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他意はない

THEエルフがこちらを向く。


「オーダ。面倒をかけたわね。少し話しましょうか。ミシャ悪いけれど、部屋までお茶を」


「人使い荒いな~。ってうそうそ。了解ッス」


「オーダはこちらへ」



案内された部屋は、高級ホテルの客室の様・・・ではなく、大学の研究室のようだった。

バラを活けた花瓶・・・のかわりに、埴輪に似た謎の土器があちらこちらに飾られ、書斎らしきテーブルの上には、なぞのユルキャラのような石像がおいてある。


「かけて」


ネイビーの皮張りのソファに腰かける。よっこいしょういちっと。


「まだ、名乗ってなかったわね。私は、スカーレット・テンペスト。よろしく」


なんとも、びったりなお名前だこと。スカーレット・オハラみたいな雰囲気だもんね~。


「アヤノン・オーダです。私のこと憶えていて下さったのですね」


一度しか会っていないのに。

すごい記憶力だ。


「オーダは、特別よ。印象に残ったから」


さては、オヌシもトガリ山好きだな~?


「はは。トガリ山出身って、そんな珍しいですかね?」


「もちろんそれもあるけれど。一番の理由は、私が『鑑定』したのに、オーダのステイタスを見ることができなかったから」


それって、私が異世界人だから?これってバレルとまずい系?

何と返事しようか思案していると、彼女が探るようなまなざしで見つめているのに気が付く。

ぎくっ。目が合う。丸裸にされるような強い視線だ。

何この美人、めちゃくちゃ怖いんですけど!!!

私の怯えが伝わったのか、苦笑いを浮かべる。


「ごめんなさい。怖がらせてしまったかしら?ここで働いていると、腹の探り合いは日常茶飯事なの。では、率直に聞くわ。あなたの目的は一体何?」


目的って・・・ドワーフと結婚?料理で革命?どっちだろ?

そっか、とりあえず、年頃だし、婚活って言えばいいよね?


言いよどむ私に焦れたようだ。


「あなたは、あえてこの私に近づき、能力を自ら示した。よほど、私のパーティーに加入したいのね?私、パーティーに加入するものには、必ずこの質問をしているの。あなたは、ダンジョンに何を求める?あなたの望みは何?」


何言ってるの、この人?


「みたところ、あなたは、冒険者なら最低限身に着けなければならないはずの体術の心得も全くもっていない。通常、私はこういう人材を必要としない。足手まといなだけだから。けれど、あなたの魔法は魅力的。私以上の、陽魔法の使い手なんてそうそういない。おまけに天魔法まで使える。相当鍛錬を積んだのね、オーダ。ダンジョンへ入るあなたの目的は、この際いいわ。合格よ。歓迎する」


うん。全く意味がわからない。


「おっしゃってる意味がよく・・・」


「だから、私のパーティーに歓迎するってことよ」


念のため聞いとくか。


「バースデーパーティー的な?」


「的なって・・・あなた、ふざけてるの?」


いえいえ。恐れ多いです~。


「そっちのパーティーじゃなくて冒険者のパーティーっ」


うん。もう一回聞いとくか。


「冒険者が集まって、飲み会的な?」


「あなたパーティーの意味を知らないの?冒険者のチームよっ」


いやわかってますけど・・・。

なぜ私が冒険者チームに入りたいことになっているのか全くわからんのですよ~


「冒険者チームに歓迎?」


「そうよ。さっきから何よ、あなたアホの子?」


何気にひどくない?この美人。


「いや、何と言いますか、何か誤解されてませんかね?」


「誤解?・・・・あなたは冒険者よね?それで、私のチームに参加したいのよね?」


あらら。そこから、間違えてるのね~。

ここは全力で否定しないとね。


「いや。全く」


「ちょっとまって。では、なぜ、私に声をかけてまで、見ず知らずの冒険者の為に天魔法を使ったのよ?」


「なぜって・・・ケガしている人をみたら助けませんか?普通」


「はああああ?助けないわよ?何言ってるのあなた?」


いや助けますって。


「そう言われましても・・・ただの人助けですよ?テンペストさんだって助けてたじゃないですか?」


「私はいいのよっ。・・・・じゃあなぜ、このタイミングで、トガリ山から出てきたの?」


隕石が直撃したからだなんて言えないしな~。


「先日祖父が亡くなりまして。ずっと二人で暮らしていたのですけど。で、あのまま山にいると、一生誰とも話すことすらないな~って、町にでてきました」


うん。いきなり婚活とか言えないよね。何かこの人ちょっと怖いし。


「ちょっと待って・・・。冒険者でしょ?トガリ山では日々鍛錬してたのよね?」


はい出ました!仙人認定。トガリ山ってどれだけ田舎なのよ~。

だから、冒険者じゃないってば。


「違います。鍛錬なんて一度もしたことありませんよ。仙人でも賢者でもないですし」


「え?じゃああの山で一体何してたの?」


「・・・え?何って、普通に暮らしてましたけど」

うん。そういうことにしよう。住んでないけどね。


「普通って?」


「料理したり、洗濯したり、掃除したり」


「はあああああああああああああ?」


超絶美人が目ん玉飛び出た~みたいな顔してるし。


「そんな驚くことですか?みなさんトガリ山に偏見持ちすぎですよ~」

うん。押し通すぞ。


「いやいや、あの山は人が普通に暮らせる場所じゃないわよ。あそこの魔素、はんぱないから。魔力を高めるための鍛錬場でしょ?」


魔素って?どんだけー!(古っ)


「そう言われましても・・・」


「らちあかないわ。質問を変える。じゃあ、なぜダンジョンへ来たの?」


「スパイスを買いに・・・」


「やっぱり冒険者じゃない!ダンジョンへ向かうのね?」

えええ~。またそこに戻りますか・・・。何このループ。


「いやいや、料理の材料買いに来ただけですって~」


「はあああああああああああああ?」


超絶美人の目ん玉がついに飛び出ました!(うそだけど)


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