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受け入れがたい現実

 ルミナの一言に思わず口を紡ぐ。自分でも、最早その現実から逃れられないことは理解できる。しかし王子なんて俺はちっともなりたくない。国、そしてそこに生きる民を全て背負って生きていくなんて俺には無理だ。自由に冒険者として生きていく金を稼いで、ルミナとともに暮らしていければそれだけでいいのだ。


 俺が何も答えず黙っているとセラさんが、


「どういうことだ? なんでルクス君が王子って話になるんだ?」


「ルクスのお父さんの名前がアルスなんです。それに母親もアメリアって名前で。二人とも元々冒険者だって言っていたので……さすがにこんな偶然はないかなと。アルスさんは3~4年前にプラシアから出て行って帰ってきてないし」


「なるほど……確かに偶然と片付けるには無理な話だな。グレイブはどう思う?」


 グレイブは少し考えこみ答えた。


「確かにあいつがブランに戻ってきたのは、ルミナさんが言っている時期と一緒だ。ちなみにアメリアが戻ってきたのは、数カ月前だったが」


 グレイブがそこまで話したところで、ルミナが喰いつく。


「そうです! 前にブランを離れてプラシアに帰ったとき、アメリアさんは家にいなくて」


 ここまで現実逃避していた俺も流石に観念した。


「ほぼ間違いなくアルス王は俺の父親でしょうね。言い逃れないほど条件が揃いすぎてる」


「やっぱり! そっかぁ~、ルクスは王子様だったのかぁ~」


 なにやらルミナは嬉しそうだ。


「それにしてもルクス君は浮かない顔をしているな。父親が王ってことはルクス君はルミナさんが言う通り王子ってことになるんだぞ」


 セラさんが不思議そうに聞いてくる。


「王子なんて嫌だからですよ。絶対面倒なことが増えるだけですよ」


 これにはグレイブも頷いていた。


「確かにそうかもしれないな。でも今から王子として何かしろってこともないだろう。アルス王もずっと自由に暮らしていたわけだし」


 確かに……何よりも父親との思い出を振り返っても、国の王子という気配は全くと言っていいほどなかった。むしろちょっと抜けたどこにでもいる父親といった感じだった。なぜこのタイミングで王という地位に就いたのかはまだ定かではないが。


「とりあえず王に会いましょう。まだ俺の父親って決まったわけではないですし」


 セラさんは頷き、


「それもそうだな。それを確認しない事には先に進まない」


 そう言うと、セラさんは宰相の方をチラッと見る。宰相はビクッと反応した。よく見ると目は見開き、全身がブルブルと震えているようにも見える。セラさんに怯えているのか?


「こ、こんなところに後継ぎ様が……」


 急に涙を流し始めた。感動して泣いているだけのようだった……勝手に後継ぎとか言っているし。


「お任せ下さい! アルス王のお子様とあれば話は別です! 私に着いて来てください! 王の下へ案内します」


 それでいいのか、宰相。まだ確証なんて得られてないというのに……


 そして俺達は宰相の案内で玉座の間へ向かうことになった。


「それにしても何故王は自分の子供が数年ぶりに会いに来たのに断ったりしたのでしょうか」


「単純に王様の姿をルクスに見られるのが恥ずかしかっただけじゃないの?」


 その答えに納得いかなかったのか、首を横に振る。


「まさか……アルス王は立派なお方です。あの方がブランに戻ってきたお陰でどれだけこの国が救われたか。王としての振る舞いや姿勢も……いや、存在の全てが尊敬に値します。そんな方が久しぶりに会う子供に恥かしいなんてことはあり得ませんよ」


 ん?? 誰の事だろうか。存在の全てが尊敬に値する? 確かに良い父ではあったと思うが、少し抜けていて、嫁に頭の上がらないどこにでもいる父親だったと思うが。まさかここまできて別人か? それならそれで俺は助かるが……


 しばらく歩くと、やがてひときわ大きい豪華な装飾を施された赤い扉が見えてきた。そして宰相が扉に手をかける。


「では開けますね」


 いよいよか。それにしても少し緊張するな……ゆっくりと扉が開かれる。そして目に飛び込んできたのは、赤い絨毯が真っ直ぐに引かれ、その奥にある玉座に座る一人の男と、その脇にで王に何やら話しかけている女性だった。そしてその二人は、豪勢で煌びやかな衣装に包まれており雰囲気などは異なるものの、紛れもなく俺の両親、アルスとアメリアだった。



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