ルクスの秘密
「ルクス、おきて。朝ご飯できてるよ」
もう朝か……眠い目を擦りながら部屋を出ると、食欲をそそるいい香りが漂ってきた。
リビングへ入ると朝からテーブルいっぱいに食べ物が並んでいる。こんな食べられないよ、ルミナ……
「おはよう、ルクス」
「おはよう」
いつもの挨拶なのに、少しだけ恥ずかしくなる。ルミナも俺と同じのようであまり目を合わそうとしない。まぁ、すぐ慣れるだろう。しかし、振られないでほんとによかった。振られていたら朝の挨拶すら無かったかもしれない。
「今日もいっぱい作ったね……」
「うん、いっぱい食べて強くならなきゃ。昨日は言いそびれたけど、私の目標にはルクスも入っているんだからね」
「えっ、俺?」
「いつか、ギャフンっていわせてあげるんだから」
ギャフンって……誰か言ったことあるのかな。っていうか、いっぱい食べると強くなれるのか。あんまり大きくなられても困るのだか……
でもルミナの成長速度ならば俺を越えることもありえるのかもしれない。今、何レベルなんだろう? どうしても気になり聞いてしまった。
「ねぇ、ルミナ。 今、何レベルなの?」
「ルクスが教えてくれたら教えるよ」
ルミナはニコニコ笑っている。うーん、そうきたか。でもルミナもお兄さんのこと話してくれたし、俺も転生の事を正直に話すか……でも付き合ったばかりで化物と思われるのも嫌だな……
食事をとりながら何も喋らずにいると、
「ねーねー、いくつなの。今までみたいに誤魔化してもダメよ。もう恋人同士なんだから秘密はなしでいきましょう。大丈夫。どんな秘密があってもルクスはルクスだよ。嫌いになったりしないから」
俺の心を読んだかの如く話しかけてきた。うん、ルミナを信じよう。俺もちゃんと話すんだ。
「今の俺のレベルは……775です」
「えっ……、聞き間違えかな。もう一回言って」
「755です!」
「あ、ありえない……強いとは思っていたけど、そんなレベルなんて。私もまだまだね。頑張らないと」
ルミナは俺のレベルを聞いても平然としていた。
「あれ? 怖くないの」
俺の質問に、ルミナは意外そうな顔をしている。
「怖い? なんで? 怖いわけがないじゃない。さっきも言ったけどルクスはルクスだよ。でもなんでそんな強いの? もともと強かったの?」
「……実は俺、転生者なんだ」
「えっ、どうゆうこと? ちょっと意味が分からないんだけど」
さすがにルミナも転生という言葉には驚いたようだ。
「俺は死んでも、記憶やレベルを受け継いで別の体で生まれ変わるんだ。しかも今回で百回目……」
「えー、なんかズルいなぁ」
「えっ?」
ズルい? 全く予想していない答えだった。信じてくれず嘘つきとか化物とか気持ち悪いとか言われることはあるが、ズルいと言われたのは初めてだ。
「こんなバカな話、信じてくれるのか? こわくないの?」
「だってルクスはルクスだもん。私の愛を舐めないでもらいたいわね。まぁ、たしかに驚きはしたけど」
さらっと恥ずかしくなることを言ってくれる。
「そっか、ありがとう」
正直嬉しかった。今まで全てを話して受け入れてくれるのは両親ぐらいだった。いや、親でも利用しようとした者、家から追い出した者もいた。
「よし! じゃあこれでお互い秘密はなしね。これからも何かあったら二人で話し合いましょう。もう只の他人じゃないんだから」
「わかった……」
何かずっとあった胸のつかえが下りた気がした。気分も体もスッキリした。話してよかったのかもしれない。そう思うと自然に涙が流れてきた。安心したからか分からないが、何故か止まらなかった。
するとルミナは席を立ち、俺の隣に来て、そっと抱きしめてくれた。俺はルミナの胸の中で声を出して泣いた。
「ごめん、もう大丈夫」
「ふふ、いいよ。こんな私の胸だったらいつでも貸してあげる」
「ほんとに? じゃあちょっと触らせて……」
ルミナの胸に手を伸ばすが、届く前に手を叩かれた。
「調子にのらない! もう! 切り替え早いんだから。油断も隙も無いわ」
ちぇ、チャンスだったのに。
「それでルミナのレベルは?」
「私? なんかルクスのレベル聞いた後じゃ言いにくいな。えっと、今は102レベルだよ」
「102! すごい! 十六歳で三桁レベルに達した人初めて見た」
出会ったころは100レベルぐらいだったはずだ。それが三年足らずでもう100レベルを越えている。百回転生した俺が信じられないくらいに成長が早い。早くスキルを見てもらわないと。
「でもお兄ちゃんも百は越えていたと思うよ。だから今はどれだけ上がっているのか……だから私はまだまだ強くならなきゃ」
「ルミナならまだまだ強くなれるよ」
この兄弟一体何なんだ……しかし、十年前で100レベル越えか。俺より強くなっているとかないよな。今回の世界……もしかして今までより難易度高いのか?
「ありがとう、ルクス。大好きだよ」
「あ、うん。俺もだ大好きだよ」
考え事している時に、急に言うのはズルいよ……
その後、お互いのステータスを紙に書いて教え合った。
ルクス
LEVEL:755
HP:27000
MP:32000
攻撃力:8500
防御力:8000
魔力:10000
俊敏性:9800
運:80
今回の転生はレベルもそうだが、特に魔力の上がり方が高いな。
ルミナ
LEVEL:102
HP:3400
MP:3200
攻撃力:1050
防御力:1050
魔力…1050
俊敏性:1500
運:60
ルミナはバランスがいい。しかし、敏捷性とMPの上がり方が激しいな。約四倍に上がっている。究極魔法を使えるようになったのが影響しているのだろうか……剣ばかりに頼らず魔法も使っていければもっと幅広く戦えるだろうな。