表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/118

エンド

 俺が放った、炎の槍は一本残らず、目の前の男に直撃した。轟音が鳴り響き、激しく土煙を撒き散らす。

 これだけの魔法をまともに受けて無事でいられるはずがない。土煙の中を目を細めて、男の姿を探す。


 やがて、煙が引いていくと、その場に立ち尽くす男の姿が見えた。


 まさか効いていないのか?


 これだけの魔法を受けて、無傷でいられるなら、もはや勝ち目は薄い。祈るように煙が晴れるのを待つ。

 だか俺の祈りは虚しく、男は平然として、魔法を受ける前と変わらずその場に立っていた。いや、変化はあった。男の周囲を青く薄い膜が張り巡らされてる。

 あれはアクアシールド!

 マジックウォールの上位互換の魔法。火属性魔法を防ぐことに特化した魔法だ。強力な魔法だが、普通なら発動まで時間がかかり実践向きではない。それに実力差があれば、耐性を持った魔法で防がれても突破できるのだが、この男には通用しなかった。


「まともに当たってくれるんじゃなかったのか?」


「手を出さないといったのだ。それに、こうした方が詠唱をすることの弱点が分かると思ってな」


 俺はその言葉にハッとした。魔法に詳しい者ならば、詠唱の途中で、何の魔法を唱えるのか分かる。いや、はっきりと分からないまでも、ある程度の属性は分かる。ならば、それに対応する魔法を唱えればよい。


 今までの詠唱のある世界では、気にしたことはなかったが、この世界は違う。これまでの戦い方では、強者には通用しないのかもしれない。


「どうやら理解できたようだな。では、次は俺の番だ」


 そう言うと、右手を前に突き出し。


「ウォーターレイン」


 ファイアレインと同じ至高魔法だ。上空に水球が浮かび、一瞬にして鋭い針のように変化し、幾千、幾万もの針が俺に高速で向かってくる。このままでは全身が串刺しにされてしまう。咄嗟に防御魔法を唱える。


「マジックウォール」


 俺を守るように、光り輝く壁が何枚も重なりあう。

 

 頼むっ、もってくれ!


 マジックウォールに無数の針が突き刺さり、俺の願いも虚しく、壁が次々と割れていく音が聞こえる。そして、俺を守っていた最後の壁が割れた。魔法の直撃に堪えようと、歯を食いしばる。が、俺のマジックウォールを全て割り切ったと同時に男の魔法も消え去った。


「ほう、この魔法にも無傷で耐えるか」


 男は自分の魔法を防がれたというのに、どこか満足そうにも見える。


「ギリギリだけどな。で、これからどうするんだ? 真剣にやり合うのか?」


 俺の言葉に、男はしばし考えて込むように沈黙し、


「いや、今日は止めておこう。まだ時期尚早だな。また会う日を楽しみにしておく」


 俺はホッとした。正直、このままやり合って勝てる絵は見えなかった。強がってはいるが、相手の発する圧力に、緊張で喉は乾き、震える手をなんとか抑えている。しかし、なぜこのタイミングで現れたのだろう。これだけは聞いておかなければならない。


「何が目的だ? もしかして、ロッソかアマレロのスパイか?」


 男は軽く笑い、答える。


「まさか。どっちが勝っても、俺は興味ない。興味があるのは、強さだけだ。ただ戦争になるかもしれんと聞いて、お前が死んでしまう前に実力を知っておきたかったまでだ。しかし、そう簡単には死にそうにないようだしな。予想以上だったぞ」


「合格できたようで、嬉しいよ」


 男は再びニヤリと笑い、


「次、会うときは……いや、それまで腕を磨くことだな」


 そして、後ろを振り返る。男の目線には倒れた冒険者達と、手当を続けるセラさんがいた。まさか、セラさん達に手を出す気なのか。そう思い、一歩前へ踏み出そうとしたとき、


「そう、慌てるな。エレメントキュア」


 男が俺の知らない魔法を唱えると、緑色に輝く暖かな風が吹く。その風は俺、倒れた冒険者達、セラさん、視界に入る全ての人々を包み込むと、倒れていた冒険者達が次々と目を覚ます。俺も不思議と疲れが取れていくのを感じる。まさか、回復魔法か。しかもこれだけの人数を一気に回復しておいて、男は顔色一つ変えない。一体何者だろうか。


「あんた何者だ?」


「俺の名はエンド。では俺はそろそろ行くとしよう。あぁ、金を置いていく。これで、ギルドを立て直すといい。加減が難しくてな」


 ボックスからパンパンに膨れた大きな麻袋を取り出し、俺の前に投げた。そして、一瞬で姿を消した。


 エンド……初めて聞く名だ。セラさんなら何か知っているだろうか。俺の実力が知りたいと言っていたが、一体どこで誰から聞いたのだろうか。謎は深まるばかりだがとりあえず何とか乗り切れたようだ。男の気配が完全に無くなると、俺は剣をしまい麻袋を手にし、セラさんの元へ歩いた。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 100回転生してアホほど強い奴が手も足も出ない相手出てくるとか、インフレにもほどがあるのでは? 初期設定で最強だったはずで、だとすれば求められるのは強敵との戦いではないと思うのですが……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ