表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/118

新たなパーティー

 少しすると、首を抑えたエドゥーがテントの中に入ってきた。


「よう、ランカー。調子はどうだ?」


 エドゥーはさっきまでの戦いの時とは違い温容な顔で俺に話しかけてきた。


「ランカーって呼ぶなよ……調子? 最悪だよ……」


「あぁ、すまんすまん。ルクスだっけか? しかし俺をあっさり倒しといて最悪はねぇだろ。まぁでも戦ってくれてありがとよ。おかげでランカーの強さってのが分かった。素手でやられちまうくらいだからな……まだまだ修行が足りない」


 まだ痛みがあるのか首を擦りながら溜息をついている。俺との実力差を肌で感じ、かなり落ち込んでいるようだ。


「まぁランカーっていっても実力は様々だと思うよ。俺より強い奴には出会ったことないし、ランカーってのは10人ぐらいいるんだろ? たぶんだけど俺との戦いはあまり参考にならないよ」


 実際俺はランカーだったセラさんも腹パン一発でKOしている。ルミナとの戦いでセラさんの強さは十分に分かったが、それでも百回も転生した俺には全く敵わなかった。だからこそ俺に負けたからといって、その差がランカーとの差とは限らないのだ。それにエドゥーも十分強かった。油断はあったとはいえ、俺の攻撃に耐え、俺にダメージを与えた。エドゥーはB級と言っていたが、以前戦ったA級のゴランよりも実力はかなり上だろう。


 エドゥーは途方に暮れた表情から、俺の言葉に活路を見出したのか少し晴やかになっていた。


「そうか。俺は送り出してくれたあいつらの期待に応える為にも絶対ランカーにならなければ……」


「ん? あいつらって?」


「俺は冒険者をやる前はアスールに仕える兵士だったんだ。でもちょっとした事件があって除隊させられてな。そんな俺に冒険者になることをを進めてくれたのが部下達なんだ。こんな俺を慕ってくれていてな……」


 なるほど……除隊させられたってのは気になるが、まだB級なのにあれだけ強かったのには理由があったのか。部下とか言ってるし、兵士として優秀だったのだろう。


「エドゥーさんならいつかなれるかもね」


 と俺が奨めると、自身に満ちた表情で、


「おう。とりあえずさっきルクスが言ってた、王都のグレイブってランカーと戦ってくるぜ」


 あっ……そういえばそんなこと言ったな俺……グレイブの実力は分からないが、もしかしたらいい勝負するのかな。ちょっとだけ結果が気になって見に行きたくなったが俺には時間があまりないのだ。


「頑張って。俺から紹介されたって言えば大丈夫だと思うよ。あとグレイブさんには魔法が効かないから使わないほうがいいよ」


 グレイブには悪いが王都では俺もそれなりに被害にあってきた。これくらい復讐させてもらおう。


「分かった。でも俺は魔法はほとんど使わなけどな。この筋肉で俺はランカーになってやる」


 エドゥーはそういうと、二の腕に山のような力こぶをつくった。その立派な筋肉に不覚にも触りたくなってしまった。俺も筋トレしようかな……自分の細腕を見て男として少し負けた気がしてしまった。ステータスでは圧倒してるはずなのに……


「よし、じゃあバルトを連れていってくるぜ。シャルルは約束通りお前等のパーティーに入れてやってくれ」


 そうだった。そういう約束だった。しかしいいのだろうか……シャルルちゃんの意思も聞かずにそんな重要なことを決めてしまって。


「いや……でも……エドゥー達もシャルルちゃんは必要なんじゃ……」


「確かに俺もバルトも近距離専門だからな。魔法が得意なシャルルがいれば戦略も広がる。だが約束は約束だ。それにシャルルはいつかお前等とパーティーを組みたいって言ってたからな」


 えっ? 俺とパーティーが組みたい……やっぱりシャルルちゃんは俺のこと……エドゥーの言葉にやきもきしていると……


「ルクスー、食材手に入れてきたわよー」


 ルミナが勢いよくテントに入ってきた。手には小ぶりの猪の足が握られており、後ろにはシャルルちゃんも立っていた。


 また猪か……ほんと好きだな。


「シャルル、いい所に来た。俺とバルトは今から王都へ行ってくる。シャルルはルクス達のパーティーに入るよう今話してたとこなんだ」


 シャルルは呆れたような表情を浮かべる。


「もう、勝手なんだから。でもしょうがないわね。そういう約束だったし」


「すまん。でもよかったな、憧れのパーティーに入れてもらって」


「馬鹿! そんなこと言わないでよ。恥ずかしいじゃない」


 シャルルちゃんは顔を真っ赤にして、エドゥーの太い腕をポカポカ叩いている。俺も何故か恥ずかしくなってしまった。


「ははは。じゃあ行ってくるぜ。元気でな」


 エドゥーは軽く笑みを浮かべテントを去った。


「頑張ってね、エドゥー……」


 シャルルちゃんはエドゥーが去っていった方を見つめながらそう呟いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ