっと聞きたい!紅茶が眠気防止に効果あるなんて知らなかったよ~。オーダって、どこでそんな知識を覚えたの?」
う~ん何て答えよ。あちらでは、普通に手に入る知識なんだよね・・・。
でも、そんなこと言えないしなぁ。
「・・祖父から教えてもらいました」
ってことにしておこう。そして話題転換。
「ところで、ミシャさん、今日は遊びに来たっておっしゃってましたけど、なぜ急に?」
だって、不自然でしょ。
「あはは~。オーダって面白そうだから、ゆっくりお話ししてみたかったの~」
ふむふむ。やっぱり変わり者認定ですかね~。
「そうなんですね~。では、お喋りでもしましょうか。あっ。その前に、何か飲み物入れてきますね~」
まあ。仲良くしてくれるのはありがたいものね。
それに、ミシャさん可愛いし。(コレ大事)
立ち上がり、キッチンへ。
「あはは~。って言うのが半分。あと、半分は虫よけかな?」
何かミシャさんがつぶやいてるけど、聞き取れなかった。
まあ、良いか。
その時、
『ちりり~ん』
本日二度目のベルが鳴った。




