ランカーの仕組み
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「いてぇぇーーーーーーー」
「どうしたの、ルクス。大丈夫?」
俺は今トイレの中にいる。昨日無理して食べたトンガラシが今出ているところなのだが……あまりの激痛に叫んでしまった。それに驚いたルミナが心配してトイレの前に来てノックしている。
「だ、大丈夫だよ。ちょっと足の小指をぶつけただけだから」
さすがに正直に言うのは恥ずかしいので誤魔化した。
「なぁんだ。ビックリした」
そういうと、リビングに戻っていく足音が聞こえた。
よし、これで落ち着いてやれる。歯を食い縛り力を入れる。再び激痛が襲うが今回は耐えきった……俺、がんばったよ。
リビングに戻ると、ルミナは朝のコーヒーを飲んでいた。ルミナは昨日あんなに食べたのに、痛くなかったのだろうか……聞いてみようかな。でも女の子に聞くのはさすがにダメだよな……さすがに嫌われそうだから止めた。
俺もルミナの向かい側の席に座って用意されていたコーヒーをすする。ん?なんかいつもより美味しいな。
俺とルミナはプラシアの町にいるときから朝はコーヒーを飲んでいた。ルミナは最初カフェオレにしていたが、いつしか俺の真似をしてコーヒーに変わっていた。プラシアを出るときにいつも飲んでいるコーヒー豆を持ってきたのだが……
「ねぇ、ルミナ。コーヒーなんか変わった?」
「あっすごーい。よく気づいたね。朝からパン屋さんにいったら美味しいコーヒー豆が入ったっていうから買っちゃった」
「へぇーたしかに美味しいよ。高かったんじゃないの」
そう言って、また一口すする。
「どうかなー。10杯分で10万ピアだったかな」
ブファーーーー
あまりの値段に口に含んだコーヒーを吹き出してしまった。だとしたら今吹き出したコーヒーは500ピアぐらいか。
「なっなんでそんなに高いの?」
「なんかねー動物の糞からとれるらしいよ。その動物は美味しい豆しか食べないから、消化できずに糞に入っている豆も美味しいんだって。希少だから今逃したら一生飲めないって言われたから、つい買っちゃった」
ちょっと待って。動物の糞って言った?確かに味はいいんだけど……ほんとにそんなものがあるのだろうか。今度図書館で調べてみよう。しかしコーヒーに10万ピアか。いくら美味しくても普通は買わないよ。しかもいきなり何もない朝に普通に飲みますかね。いや、俺が味に気づかなかったらほんと無駄だからね。
食べ物だけでなく、飲み物にもお金を使うのね……そりゃあ貯金貯まらないよ。あっそういえば糞の話題でたから流れで聞いてみようかな。
「ねぇ、ルミナ?」
「なに?」
「糞の話で思ったんだけど、ルミナ昨日いっぱい辛いもの食べたのにお尻痛くならないの?」
ルミナは席を立ち上がり、顔を真っ赤にしている。体がプルプル震えている。
これは、やっやばい!!
「ルクスのバカーーーー」
これ言われるの2度目だなっと思った瞬間、ルミナが持っていた熱々のコーヒーをかけられたあげく、強烈なビンタを食らった。やっぱり女の子に聞いたらダメでした……
今日はグレイブさんに依頼されていたクエストの報告をするためにギルドへ向かった。ギルドへ入るといつもの風景が広がっていた。掲示板を見ても特に問題のあるクエストはないようだ。平和でなによりだ。
俺達はギルドの最上階にあるギルドマスターであるグレイブさんの部屋をノックした。なんか笑い声が聞こえる……お客さんか?
「だれだ?」
中からグレイブさんの声が聞こえた。
「ルクスです。クエストの報告に来ました」
そう言うと中からガタガタと音が聞こえ、勢いよく扉が開かれた。
「おぉールクス君にルミナさん、おかえり。しかし、大変だったみたいだな。君がダメージを受けるなんて。さぁ中に入りなさい。ちょうど紹介したい人もいるし」
グレイブさんは俺の顔をまじまじと見ている。俺は今、おでこにタンコブができて、頬っぺたが赤く腫れていた。違うんです、これは昨日気絶して額をぶつけたのと、朝からルミナにビンタされたんです。とは情けなくてとても言えなかった。
中に入ると、真ん中にテーブルがあり三人掛けぐらいの高級そうなソファーがテーブルを挟んで二つ置いてある。その片側に長い真っ白な髪を後ろで1つに結んだ線の細い女性が座っていた。ちょっと目付きは鋭いが美人さんだ。
「はじめまして。私はルクス、こちらはルミナといいます。一応二人共A級冒険者です」
俺が立ったまま自己紹介すると、白髪の女性も立ち上がる。
「はじめまして。私はセラ=シンクレアよ。一応ランカーだけどまわりが騒いでるだけであまり興味はないわ」
ランカー!!この国にはグレイブさんしかいなかったんじゃ……
「彼女が以前言っていた助っ人さ。特定のギルドには所属せず、自由に世界中を旅している冒険者さ。まぁランカーは変わり者が多いからそうゆう奴は多いんだがな」
「誰が変わり者だ……」
セラさんはグレイブさんを睨み付ける。
「そう怒るなよ。実際そうなんだし。しかし、彼女は強いぞ。おそらく女性では世界一だ。ランカーの中でもたしか四番目だったっけ?」
へぇーそうなんだ。けど色んな国にいるランカーの順番ってどう決めてるんだろ……あれ?そういえばランカーにはどうやったらなれるんだっけ?
「グレイブさん、ランカーってどうやったらなれるんです?」
別にランカーになるつもりはないが気になってしまった。
「簡単だ。ランカーを倒せばいいんだ」
セラさんが口を挟んできた。そして腕輪を見せてきた。そこにはⅣという数字が彫られていた。グレイブさんにも同じ腕輪をつけていた。Ⅴという数字が見える。セラさん、グレイブさんより強いのか。
「おいおい、俺が聞かれたんだぞ。よし、詳しく話してやろう」
そう言うと、ランカーの歴史を話してくれた。話をまとめると昔ギルドはあったがランカーというものは無かったらしい。その当時最強の魔術師といわれた冒険者が、他のS級と同列なのは我慢できないとランカー制度を作り、特殊な魔術で10の腕輪を作成した。その腕輪は一度つけると誰かに破れるまで外すことができないらしい。ちなみにランカー同士が戦い下位の者が勝つと数字が勝手に入れ替わるとも言っていた。
「と、こんなもんかな」
グレイブさんは近くにあったコップに入った水を飲み干す。
なるほどね、単純で分かりやすい。しかし、そんな高度な腕輪を作るなんてその魔術師どんな奴だったんだろうか……
「私を倒せばランカーになれるぞ。やってみるか」
いきなりセラさんが無表情で挑発してきた。
「いやいや、俺はランカーとか興味ないですから」
「そうか……」
少し残念そうにしている。
「あのぉ、私じゃダメでしょうか」
ルミナが小さく手を上げて、恐る恐る聞いてきた。