素敵な出会い
麦わら帽子をかぶり、首にはタオルをかけ、上下つながった作業着を着ている。
農家のおじいちゃんといった感じである。
「お邪魔でしたかな?」
「いえいえ」
「こんなところで、若いお嬢さんにお会いするなんて珍しいもので、ついお声をかけてしまいました。今日は、ピクニックですか?」
「あ~はい。食材の採集もかねてですが」
むしろ、そっちがメインです。
「ほほほ~。そうですか~。なかなかにユニークなお嬢さんですな。私もちょうど一休みしようかと思っておったのです。ご一緒してもよろしいですかな?」
「ぜひぜひ。どうぞどうぞ~」
そう言うと、空間から、ラグを取出し、私の隣に敷く。
続いて、白地に青の小花柄の美しいティーカップとソーサー、ティーポットを取出し、なれた手つきで紅茶を煎れる。
「ほほほ~。私は紅茶に目が無いものでね~。お嬢さんもどうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
うん。すごく良い香りだ。どことなく、フルーツの香りがする。
それに、とっても素敵なティーカップだ。
こういうティーカップで飲むと、よりいっそう美味しさが増すね。
「とても美味しいです」
「ほほほ。それは良かった。この茶葉は、古い友人から譲ってもらったものでな~、私の最近のお気に入りなんですよ。気に入っていただけたみたいで良かった良かった」
「あっ。もし良ければ、こちらもどうぞ~」
パウンドケーキを差し出す。
「ほほほ。これは何ですかな?」
そっか。こっちの人は、パウンドケーキって知らないんだね。
「こちらは、小麦粉に野菜や果物を混ぜて焼き上げたものになります。こちらが塩味で、こちらがお砂糖を使った甘い味です」
「ほほほ。何とも珍しいものを!それでは、遠慮なく・・・」
パウンドケーキを手に取る。
「これは!・・・う~ん。なんという・・・・」
あれ、フリーズしちゃったよ。
「とても美味しいですね。このように美味しいものを私は、生まれてはじめて食べました!」
お世辞でも嬉しいよ~。
「はは。喜んでいただけて嬉しいです」
「ほほほ・・・そうですか。ところで、自己紹介がまだでしたね。私、ハーディー・ルーカスと申します」
「私、アヤノン・オーダです」
ルーカスさんは、とても博識で愉快な紳士だった。
きれいな光るきのこの話や美味しい紅茶の話を聞かせてくれ、思いがけずとても楽しい時間を過ごせた。
ルーカスさんは、田舎のおじいちゃんに、どこか似ていて、懐かしい気持ちにさせられた。
おじいちゃんに、もう二度と会うことはできないけど、元気で長生きしてほしいなと切に願う。
私も、元気で頑張ろう。
ルーカスさんと別れた後、野イチゴを摘んで家に帰った。
美味しいジャムを作ろうと思う。




