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ルクス対ランカー

「シャイニングボルト」


 セラさんが放った至高魔法が、まばゆい光と轟音を放ち俺に直撃する。


 しかし、俺は何もなかったかのようにその場に立つ。うん、大丈夫だ。さすがに多少ダメージはあるものの少なくとも俺のステータスはセラさんを圧倒しているようだ。


「バカな、直撃だったはずだ……」


 セラさんは自分が放った魔法が相手に何もダメージを与えられてないことが信じられないといった感じだ。


「じゃあ次は俺からいきます」


 セラさんは剣を構えて身構えたが、俺はセラさんが瞬きする間に距離を詰める。一瞬の出来事に驚き、バックステップで再び距離をとろうとするが、もう遅い。


 俺は左手の手刀でセラさんの手首を打つ。苦痛に顔を歪め剣を落としてしまう。そして右手に握り拳を作り、脇腹を打つ。防御は間に合わず直撃し、ボキボキと骨を砕く音がした。


「ぐぅぅぅ」


 セラさんはその場に膝をついてしゃがみこむ。


「まだやりますか?」


 俺が立ったまま見下したように言うと、


「いや、もう十分だ。私の負けだ。ありがとう」


 と満足したように笑っていた。


 ありがとう?負けて、骨を折られてなんで感謝されるんだ?


 するとセラさんはゆっくり立ち上がり、ルミナに近付き片膝をついて手をかざす。何かを唱えたと思ったらルミナの体が光に包まれ、傷が治っていく。苦痛に歪んだ表情も安らかになっていく。やがて、スースーと寝息が聞こえた。


「よし、これで大丈夫だ……ちょっと疲れたな……私も少し寝、ると、し……」


 魔力を使い果たしてしまったのか、セラさんもルミナと並んで寝てしまった。


「あーあ仕方ないな。ルクスくん、ルミナさんを背負ってくれ。俺はセラを運ぶから」


 俺とグレイブさんはそれぞれ女性を背中に背負って、ギルドに戻ることにした。


 町を歩いていると人の目が痛い……男二人が気絶した綺麗な女性を運んでいるなんて怪しさ満天だ。誘拐と思われても仕方がない。有名人のグレイブさんが隣にいなかったら確実に通報されているだろう。と、そんなことを考えていたらグレイブさんが話しかけてきた。


「ごめんな、ルクス君」


「え?なにがですか?」


 グレイブさんに謝られる事をされた記憶がないので戸惑った。


「セラにルミナさんを本気で倒すようにお願いしたのは俺なんだ。セラは知っての通り回復魔法を使える。それを利用して、君が戦うように仕組んだんだ。どうしても君がどれ程強いのか知りたくてね……ほんとうに申し訳なかった」


 セラさんを背負ったまま、深々と頭を下げている。


 なるほどね。一回俺に自分の傷を治して回復魔法を見せておいて、その後ルミナに回復が必要なほどのダメージを与えた。そうなれば俺はセラさんに回復魔法を使ってくれるように頼む。あとはそれを条件に戦うだけというわけか……納得した。


 でも今回はルミナが先に決闘を挑んだ。先に仕組まれたことだったらルミナを傷付けたのは許せないが、そうではない。本来決闘ならば殺されても文句は言えない。それを俺を引き出す為に回復できるほどのダメージにしてくれたと思えば、逆に感謝すらできる。


「いいんですよ。ルミナが望んだ戦いでしたし、ちゃんと治してくれましたしね。ただ今日見たことはあまり広めないでほしいですけどね」


 それを聞いて安心したのか顔を上げ、再び歩き始める。


「そう言ってもらえると助かるよ。でもたしかにランカーが破れたとあったら世間は大騒ぎだろうな。わかった、できるだけ外には漏れないようセラにも言っておく」


「感謝します。あっそういえばセラさんクレアさんと同じ技使ってましたね。クレアさんの師匠とかですか?あと至高魔法のことや、回復魔法のこととか聞きたいことがいっぱいあるんですが……」


 今日の出来事は俺の常識を覆すものばかりだった。レベルが100を越えたルミナをあっさりと倒すランカーの強さ、詠唱を必要としない至高魔法、物語の中でしか見たことがなかった回復魔法……やはりこの100回目の世界は今までと何かが違う。全てにおいてレベルが高い。俺もまだまだ学ぶことがありそうだ。


 グレイブさんは俺の質問に少し困った顔をしていた。


「あーセラはクレアの母親なんだ……」


「えっ!?」


 俺はあまりの驚きのあまり歩みを止めてしまった。


「ということはグレイブさんとは夫婦?でも家名はシンクレアじゃ……」


「いや、俺達はとっくに別れてる。だから家名は別々なんだ。あと魔法については後でセラが目覚めたら聞いてくれ。魔法があまり得意でない俺にはちゃんと説明できないからな」


 そう言うと再び歩き始めた。


 クレアさん、ランカー同士の子供か……どれだけサラブレッドなんだよ。そりゃ強くなるよ。B級の父とA級の母の俺とは大違いだな。でも別れたりしてないから、俺はそっちのほうがいい。まぁ父とはもう何年も会ってないが……


 ギルドにつくと、医務室に二人を運んでベットに寝かせる。俺はグレイブさんの部屋に招かれた。


 ソファーに座って待っている。グレイブさんは部屋の奥にある台所に向かった。


「ルクス君、君コーヒーは飲めるかい?」


 奥から声が響いてきた。


「はい、大丈夫です」


 と答えると、奥からカチャカチャと音をたて二つのコーヒーを持ってきた。


「いただきます」


 一口すすると、朝飲んだコーヒーと全く同じ味がした。


「グレイブさん、これ相当いいコーヒーでしょ。一杯一万ピアするとかいう高級品の」


 俺が自慢気に言うと、


「はっはっはー、一万ピアもするわけないじゃないか。たしかに良いコーヒーだがせいぜい普通の三倍、千ピアもしないぐらいだよ。コーヒーソムリエの実力はまだまだだな」


 と、笑われてしまった。


 そんなバカな……俺のレベルで味覚を間違えるなんて考えられない。ということはルミナはぼったくられた?それともパン屋が騙されて入荷したのか?まぁどっちにしろ、ルミナには少し注意しておこう。たくさん食べるのを責めるつもりは全くないが、金使いが荒いのは少し考えてもらわないと。あっ、だから二人でお金を管理しようって言ったのを断られたのか。


 そんなことを考えていると、ガチャと扉が開き目を覚ましたセラさんとルミナが部屋に入ってきた。



 

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