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ガーランド邸

 クレアとの約束の時間となったため貴族街にあるクレアの家に向った。

「えっと、ここでいいんだよね?」

「うん、あってると思うよ……」

「入口どこかな……」

 俺達は迷っていた。いやクレアさんの家には着いているのだ。ただ広い。百メートル×百メートルはあろうかという敷地だ。敷地は柵で囲まれており入ることができない。どこかに入り口があると思うのだが……

「しょうがないからこの柵壊す?」

 ルミナが変なこと言い出した。お腹いっぱいでおかしくなったか?

「駄目だろ。捕まっちゃうぞ」

「ばぁか。冗談に決まってるじゃない。こんな柵飛び越えればいいのよ」

「それでも捕まると思うよ……」

 そんなやり取りをしながら俺達は柵の周りをひたすら歩いていた。すると警備の兵が二人立っており、正門のようなものが見えた。

「おっ、あれが入口じゃないか」

「だねぇ、やっとついたぁ。つかれたぁ」

 目的の場所が見えて、二人とも駆け足になる。

「お前ら止まれ!」

 走って向かってくる俺達に向かって警備兵が静止する。

「何の用だ。お前らガキが来るとこじゃないぞ。早くママのところに帰りな」

 なんて口の悪い警備兵だ。久しぶりにこんなのムカつく奴にあったな。あっゴラン以来か。しかしこんな奴雇っていたらガーランド家の品格が問われるぞ。よし、あとでクレアさんにチクっておこう。

「いえ、クレアさんに呼ばれているんですが……」

「はぁ? お前らガキをクレア様が呼ぶわけねぇだろ。早く帰らないと痛い目にあうぞ」

 警備兵はそう言うと持っている剣で俺達を威嚇してくる。

「お、おいやめろ!」

 もう一人の警備兵が何かに気付き慌てて止めだした。

「なんだよ。邪魔するなよ」

「バカ野郎! あの女性がつけているネックレスが見えないのが!」

「えっ!! あっ、あれは……ガーランド家の家紋! ま、まさか。いやそんなわけない。大方どっかで拾ったか、偽装したものに違いない。そんな不届きものはこの場で切り捨ててやる」

 警備兵の一人はいきなり剣を構え俺に向かって切りかかってきた。

「ばかやろう! やめろ!」

 もう一人の警備兵が止めるが間に合わない。が……俺にたかが警備兵の剣が届くわけもなく、剣を指先で掴かみ半分に折った。

「よかったな、切りかかったのが俺で。ルミナに切りかかっていたら、殺していたぞ」

 まぁ、ルミナに切りつけたところで傷一つつけられないだろうけど。

「ひっ、ひぃぃぃぃ。ばっ、ばけものだ」

 警備兵は腰を抜かして尻餅をついている。誰がばけものだ。こんなかわいらしい青年に向かって。

「何を騒いでいる!」

 正門が開き、クレアさんが中から出てきた。

「あっ、クレア様いいところに来られました。ガーランド家のネックレスを盗んだばけものが乗り込んできたのです。よからぬことを企んでいるに違いありません。私も戦ったのですが、惜しくも敗れてしまいました」

「おいお前、私の友人であり客人でもある二人に向かってばけものといったか。その折れた剣……まさか切りつけたのか。バカヤロウ! そのネックレスは、私が彼女に預けたものだ。それに惜しくも敗れただぁ? そこの男は、変態だが私でも太刀打ちできないほど強い男だぞ。お前ごとき蟻と一緒にするな」

 警備兵の顔は青ざめていた。ちょっと待って。なんか変態とか聞こえたよ。まだ覗きのこと引きずっているのか。男なら誰でもするだろ。むしろ正常だ。しかし、私でも太刀打ちできないとか言っていたな。やっぱ力はばれていますね。

「も、申し訳ございませんでした」

「私に謝っても意味ないだろう。ルミナさんと、ルクスくんに謝りたまえ。まぁ今さら謝ってもクビなのは変わらんが。実際にクビが無くなるよりましだろ」

 警備兵はますます青ざめ俺達に謝ってきた。さすがに許すつもりはないので無視した。警備兵は一方的に謝り終わるとその場を走って逃げていった。

「嫌な思いをさせてしまったな。申し訳ない」

 クレアさんまで深々と頭を下げ謝ってきた。

「いえいえ、クレアさんまで謝らないでください。別に被害はありませんでしたし。ただあんなのを雇っているとガーランド家の品格を落としますよ」

「うむ、肝に銘じておく。では改めてガーランド家へようこそ。父も中で待っている。あと、ネックレスは返してくれ」

「やっぱり返さないとダメですか? くださいよ」

 と冗談で言ってみたが……

「ほしいのか? じゃあ私と結婚して婿に入ればくれてやろう」

 と冗談が返ってきた。えっ、冗談だよね。

それを聞いたルミナは、

「はい返します。ありがとうございました。いっぱい美味しいもの食べられました」

 いそいそとネックレスを外してクレアに渡した。するとクレアさんが耳元で

「いっぱいとか言っているが大丈夫なのか?」

 と言ってきたので親指を立てて合図した。

「よかった……」

 クレアさんもほっとしたようだ。

 敷地の中に入ると広い庭や、道場のような建物、そしてバカでかい家があった。人が住むのにこんなデカイ家が必要なのだろうか……

 家の中に入ると多くのメイドが出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ、ルクス様、ルミナ様」

 一糸乱れぬ動きと挨拶に驚いていると、奥から一人の男性が歩いてきた。年齢は三十代後半だろうか。髪の色はクレアと同じ銀髪で、鋭い目つきをしている。なによりもオーラが違う。自信に満ち溢れ、常人では成しえない多くの経験を積んできた猛者だということがわかる。きっと殺気を放つだけで多くの冒険者や魔物を行動不能にできるだろう。間違いない。この人がアスール唯一のランカー、グレイブ=ガーランドだ!



 



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