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辿り着いた場所

「着いた、着いた。それにしてもほんと大きい建物ね」


 ルミナは茶色のレンガで作られている清潔感のある建物を見上げている。


 それはイグナイトギルドに匹敵するするほどの大きさで、四階建ての建物だった。建物を囲むように高い塀が建てられ、唯一確認できる門には10代後半といったところの男女が立ちふさがっていた。その二人は鋭い目つきで周囲を見渡し、ネズミ一匹でも見逃さないといった感じだ。そして俺は男の方と目が合うと、鋭い目をしたまま俺の元へ向かってきた。


「おい、そこの二人。そんな物騒なものをぶら下げて、一体何の用だ」


 男は俺の目の前に立つと、背中の剣を指差した。


「いや、俺達は冒険者なんだけど迷ってしまってさ。ここがどこなのか教えてくれないか?」


 俺がそう言うと、男は怪訝そうな過去で俺の全身を舐め回すように見ている。


「迷った? お前等まさかあの森を抜けてきたのか?」


 あの森というのがどの森のことを差しているかは分からなかったがとりあえず頷いてみた。すると目の前の男はますます怒りを露わにした表情を見せる。


「ふざけるな! お前らみたいなのがあの森を生きて出られるものか! 本当のことを言え!」


 本当もなにも事実だし、他に言いようがないのだが……確かに俺ぐらいの年の子供があの森の魔物を倒すのは不可能と思われても仕方ないのかもな。俺がどう説明しようか迷っていたらルミナが口を挟む。


「ルクスの言っていることは本当よ。襲ってきた魔物は全部私達が倒したんだから」


 男の目線がルミナにうつる。すると男の顔がみるみる赤くなっていく。


「か、かわいい……」


「「えっ……」」


 男が放った一言に思わず二人で声が漏れた。


「お、御名前は何といわれるのですか? 年はいくつですか? どこから来られたんですか?」


 俺の時とは一変して、威圧的なものはなく、優しい口調で次々と質問を投げかける。こいつルミナに一目惚れしやがったな。このままにはしておけん。


「おい、俺の彼女にちょっかいだすなよ。迷惑してるだろ」


 と言って、ルミナの前に立つ。かわいいというのは同意するし、良い目をもているなと思うが悪い虫が付くとこはほっとけない。再び男は俺を睨みつけ、


「はぁ? お前の彼女だと? この女神様がお前如きに惚れるわけないだろうが。もう怒った。お前が誰であろうと関係ない」


 腰に携えていた剣を抜こうと手を添える。おっ、こいつやる気か? 正直あまり揉める気はないんだけどな……どうしようかと考えていると門の方から聞いたことのある声がした。


「そこまでだ!! やめろ!!」


 殺気だっていた男は青ざめ、後ろを振り返る。俺も声の方へ目線を移すと、門番をしていた女性につれられてあの人が歩いてきた。


「やぁ、約束通り来たみたいだな。ルクス君、ルミナさん」


 穏やかな笑みを浮かべたのはセラさんだった。


 まさかセラさんに会えるなんて。ルミナは喜びのあまりにセラさんに抱きついている。しかし本当に運がいい。知り合いに会えるなんて。それにセラさんだったらアスールへの行き方も分かる。


「セラさん、お久しぶりです。ということは、ここはセラさんの学校なんですか?」


「ん? 分かっててきたんじゃないのか? まぁ事情は中で聞こう。あの森を抜けるのは疲れただろう」


「確かに疲れましたね。ではお邪魔します」


 俺とセラさんのやり取りをポカンとした表情で見ていた男が我に返ったのか、またうるさく騒ぎ出す。


「セラ先生、いいんですか。こんな得体のしれないやつを学校にいれるなんて」


「おい、ラース」


 セラさんは低く冷たい声で男の名を呼んだ。こいつラースって言うのか。その声にラースは凍りつきピンと姿勢を正す。


「は、はい!」


「よかったな、先生が止めに来て。止めなかったら今頃血の海に沈められてたぞ」


 セラさんはそういうといきなり俺の腕をつかみ袖を捲る。Ⅳと記されたランカーの腕輪が露わになる。ラースがそれを見るとガタガタと全身を震わせた。


「Ⅳの数字の腕輪……ま、まさか……先生がランカーの腕輪を奪われた冒険者っていうのは……」


「そう彼だ」


「も、申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ」


 物凄い勢いで俺の前で深々と土下座した。セラさんやめてよ。いくらなんでも血の海には沈めないから……精々げんこつで痛がらせるつもりだったのに……


「ふふ、冗談だよ。ルクス君はその程度で怒ったりしないよ。でも悪いと思っているのなら、彼らを客室に案内してくれ。私は少し準備していくから」


「はい、わかりました。それではルクス様、ルミナ様、こちらへどうぞ」


 様付けなんてやめてくれ……




 


  

 

 

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