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カフェへ

店を出るころには、すっかり日も暮れていた。もう17時を過ぎている。

お昼が早かったから、お腹も空いたな。

どこかお店に入って早目の夕飯にしよう。

ちょうど二軒先にカフェがあったので、かなり歩いて足も疲れていたので、迷わずそこに決めた。


白を基調とした、女子向けっぽいカフェだ。

外から覗くと、まだ時間が早いせいか空いている。


『カフェ・るるる』


「いらっしゃいませ~。お好きな椅子にどうぞ~」


「椅子?」

見渡すと、店内にある椅子がすべて違うデザインのものだった。

なんとなく、すみっこの席の丸みを帯びた椅子に座る。

うん。なかなか良いすわり心地。


「こちらは初めてよね~。隣りが椅子工房でしょ。旦那がね、そこで椅子作ってるのよ~。なかなか良いでしょ?気に入ったら買ってね~。今日はどうする?」と初老の女性の店員さん。少し垂れた目がとても優しそう。


「ちょっとお腹がすいてるので、食べるものって何かありますか?」


「ずいぶん変わったことを聞くのね。ここで出せるのは、パンとスープよ。それに紅茶」


どうやら、この三種類しかメニューは無いようだ。カワイさんも言ってたしね。

そんなわけで、パンとスープと、食後の紅茶を注文した。

奥のキッチンで、彼女がスープをよそっているのが見えた。

どうやら、一人でこの店をやっているようだ。

確かに、パンとスープと紅茶だけなら、一人でもまわせるね。


「はい。どうぞ」


料理はすぐにきた。


スープは、キャベツ、玉ねぎ、にんじん、セロリ、かぶ、じゃがいも、それにひよこまめと赤インゲン豆がしっかりにこまれたスープだった。見かけは、うす~いポトフのようだが、野菜の旨味が溶けだしたスープは、熱々トロトロでとてもおいしい。


パンは、味も見た目もチャパティだった。チャパティって、ボソボソしているイメージだったが、これはしっとりとしている。それに、焼き加減がなんとも絶妙で全粒粉の香りが引き立ちとてもこうばしく、これまた美味しい。カワイさんの炭化したものとは大違いだ。(食べてないけどね)

ちょっと硬めのパンなので、スープに浸してたべると、とても良くあう。

ぱくぱく食べ進め、ぺろりとたいらげた。


食後の紅茶を飲みながら一息いれる。

うん。美味しい。

心も体もすっかりほぐれた感じだ。驚くほど疲労感が抜けている。


そして、今後について頭をめぐらす。

ん~課題は山積みだ。

やっていけるのかな。

仕事どうしよ。

友達できるのかな。

ましてや、ドワーフとの結婚なんて夢のまた夢?

ちょっと不安になる。


でも、結局は自分にできることを少しずつやっていくしかないのだ。

前向き大事!一度死んじゃったしね!

まずは、健やかな生活。

その為に、毎日、料理を作ろう。

出来るだけ美味しいものを作って食べよう。

出来るだけ、楽しく過ごそう。


カワイさんが言っていたような『料理で革命!』なんて大それたことを目指すより、こっちのほうが、シンプルで希望を感じる。

私は、扁平顔の凡人だもの。気負っても仕方ない!日々をゆるりと過ごすのみだ。

その積み重ねが、素敵な未来(ドワーフとの結婚とかね)へ繋がっているような気がするのだ。


店が少しずつ混みだしてきた。

紅茶も飲み終わり、席をたつ。



「ごちそうさまでした」


「10ロデムです。またいらしてくださいね」


原価を考えると割高だなって、一瞬あたまをよぎったけれど、このことは別の機会に考えよう。

今夜は、楽しいことだけ考えていたい。だって、記念すべき初日なのだから。

麗しいTHEエルフのこと・トガリ山好きなおばちゃんのこと・居心地の良いカフェ・・・そんなことだけを。

よし、お家へ帰ろう。


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