驚きの連鎖
「ところで、その会談とやらはいつあるんだ?」
セラさんの問に、アルスは三度新たな書状を取り出す。一体何枚あるんだ、その書状。もう一気に出してほしい。
「会談は7日後だ。パーティーはその前日だな。幸い、場所はイグナイトだからセラのトランスファーで飛べるよな?」
「あぁ、一度行ったことがあるからな」
アルスはよしよしといったように、何度も頷く。
「じゃあ、国を空けるのは2、3日で済みそうだな。その間は頼んだぞ、グレイブ」
「任せておけ」
拳を握り、自分の胸をドンと叩く。
「よし、じゃあまた6日後ここに集まるとしよう。ルクスとルミナさんはとうする? もうここが2人の家みたいなものだから、ここに住んでもいいんだぞ」
「いやいや、遠慮しておくよ。俺とルミナもこの町で家を借りているしね」
そう言うと、アルスは寂しそうな顔をする。それを察してかセラさんが、
「おいおい、久しぶりの対面だろ。お互い積もる話もあるだろうし、今日ぐらい泊まっていったらどうだ?」
その言葉に、アルスは期待の眼差しで俺を見る。まぁ、俺も話したいことがない訳でもない。
「はぁ、しょうがない。今日だけですよ」
「よっしゃ」
アルスは立ち上がりガッツポーズを見せる。そんなに喜んでもらえるのなら俺もなんだか嬉しくなる。だがこの城に住むというのとは別の話だ。
「では私達は先に失礼しよう。私もブランに滞在するから何かあったら呼んでくれ。行くぞ、グレイブ」
「そうだな」
グレイブとセラさんは、立ち上がり部屋を後にした。4人だけになると恥ずかしい気持ちがあるが、アメリアは以前と何も変わらないように、
「さて、今日は久しぶりに私が夕飯を作りましょうかね。それまではこのお城を自由に見て行っていいわよ。そのうち自分たちの家になるかもしれないんだから」
「それは勘弁してほしいかな。俺はプラシアで住んでいた家ぐらいの方が丁度いいよ」
アメリアは軽く笑いながら、
「私もそう思うわ。でも私もアルスもこのような立場がありながら今まで自由にさせてもらったのには感謝してるわ。だがら今はその分もこの国の為頑張らないと。それと、ルクスとルミナさんには黙っていて本当にごめんなさい」
アメリアはその場に立ち上がり、俺達二人に深々と頭を下げる。それを見ていたアルスも遅れて立ち上がり頭を下げる。
「もう謝るのは止めてよ。別に両親が王族だからって、俺の父親と母親だってことは何も変わらないし、俺もこれまでと何も変えるつもりもないからね」
そう言って、ルミナの方を見る。
「そうだね。私も元気な二人に会えて単純に嬉しいかな。でもルクスが王子様かぁ。ルクス様って呼んだほうがいい?」
ニヤニヤとして俺の方に顔を向ける。
「俺は全くあとを継ぐ気なんてさらさら無いから。だからルミナが王女様になることも無いから期待するなよ」
すると一転してルミナの顔が赤くなっていく。そして次はアルスがニヤニヤとして俺を見る。
「ルクス、それは将来王様にはならないが、ルミナさんとは結婚するということだぞ」
「え? あっ……」
俺も自分で顔が赤くなっていくのが分かる。もちろん、俺だって将来ルミナと結婚したいと思っているが、そんなつもりで言ったわけではない。
「そんなことより、俺が継がないってなったらどうするのさ。後継ぎいないじゃん」
そう言うと、何故か次はアルスとアメリアの顔が赤くなる。アメリアに至っては、自分のお腹を優しく擦っている。ま、まさか……
「こんな時だけど、ルクスはお兄さんになるのよ」
「えっ?」
突然の告白に只々驚いた。アルスが王だと分かったとき以上の衝撃だ。ていうかまだまだ仲良しだな、この夫婦。仲が良いことはいいことだが、アメリアは今いくつだっけ? まだ40代にはなってないはずだが。なら大丈夫かな。弟かな? 妹かな? いや、どっちでも元気に生まれてくれたら……
一瞬にして、様々なことが脳裏に浮かぶ。
「アルス?」
「あっ、いや、大丈夫。とにかくおめでとう。俺も嬉しいよ。とにかく安静にしてないと」
「ふふ、大丈夫よ。少しくらい動かないと、逆に成長によくないのよ。ただでさえ前より家事とかしなくなったんだから」
アルスは恥ずかしそうに、頭を掻いている。気づけば部屋にいる4人全員が顔を赤くする奇妙な光景になっていた。
「アメリアさん、おめでとうございます。早く赤ちゃん見たいなぁ。きっとルクスに似て、良い子が生まれますね」
「そうだといいけどね。私も年だからとにかく無事に生まれてくれたらいいわ」
再びアメリアは自分のお腹をゆっくり撫でる。
「今日は驚きの連続だよ」
「そうだろうな。俺もアメリアから聞いたときはびっくりしたよ。とにかく夕飯までゆっくりして行ってくれ。泊まる部屋も用意してあるから。じゃあ俺はまだやることがあるので、またあとで」
そう言って、アメリアと共に部屋を出ていった。




