齟齬、そして、齟齬。
ありますよねー。自分が思ってることと、相手が思ってることが違うのに気づかず話を進めること。
そこに、善意の第三者が入り込むと地獄なんですよ・・ほんとに。
「‥どうしてこうなった。」
優希は振り返り、燃え盛る炎に包まれたトラスターデ城を見ながらそう呟いた。
前の世界での記憶はつい先ほど、10歳の誕生日を迎えた本日0の刻を過ぎて突然覚醒した。
(この世界での私の名前はリアナ・クリスタニア・アル・シュトライド。シュトライド王家の第三王女のはずよ。さっき思い出したけど、確かに女神様との約束で、お金に困らない身分と10人中3番目くらいに美人な外見、普通より少し良い身体能力と豊かな魔法才能っていうのはもらったわ。『転生先の世界で起こる様々な問題を解決する』なら、という追加条項も女神様が出してきたのでそれに被せて、更にもらえる能力を釣り上げたので、納得はしています‥。していますが‥何か納得ができない!つまり、この問題を解決せよってことなの‥。だったら、どうやって解決すればいいのよ!)
優希が転生の際、女神様(だと思っている見習い二人)にお願いしたやり取りは以下のようなものであった。
「優希の名前を気に入っているので、そのまま優希という名前が使えるようにして欲しいのです。」
「貴女の今の名前のそのまま、『ゆうき』または『ユーキ』とするのは神の介入でも難しいのです。名前を決める代わりに、他人に害意をもたれにくくする、説得をしやすくするという対人関係スキルを授けるのではどうでしょうか?」
「(おっ、いいスキルだねー♪)分かりました。」
「対人関係ということですが、見た目も重要です。外見は10人集まれば2番目に美人なくらいで、豊かな人間関係を築くため音楽・芸術に秀でるようにして欲しいのですが。」
「(うっ‥、)それだと能力が突出しすぎではないでしょうか。先ほどの対人関係スキルで貴女が説得をすれば多くの者が味方になってくれましょう。‥外見は元の《世界》と変わらないくらいで、音楽・芸術の才能は普通以上といったところではどうでしょうか。」
「(最初は高望みして、落とし所は擦り合わせる感じかな?)それは了承できません!女神様は良い人生をと言われましたよね?だから、元の世界と同じくらいで、同じような人生を送るのには不満があります!」
「(む‥、そう言われるとそうなのかな。《世界》の文化水準が同じくらいでは、似たような人生になるものなのか‥。)それならば20人中3番目に美人と言われるくらいならばよいでしょうか。」
「(うひょー、案外いい条件じゃない。ここは渋々という感じで)‥分かりました。それでお願いします。」
「音楽や芸術などの才能は小さなころからの育てられ方が重要なので、高等な教育を受ける十分な知識と身分があるようにして欲しいと思います。」
「(はっ、しまったなー。音楽と芸術について‥!どちらか一方だけにすればよかったなぁ‥。さっきの優希ちゃんの記憶消すように801ちゃんに操作してもらおうかな?でも世界神様ぜったいにあたしたちを見てるよね。‥あとで怒られないように、言ってしまったからにはこれも叶えてあげよう。)‥そうですね。才能があっても開花し広く知られることとならねば意味はありません。よいでしょう。‥では、付与する能力は以上とし‥」
「(‥何かまとめようとしてる?!)ま、待って!転生先の世界は元の世界と似ているということですけど、生活の価値観や文化のレベルはどうなっているのでしょうか?それについての情報が知りたいです!」
「(‥えーっと、)元の《世界》の知識は、《世界》の急な変革をもたらすために持っていくことはできません。転生した後、その成長の中で掴み取って欲しいのです。(‥ほっ。これでいいかな?)」
「(まじかよっ!知識忘れちゃうのかよ‥)‥ただ、少し心配で‥。自分が今お願いしている能力がどの程度役立つものなのか、それが心配なので‥。教えて欲しいです。」
「(うーん、どうせ忘れちゃうからいいよね‥。)では、元の《世界》での中世といった文化レベルです。技術はそこまで発展しておらず、未開の土地も多く残っています。ヒト種のほかに亜人種としてエルフやドワーフなども住んでいますが多くの交流はありません。技術発展が遅れているのは、この《世界》のヒト種や亜人種などは『魔法』を使うことができるからです。」
「(な、何だってっー!!)ま、魔法が使える世界なら、魔法に関する資質や才能もあれば欲しいです!!」
「(‥何かまずいこと言ったかな?でも魔法は誰でも使える《世界》だし、それくらいならいいか。)分かりました。初めは難しいと思いますが‥そのうちその《世界》の魔法を使えるようになるでしょう。他に無いようなら‥」
「(ここは素早く追い打ちをかけて!)だ、だとしたら、悪魔とか魔獣や凶暴な獣もいますよね?もしものときのために、他の人よりちょっと身体能力を高くして欲しいのですが。」
「(‥もうっ!これ以上はダメよ!)‥魔法が使えれば、対処はできるはずです。何より貴女のまわりには多くの者が集まるでしょう。その者たちと団結すればその《世界》で起こる困難には対処ができましょう。」
「(ここは圧しきるっ!)いえ‥まだ見ぬ、その者たち、心を通わせるその者たちを含めて、私の転生する世界の人を守り、その世界をより良く変えていきたいのです!」
「(むぅ‥、《世界》を変えたいって‥。あ、でも転生者に能力付与するのはより良い《世界》へと向かうようにする手助けみたいなものだって世界神様が言ってたから。別に悪いことじゃないよね?よーし、ここでちょっといい能力付与したら、世界神様からあたしたち褒められちゃうかな??)わ、分かりました。確かに転生先では多くの困難に直面するでしょう。それだけにとどまらず《世界》には様々な問題が起こっているでしょう。‥では、私と約束をしませんか?転生した後の貴女は『《世界》の様々な問題を解決する』という天啓を得た状態とします。それを為してもらえると言うならば、望みを叶えましょう。」
「分かりました!やりましょう。‥でも、困っている世界の人々がどこにどんな感じでいるのか分からないと難しいので‥。それが分かるようなスキルのようなものって何かありませんか?」
「‥ふぅ、これだけですよ?ではこの《世界》がどうなっているかが分かるスキルも与えましょう。」
「ありがとうございます!‥あと、ほんとに最後に、家族と親友たち数人には夢の中でもいいので『楽しい人生だった!ありがとう!』って伝えておいてもらえませんか。それで心置きなく転生できると思います。」
まったく話が進まないとお叱りを受けると思いますが、もうほんとに初投稿なので許してください・・。