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敵襲 アリシア編 6

私が軍隊に入ってようやく知りえたこと

それは二つある

一つは自分のペアがどうしようもなく(やはりというべきか…)アホだということ

「ぐあっ!」

「何をすんだてめぇー!!」

私とペアを組むサリアは目を離すとすぐにこれだ。

何かと喧嘩を起こすのが得意なようで、気が付いたときには殴り合いをしているし

それが終わったあとには必ず身体のどこかにスリ傷を負っている


まぁ、おかげで私は彼女がどんな動きを得意としてどんな時、どんな魔法を使うかを知ることができる


そういえば、魔法についての説明もしなければいけない。


魔法というのは簡単に話すと、投与された薬の副作用で手に入れた異能のこと

私は以前どこかで投与されたことがあるらしく、ある物体を自由に動かすことができる。

そして、サリアはというと…


「オラァ!!」

女性の細い腕から発せられるとは思えない剛力で相手を投げ飛ばすことができる。

とはいっても、彼女は自分の力の使い方をあまり理解していないらしくいつも相手を投げ飛ばしているだけだ

おかげで相手を倒すことには繋がらず、取っ組み合いはいつまでも終わらないままだ。

見た目はとても美しいのに、中身は脳筋

現実は酷なもので、悲しい限りである

「何をしているのだ貴様らぁ!!」

そうしていると、どこからか我らが教官の怒声が響き渡る。

いつまでも終わることのない醜い争いは、教官の一喝によって毎回幕を閉じるのだった。


「すまねぇな、いつも…。」

「まったくだよ…。」

相方の暴走を放置した責任として、私は彼女とともにランニング20週を言い渡されていた。

「チッ…。サリアめ…。」

そして、私の横目には先ほどサリアと喧嘩を繰り広げていた(正確にはぶん投げられていた)長身の男、ドミーが愚痴を吐いていた。


「おいおい、あんまり私のペアを虐めないでくれないか?私まで罰をもらうんでな…。」

「あっ、ああ。それはすまねぇな。だがサリアがよ…。」

どうやら両者言いたいことはあるみたいだが、あいにく私は微塵も興味がない。


自分なりの説明をし始めた彼を置いて、走ろうと距離を出そうとしたその時

「…あれは?」

どうやら、ここから見える城門の内側で、誰かが物々の交換をしている。だがこんな時間に何をしているんだ?

「いってみるか?」

ドミーが面白そうな口ぶりでそそのかす。

「いや、やめておく…関わりたくないしな。」


ようやく私が知りえたことの二つ目…

自分がどうしようもなく、周りに流されやすいことだ。

軍の誰かと何者かがある一定の日ごとに取引を行っているのは知っていたが間近で見ようとは。

「酒とか食い物かな…?」

「いいや、あれはどう見ても違う。あんな場所でこそこそしているのはきっと違う何かの取引じゃないかな。」

「一度見てみるか?」

「私も興味がある。」

「こんな時だけ、仲が良いんだから…まったく。」

気付くと、サリアが傍にいて興味深々な様子で彼らの方を除いていた。

彼らに流されて、私は近くまでよってみることになった。

今更ながら私も場の雰囲気に流されやすい、仕方のないやつだったことがいけなかったのかもしれない。


「なあ、何してんだ?」

!!

突然何が起きたのか理解できなかった。

「冗談だろ?」

私たちを囲むようにして兵士たちが手持ちの銃をこちらに向けてきたからだ。

「何だ、お前らか…。」

ホッと息を撫で下ろすも銃を構えたままの同期たち。

彼等のこちらをいぶかしむ視線を浴びながらも、私は横に置かれた荷物を間近で確認する。

それはどうやら、何かの薬品のようだった。


「こんなこと教官にばれたら、間違いなく独房行きだぞ。分かってんのか?」

「なら、取引をしよう。ドミー、お前も悔しいだろ?」

「取引だと…?」

「ああ、こいつを使えば俺たちも強くなれるのさ…魔法を自在に操ることのできるそいつらみたいにな…。」

同期の男の一人がこちらを妬むように睨み付ける。

その視線には、様々な感情がうごめいてみえるようだった。

「俺らもこれを使えば、こいつらみらいになれるかもしれねぇ…。だから俺らはこの人たちと取引してたんだ。」

彼らの視線の先を見ると、研究服を着た一人の女がいる。

「私は頼まれただけですけどね…。」


「俺は反対だね。」

「なっ。」

「薬を使えば強くなれる?魔法を使って?冗談じゃない。俺はそんなことのために軍に入ったわけじゃないんだ。このことはちゃんと教官に報告させてもらう。」

ドミーがそう言葉を放った瞬間

バンッ!

銃声が響くとともにドミーが倒れこむ。

「ぐっ…てめぇ…。」

「取引は失敗だな。お前らには死んでもらう。死体の処分は任せておけ。」

「やばいな…こりゃ…。」

「また厄介ごとか。」

私は溜息をつきながらも、サリアと視線を交えつつナイフを取り出す。

すでにそこには血の匂いがまじっていた。

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