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お休みの時間

 これで、亜真女はん、お銀ちゃん、お雪はん、貧乏神、千代はん、そしてお婆さまのお話が終わった。うちと義隆は怖い話を知らんから、これで全員が話したことになる。

 怖い話をいくつも聞かせてもろたけど、ひとつ不思議なことがあるからみんなに聞いてみた。


 「なぁ、なんでお話に出てくる人ってみんな悪さすんの? そんなことせぇへんかったら怖い思いせんでええのに」


 うちが問いかけると、義隆と亜真女はんは困り顔になってしもた。お婆さまは「そうじゃのう」と言いながらうちをなでてくれる。


 「まぁ、中には悪いことが好きでやる輩もおるが、魔が差してしまう者もおるの」

 「つい魔が差してしまうやつには同情するけど、ほんまにどうしようもないやつはいるしなぁ」


 お銀ちゃんと千代はんは湯飲みを手にして何度もうなずいてる。


 「自滅するやつぁ放っといたらええけど、悪さして尚のさばっとるやつがおるときは儂らの出番やな!」

 「出番?」

 「せや! 悪い奴らを懲らしめるんや!」

 「貧乏神、お前気ままに取り憑いとったんとちがうんか」

 「何をゆーんや。儂が取り憑いた奴が悪い奴に決まっとるやないか! ええ奴を貧乏にするほどひどないで、儂」


 驚いた。貧乏神って悪い人を懲らしめてたんや。なんか千代はんが貧乏神と言い争ってるけど、一体どうしたんやろ。


 「それじゃ、うちも悪い人を懲らしめられるようになりたい」

 「ほほほ、それは大したものじゃのう」

 「お婆さま、うちは本気やで!」


 お婆さまは上機嫌でうちを抱え込まはった。その様子からなんか冗談やと思われてるみたいに見える。

 いつもならそのままお婆さまの膝の上に座るんやけど、今はなんか小馬鹿にされているみたいで嬉しない。そやから離れようとするんやけど、お婆さまが離してくれへん。

 うちがそうやってもがいてる様子を見てみんなにこにこしてるのを知って、うちはむくれた。みんなひどい!

 それで諦めてじっとしていると、ふとひとつの疑問が頭に思い浮かんだ。


 「なぁ、みんなが人を呪ったらどのくらい効果があるん?」


 さっきみんなが怖い話をしてくれたけど、みんながあんな風に人に悪さをしたらどうなるんやろう? うちは気になった。


 「わしは幻覚を見せるんが得意やな。逆にそれ以外はさっぱりやけど」

 「それなら、わしも取り憑いた家を繁栄させることはできても、他はさっぱりじゃな。まぁ、がんばったら先の話みたいに呪えるかもしれんが、貧乏神には勝てんじゃろ」

 「さすがに貧乏にさせるなら儂に敵う奴なんかおらんやろ! おったら商売あがったりやで」

 「私も雪を降らせたり周囲を凍らせたりすることくらいですね。凍死するくらいまで冷やすことはできますけど、呪うとなると専門外ですね」


 千代はんを皮切りに、お銀ちゃん、貧乏神、お雪はんと順番に答えてくれはった。意外なことに呪うのはみんな苦手らしい。


 「そ、そうか。よ、四人とも能力が特化してるから、の、呪い関係の能力が低いんですね」

 「ああ、千代さんは驚かせるための能力、お銀ちゃんは家を豊かにする能力、貧乏神が家を貧しくする能力、お雪さんが雪を降らせたり物を冷やしたりする能力って、それぞれ目的がはっきりしてるもんな」


 義隆が具体的にゆうてくれたんで、亜真女はんの言いたいことがわかった。みんな、呪うのは苦手なんや。


 「あれ、それやったらお婆さまはどうなるん?」

 「妾か? 大抵のことはできるぞ。さすがにお雪と物を凍らせる能力を競うとなると大変じゃが、できんことはない」

 「お婆さま、すごい!」


 さすがお婆さまや! みんなの得意分野でも同じように競えるなんて!


 「玉尾殿は規格外じゃろう」

 「そ、そうですよね。の、呪いのことなら、こ、この中だと専門家と言っていいんじゃないですか?」


 お銀ちゃんと亜真女はんの話を聞いてうちは尊敬のまなざしでお婆さまを見た。すると、お婆さまはまんざらでもなさそうな表情をなさった。

 でもそこで、うちは自分がどうなのか気になった。おんなじ妖孤やけど、まだ尻尾はひとつしかないし。


 「うちもお婆さまみたいになれるかなぁ」

 「ほほほ、美尾ならなれるとも。心配せずともよい」

 「そうなん?」

 「不安ならばこれから少しずつ修練しようか。ふふふ、ちょうどよい相手もここにおる。あやつに小さなことから試してゆけばよい」

 「げっ、俺?!」


 お婆さまの視線の先には義隆がいた。なんか焦ってるようやけど、うちは近くに協力者がいて嬉しい。


 「そっか、義隆やったら気兼ねなく呪えるやん!」

 「いやそこは遠慮してぇな!」

 「義隆や、美尾への協力、惜しむでないぞ」

 「うわ強制かいな!」


 義隆が猛烈に抗議をしてるけど、お婆さまは涼しい顔をしたまま受け流したはる。よし、明日から修行しよう!


 「あら、もういい時間ですね。そろそろ休みますか?」

 「本当じゃな。もう寝る時間じゃ」


 気がつけば、お銀ちゃんのゆうとおり、いつもなら部屋に戻ってる頃合いや。あ、気づくと眠うなってきた。


 「お婆さま、うち、眠たなってきた」

 「そうか、なら今宵はこれまでにしようかの」


 お婆さまの一声にみんながうなずく。

 これで、夜のお話はお開きや。みんな立ち上がって台所に行ったり、洗面所に行ったり、お手洗いに向かったりする。

 うちもお婆さまに促されて立ち上がると、自分の部屋へと向かった。

 明日は何して遊ぼかな。

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