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情報操作

 俺達4人が王宮へ続く道を歩いているとルミナが、


「そういえば私達、王宮へ行くの初めてだね」


「そういえばそうだな。まぁ特に行く理由もなかったし」


 するとセラさんが意外そうな顔で、


「そうなのか。ルクス君ほどの有望な冒険者なら一度ぐらい王宮へ招待されてもおかしくないのだがな。特にランカーは貴重な人材だ。抱え込んでおこうと思うのが普通なんだが」


 確かにそうかもしれない。国というものはいざという時の為に、人脈の確保には抜かりはない。いざ自分の国がピンチに瀕した時に頼れるものが多ければ多いほど助かる。


「俺は結構動き回っていましたからね。ブランにも大して長居していませんし」


 どっちにしろこのような状況でなければ王宮などには行く気にはならなかっただろうけど……


「セラさんはよく来るんですか?」


 ルミナが興味深そうに尋ねる。


「私はこの国にいたときは半年に一度ぐらいかな。国を離れてからは、年に一度ほどだ。私よりもグレイブの方がよく出入りしているはずだ」


「俺か? まぁ、元王のアルスとはガキの頃からの仲だからな。友達の家に遊びにいく感覚だな」


 グレイブは腕を組んで自慢げに話している。若干、癪に障るがアスール王の人柄を聞くチャンスだ。


「グレイブ、アスール王ってどんな人なんですか?」


「アルス王はなぁ……」


 と言いかけたところで何かに気づいたのか、しばし立ち止まり?


「今、グレイブって呼び捨て……前はグレイブさんって……」


 ちっ、気づいたか……前にも言ったと思うが、グレイブに対して尊敬の欠片もなくなってしまった俺は呼び捨てにすると決めていたのだ。前回は別れの際に使ったのでそのまま流すことができたのだが……


「えっと、何か問題でも? それとも脳筋クソ野郎の方が良かったですか?」


「それはかなり嫌かな。別に俺的には問題はないけど……」


 セラさんとルミナはニヤニヤとこの状況を楽しんでいるようだ。


「まぁ、いいじゃないですか。呼び方ぐらい。俺のこともルクスでいいですから。これで今までの俺達への罪を洗い流せるなら安いものでしょ」


「罪って……」


 グレイブは納得いっていない表情を浮かべるが、思い当たるふしがあるのかしぶしぶ了承したようだ。


 そして和気あいあいと緊張感のないままアスール王が住む城へたどり着いた。城へ続いている橋の前に屈強そうな兵士が二人立っていた。さすがに城を守る兵だけあってそこそこ強そうだ。不審者がいないかと鋭い目を光らせている。


 しかし俺達が目に入るなり、表情を緩め向こうから近寄ってきた。


「グレイブ様、おはようございます」


 背の低い方の兵士がペコリと頭を下げる。


「おはよう。今日、アルス王は暇かな?」


 二人の兵士は顔を見合わせ、何かを確認すると、


「大丈夫ですよ。今日は何の予定も入っておりません」


「よかった、よかった。じゃあ入らせてもらうね」


 そう言ってグレイブが一歩前に出ると、二人の兵士が前にでて止めた。


「ちょっと待ってください。グレイブ様とセラ様は顔パスでも大丈夫ですが、後ろの若い人達はどなたですか? さすがに分からないまま通すわけには……」


 申し訳なさそうに言う兵士にセラさんが、


「おいおい、この国最強の男であり、救世主であるルクス君を知らないとはな」


 ちょっと、セラさんいきなり何をいい出すんだ。その名を聞いた兵士たちは目を輝かせ、


「まさか貴方があのルクス様ですか?」


「え、あ、はい。ルクス様?」


 尋常でない反応に思わず答える。


「いやー噂はよく聞いております。なんと言ってもその強さはセラさんを一発で倒す強さ。それでいて偉ぶらず誰にでも優しく、困った人を見捨てることができないお方。悪を砕き、弱きものを救う、現代の神と噂のルクス様とはあなたのことでしたか。出会う事が出来て光栄です」


「えっと……それは別人では?」


 周りの三人がクスクスと笑っている気がする。


「いやぁ、間違いないですよ。あっ、そう言えば……」


 そう言って兵士は詰所に戻って、何やらゴソゴソと探し回り、一枚の紙を持って戻ってきた。そして俺の目の前でその紙を広げると、俺の激似の似顔絵と共に、俺の事を全身がかゆくなるぐらい褒めたたえる記事が数千文字にわたって書き綴られていた。


 これは……あの情報屋か! 確かに修正しろと言ったがやることが極端なんだよ!


 兵士も俺の顔と紙の似顔絵をまじまじと見比べ、


「やっぱりルクス様じゃないですかぁ。ということは隣にいらっしゃるのは聖女ルミナ様ですか?」


「へ? 私?」


 ルミナは驚きのあまり自分で自分を指差す。


「はい、そうです。この世に降り立った女神。この世のものとは思えないほど美しく、誰もが恋焦がれる存在。それでいて、その強さは次期ランカー間違いなし。まさに高嶺の華とはルミナ様の為にあるような言葉。いや、そんな言葉では表すことすら失礼に値するお方」


 兵士は興奮したように捲し立てた。その間、ルミナの顔は真っ赤になっている。確かにこれは恥ずかしすぎる。


 グレイブとセラさんも笑いを堪えるので必死のようだ。


「ルクス様とルミナ様であれば、何も問題ありません。お二人が来てくれてアルス王も喜ぶと思います」 


 思わぬ精神的ダメージを受けたが、やっと城へ入る事ができた。

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