転生、そして、転生。
初投稿作品になります。拙い部分も多いことは重々承知しておりますが、何卒温かく見守っていただければと思います。
「そうですか‥。私、死んだのですね‥。」
「ええ。貴女には他の《世界》へと行ってもらいます。」
周囲には何も見えない空間。ただ白く浮いているのか固定されているのかさえ分からないそんな場所で、どこからともなくする声が響いてくる。
女性なのだろうか。その声ははっきりとして、何より高位の存在を感じさせるものだった。
「‥あまり驚いていないようですが?」
「驚いていますよ?もちろん。『あ、死んだな』とは思ったので‥。」
少し論点がずれたことを言いながら、優希はつい先ほど(?)の出来事を思い浮かべる。
鈴木優希は地方の薬局で働く、いわゆる薬剤師だった。
その日は平和記念式典という国家行事がその地方であり、国賓が多数来訪されるため朝から物々しい警備とそれに伴う交通規制が敷かれていた。優希が働く薬局はその記念式典を行う公園の近くにあるため、普段の出勤ルートを迂回して早めに家を出て歩いていたのである。
公園近くになり、人通りも交通量も多くなってきたとき、交差点から目の前に現れる一台の暴走車両。そして周囲から上がる悲鳴のような声。暴走車両は自分の方に突っ込んできて・・。
「貴女が助けた男の子は、無事ですよ。残念ながら代わりに貴女が命を失ってしまいました。」
「えっ?私が男の子を助けたのですか?」
「はい。貴女の隣に立っていた親子に車両が向かっていき、その親子を突き飛ばすように助けました。」
なるほど、車から逃げなければと思い、反転して走り出したときにぶつかったのだろう。
「父親も骨折を負い意識不明の重体だったのですが、あなたのおかげで致命傷にはならず、回復しました。男の子はこの事故を教訓に脳外科医になり多くの人命を助けて、国に働きかけて安全な交通システムの開発と救助体制の確立、そして社会保障制度の基礎をつくる人物となります。貴女はこの《世界》の多くの人を助けるきっかけになったのです。」
「はあ……」
良かったとは思う。多くの人が助かり、世界が幾分かは救われたというならば、しかもそのきっかけは自分が為したことだというなら、医療に携わる者として悪い気はしない。しかし、死んでしまってはもうこれ以上何もできないではないか。
「‥いくつか質問があります。まず、ここはどこであなた様は、その‥どなたなのでしょう?」
「良いでしょう。これからの貴女にも必要となることです。説明せねばなりませんね。私は《世界》を司る神。ここは‥私の中です。」
「あ、やっぱり。じゃあ‥じゃない、では、これからどうなるのですか‥?」
不安である。死んだというならば、天国か地獄に行くのだろうか。また、この意識は消えてしまうのだろうか。死んでしまったとはいえ、自分なりにそこそこ満足のいく人生だったのだ。欲を言えばまだやりたいこともたくさんある。人並みに恋はしてみたい!
「先ほど言ったように貴女には他の《世界》へ行ってもらいます。貴女のいた地球が存在する《世界》とは別の《世界》です。私の‥いくつかある《世界》のうちで、貴女のいた地球ととてもよく似た《世界》ですから心配なく。」
「ええっ!他の世界に行くってどういうこと!?」
優希は最初に神から言われたことを聞き逃していた。というより、ぼーっとして頭に入ってはいなかった。
しかし、また人生がやり直せるというなら、ここはその提案に乗っておきたい。あまり不自由はなかったとはいえ、ごく普通の子どもであり学生であり社会人だったのだから、もう少しこれまでとは違った楽しい人生が送ってみたいと思ったこともあった。それが、まさに目の前まで来ているのだ。この提案には乗っておかねばなるまい!!!
「貴女には他の《世界》に転生してもらいます。新しく生まれ、貴女にとってよい人生を送ればよいでしょう。貴方のいた《世界》をより良く発展させる功績もあったことですし、不安を少し解消するためにも、私から少しばかりの能力を付与しようと思います。あまり突出した能力は付与できませんが、何か希望はありますか?」
チャンスである。
試されるときがきた!
バーゲンセールではズカズカ突っ込むタイプではないために悔しい思いも何度かしたが、だからこそ目の前にお宝があるなら積極的に行くということを学んだ。
学んだことをいつ生かすのか。‥今でしょ!
「では女神様にお願いがございます。お願いというのは……」
◇ ◇ ◇
「‥分かりました。では、貴女の望み通りの条件にこれらの能力を付与し転生させましょう。」
完全勝利キター!!
どことなくやれやれという諦めの気持ちにも似た感情が含まれているような気がするが、しつこく食い下がってよかった!
どこからともなく、複数の光の球が私の中に飛び込んでくる。そのとき、ふわっと胸から浮き上がるような感触とともに体の中が熱くうねるような何かで急速に満たされていくのが感じられた。
「‥うぅ、熱いっ!」
「では貴女にとって良い《世界》とともに人生を送れることを祈っています。」
優希は大きくなった光に包まれそして一気に収縮したかと思うと消えていなくなった。
チャリンカシャン‥
消えてなくなった虚空のその点にピアスが一つ漂っていた。
なるべく早く続きを書こうと思います。設定は細かく作っていませんので、良いように解釈してくださると幸いです。