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ロッソへ

 俺はブランに戻ると、セラさんと共に城へ戻った。アメリアの部屋の扉を開けると、アメリアはベットで寝ており、ルミナはアメリアの手を握っていた。ルミナが俺達に気づくと、ゆっくりとアメリアの手を布団の中に戻し指を唇に当てて、シーという仕草を見せる。俺は頷き部屋を出ると、ルミナも部屋から出てきた。


 ルミナは小さな声で、


「アメリアさん、今は落ち着いてぐっすり眠っているよ。ルクスの方はどうだった? シャルルは?」


 俺は首を横に振る。


「そっか。あれ? ルクス服がぼろぼろだけど、何かあったの?」


 先ほどの戦いで大きな傷は受けなかったが、細かい傷はいくつもできた。エンドが最後に放った回復魔法で傷は奇麗に治ったが、さすがに服までは再生しない。


「プラシアでエンドっていう男に会ってさ。挑まれて少し立ち会ってきた」


 そう言うと、驚いた顔で俺の体をまじまじと見る。


「相当強かったんじゃないの?」


「あぁ。多分本気でやっていたら負けていたよ」


「相手はランカーⅠだからな。仕方なかったと思うぞ」


「ランカーⅠ!」


 ルミナの声が驚きのあまり大きくなり、隣でアメリアが寝ていることに気づき思わず口に手を当てる。


 セラさんに仕方ないと言われても、俺には悔しさしか残っていなかった。正直百回も転生した俺よりも強い人間はいないと思っていた。だからといって諦めるわけではない。弱いなら強くなれば良いだけの事。決して届かぬ相手ではないし、今はルミナもいる。レベルだって上がりやすくなっているのだから、これからの努力しだいで何とでもなるはずだ。


「とりあえず敵ではないようなので良かったですよ。今の俺に足りないものも分かりましたし。あっ、さっき言っていた物を借りてもいいですか? 会談までにやれることはやっておきたいので」


「おぉ、そうだったな」


 セラさんはボックスから分厚い本を取り出した。


『魔法生成の仕組み その一』から『魔法生成の仕組み その五』の全五巻だ。たしかこれを全て理解すれば無詠唱魔法が使えるんだったな。


 一冊ずつ、その重さを噛みしめるように自分のボックスに移していく。俺のボックスにはこれで回復魔法の本と合わせて十五冊の本が入っていることになった。重さなど感じるわけはないのだが、ずっしりと体が重くなった気がする。


「ありがとうございました。いつになるか分かりませんが必ず返します」


「ルクス君が本気になれば、すぐ使えるようになるさ。では、私はグレイブのところへ行くよ」


 そう言うセラさんに俺は再度礼をすると、貸しイチだぞと笑いながら城を出て行った。


「じゃあ、俺は別室で勉強するから、母さんが目を覚ましたら呼んで」


「うん、分かった。それにしてもルクスよりも強い人がいるなんて信じられないな」


「世界は広いってことだな。ロッソやアマレロにも強いランカーがいるかもしれないしやれることはやっておくよ」


 実際、ランカーⅡとランカーⅢは相手国にいることは分かっている。エンドより強いということはないのだろうが、俺と同等……いや上のランカーがいてもおかしくない。ロッソのランカーのカインを倒していたことで甘く見ていたかもしれない。そう考えるとプラシアに行ったのも無駄ではなかったな。


 そう思っていると、ルミナが何やら考え込んでいる。


「ルクスは無詠唱の勉強からするんだよね。私、回復魔法の勉強やっていいかな。もし使えるようになれば、何かあったとき役に立つと思うし」


 確かに回復魔法を使える人が増えると助かる。消費も多い魔法なのでセラさんだけに頼るわけにもいかない。しかし回復魔法を覚えるためには無詠唱魔法の倍の量の本を理解しないといけないはずだ。たしかセラさんで五年かかったとか言っていたな。まぁ、今回の戦いに間に合わなくても、今後の為に必要かと思い、ボックスから『人体の仕組み その一』から『人体の仕組み その十』を取り出しルミナに渡した。


「ありがとう、ルクス。本なんて読むの久しぶりだけど頑張ってみるね。じゃあ私はもう少しアメリアさんのそばにいるから」


 ルミナは静かに扉を開け、アメリアの部屋に戻っていった。


 そしてロッソへ旅立つ日まで各々やるべきことをやりつつ、その日を迎えた。


 俺とアルスとセラさんは、城の入り口の前に集まっていた。ルミナ、アメリア、グレイブ、宰相のベラールもそこにいた。アメリアもゆっくり休んだこともあり、すっかり良くなったようだ。


「ルクス気を付けてね。あとシャルルのことは宜しくね」


「あぁ、任せてて。絶対シャルルを連れてかえるから」


 任せてとはいったものの、ロッソにいるという保証はないので不安だったが、ルミナを安心させるためにもそう答えた。無詠唱魔法の方もこの数日必死で取り組んだが、一巻の三分の一ほどを理解したところで時間切れとなった。いきなり始めてもそんなものだろう。千里の道も一歩からだ。焦らずいこう。


「ルクス、セラ、アルスが無茶しないようにしっかり見張っていてね」


 アメリアが本気で、俺とセラさんにお願いしている。普通逆じゃないだろうか。セラさんは当たり前のように頷いているし。グレイブは不機嫌そうな顔で立っていた。よく見ると何やらところどころ焦げている気がする。またセラさんと何かあったのだろうか。とりあえず面倒だし気づかなかったことにしておこう。


 そして皆が見守る中、セラさんのトランスファーでロッソへ向かった。


遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

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