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戦力差

「おはよう、グレイブ。昨日はお愉しみだったみたいだな」


 冷ややかで寒気のするような目でセラさんが答える。


「あ、あぁおはよう。ってかこれは?」


 グレイブは体中に貼り付けられたテープを不思議そうに見ている。


 俺とルミナは思わず目を逸らす。


「……さっさと着替えろ。早く城にいくぞ」


 さっきまでの出来事をまるで無かったかのように振舞うセラさん。


「それもそうだな……」


 そしてグレイブさんは近くあったズボンをとり、右足を入れようとしたとき、


「って履けるかぁぁぁ」


 見事? なノリツッコミをみせ、ズボンを床に叩きつけた。


「どうせ犯人はセラだろ? なんでこんな嫌がらせを……」


「さぁ、なんのことかな? 私達が来たときには既にこの状態だったが。なぁ、みんな」


 セラさんはまじめな顔で俺達を見る。有無を言わさないその眼光に思わず、二人とも無言で頷いてしまった。


 グレイブは俺達二人をまじまじと見ているが、決して表情には出さなかった。ルミナはともかく俺も同じことをされたらたまらないのだ。まぁ、さすがにグレイブほど鈍感ではないと思うが……


 グレイブもこのままではらちがあかないと思ったのか、これ以上ひどい事をされるのを恐れたのか、


「ひとまず、犯人捜しは後にしよう。とりあえずこの体に貼りついたテープを剥がさないと」


 そう言いながら、そっと左脛に貼られたテープに手をかけ、ゆっくりと剥がしていく。激痛なのか歯を食いしばっているように見える。テープもよほど強力なのか中々剥がれにくいようだ。これは全部剥がすのは時間がかかりそうだな。


 セラさんも同じように感じたのか、


「じゃあ出かける準備ができたら教えてくれ。私達は下でお茶でもして待ってるから」


 そう言って、部屋を出て行った。俺達もそっと部屋を後にした。


 そして俺達はギルドの食堂で一つのテーブルを囲んで座った。


「セラさん、あれは少しやり過ぎだったのでは?」


 俺は部屋を出るときに見たグレイブの切ない目が少し可哀想になってしまった。


「何を言っているんだ、ルクス君。私と結婚していた時はこんなものじゃなかったぞ」


「そ、そうなんですね」


 どんなものなのか少しだけ気になったが止めておいた。なぜなら……


「今後の為に、ルミナさんには後でこっそり教えてあげるからな」


「はい、是非お願いします」


 と、こうなることが嫌だったわけで……もはや意味がなかったわけで……


 三人がちょうど頼んだ飲み物を飲み終えたころ、グレイブが暗い顔をして階段を下りてきた。キョロキョロと辺りを見渡し俺達に気づくとゆっくりと向かってきた。


 セラさんの横に座ると、ふぅと一息ついた。


「まぁ色々と聞きたいことは多いのだが……」


「私がなぜブランに来たのかってことか?」


 まるで悪びれていないセラさんがサラッと答える。


「いや、それはなんとなく分かる」


「まだ犯人が誰か知りたいのか?」


 まるで自分は関係ないこのようにサラッと答えるセラさん。


「いや、それもなんとなく分かるからいいかな。とりあえずなんでセラとルクス君達が一緒にいるんだ? たしかロッソに向かったはずじゃ」


「セラさんにも話しましたけど、ロッソで色々あったんですよ」


 セラさんに話したことを再びブレイブにも話す。


「たしかにそれは色々あったな。しかしカインかぁ。懐かしいなぁ」


 さっきまでは落ちていたグレイブだったが、カインの話をすると急に楽しそうになった。


「いやぁ、若い頃何度も俺に挑んできたんだ。その度返り討ちしてやったんだけどな」


 魔法が得意なカインと魔法を無力化するグレイブが戦えば、結果はそうなるだろう。同じランカー同士なんだし。何度も挑んだってことは相当悔しかったのだろう。


「それでセラと一緒に来たってことは一緒に戦ってくれるんだな」


「もしアスールが攻められるってことになればですけどね。できるだけ戦争は避けたい」


 俺の言葉にグレイブは黙って頷く。


「俺もまだ若い君たちにこんな事に巻き込みたくはないんだけどな。でも今回はそうも言ってられない」


 グレイブの表情がどんどん険しくなっていく。そこでルミナがグレイブに尋ねる。


「そんなに悪い状況なんですか?」


「あぁ、まずロッソとアマレロが組むだけで兵の数がアスールの1.5倍ほどになる。それにランカーの人数も大きく変わる……幸いⅠのランカーはどこの国にも所属してないらしいが、Ⅱのランカーがロッソ、Ⅲのランカーがアマレロにいるはずだ。その他ではⅥ、Ⅶのランカーがアマレロ、Ⅷ、Ⅸのランカーがロッソだったかな。Ⅹのランカーはよくわからん」


 なるほど……確かにそれだけを聞くと絶望的な差だ。ランカーの数だけみても、2対6になってしまう。上位ランカーも相手の国だ。しかし……


「大丈夫」


 セラさんが力強く言い放つ。


「以前のアスールと同盟国の戦争だったら勝ち目はない。なんたってアスールのランカーはこいつだけだからね」


 そう言ってグレイブを指差す。


「でも今回は私もアスールに手を貸すし、あなた達二人もいる。ルミナさんも私を倒すほど力をつけた。実質ランカーが4人いることになる」


「ちょっと、待って。だれがセラを倒したって?」


 慌ててグレイブが割り込む。


「ルミナさんよ」


「まじか……ルミナさんもそこまで……じゃあ俺も勝てないかも」


「でも嬉しい誤算よ。それにルクス君の力はまだまだ未知数だし。私は今回も何とかなると考えてる」


「確かにな。希望は見えてきた」


 その話を聞いていたルミナはなんだか嬉しそうな恥ずかしそうな顔をしている。俺も誇らしくもなるが、不安にもなる。あまりルミナを前線では戦わせたくはない。


「とりあえず今から城に行って、王の考えを聞いておきましょう。まずはそれからよ」


「わかった」


 そして俺達はブランにある王宮へ向かった。




是非ブックマーク、評価をお願いします。連載を続ける励みになります。よろしくお願いします。またキャラ設定など若干変更しつつ再開しているので、編集が間に合っていない部分もありますが、ご了承ください。

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