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天界司書 結城沙織ですが何か?  作者: 苦労猫
一章 天界司書誕生 
1/39

え? あたし死んじゃったの? 責任とれ責任を!

 病院で手術を受けて目覚めたあたしは愕然とした。

 真っ白い服を着せられ、真っ白い空間に横たわっている。

 その横に螺髪の奈良の大仏のような人が立って居り、申し訳そうな顔をしていた。



 「沙織さん気が付かれました?」

 「ここは何処? 

 たしか、あたしは手術して成功した筈じゃ?

 そもそも、あんた何者なの?」


 「一度に多く質問されても困ります。

 まず、私の名前は大日如来です。」

 「仏様?」

 「一応、此方のトップを務めらせて頂いています。」

 


  はぁ? 

  自分から大日如来とぬかしやがった。

  こいつヤバい系の人?


 「はい、あなたは手術の失敗でお亡くなりになられ……」


  やっぱり、そのオチか……。

  あたしは、まだやりたい事山ほど有ったのに、この仏が他人事と思いやがってサラリと抜かしやがった。



 「ふざけるな!あたしの手術の成功率、あの病院での実績100%じゃなかったの?

 隣でやっていた、一か八かの難病の少女の手術じゃあるまいし、あたしがなんで?」


 「非常に申しあげにくいのですが……。

 此方に手違いがありまして」

 螺髪の男は顔を曇らせた。



  なにぃ?

  手違いって何よ、手違いって初耳よ?

  失敗しないから、神仏じゃないの!?

  あたしの人生掛かってるんだから、ふざけんじゃないわよ!


 「手違いって何よ? 間違いって事?」

 「申し訳ありません沙織さん、此方の事務的な手違いで……」

 「事務的な間違い? 」

 「そうです、それで隣の娘の代わりに、あなたを連れて来ちゃったみたいで……」

 「難病で死ぬはずのあの娘の代わりに、あたしが死んだと?」

 「申し上げにくいのですが……」



 螺髪の男は済まなそうに話している。

 この男は、大日如来とか言う偉い仏様らしいがあたしには関係ない。

 温厚で仏(自称)の沙織と言われるあたしも、ついに限度がやってきた。



 「それで済むか! このボケ!!」

 目の前に居る螺髪の男に殴りかかった。

 「ごめんで済んだら警察要らんのじゃ!

 何か? 

 つまりあたしは、隣で手術をして死ぬはずだった娘の代わりに死んだのか?」


 「真に申し上げにくいのですがそうなります……」

 「ふざけるな! 責任とれ責任を!!」

 そう言うと、あたしはヘッドロックで仏様を締め上げた。

 (ニヤっ この男の秘密発見!!)あたしの口角が上がった。


 「ぐ ぐえぇ……。

 判りました!! 判りました!!!」

 仏様は苦しそうにしている。

 


 判れば良いのよ、判ればね。

 きっちり落とし前はつけて貰うからね!


 「どう責任とるのよ?」

 「転生は如何でしょう?」

 「話だけは聞いてあげるわ」



 あたしは結城沙織、悪役(性格だけは) 令嬢 (自称)で美人でスタイル抜群で(以下略……)

 そんなあたしは薄幸の美少女に有りがちな心臓病を患っていたの、勿論ありがちな本好きよ。

 でも、

 みんなの愛(カツアゲとも言う)で手術を受けれるようになって、元気に学園生活をエンジョイする予定だったの。


 ――それが。

 ――それが。

 こいつせいで台無しにされてようとしている。



 「今流行の悪役令嬢に転生はどうでしょう?」

 「何か? 

 このあたしをヒロインによって処刑台に送られろと?

 良くて自殺か?

 悪くしたら凌辱されて殺されろと?

 ふざけるな!!」


 あたしの顔が引きつって来るのがわかり、さらに螺髪の男の首を締め上げた。

 


 「ぐぇ……。

 判りました、判りました!!

 じゃあ 異界転生は?」


 螺髪の男は苦しそうに別の案をだした。

 転生には変わりないから場所が違うだけで、別の案では無いだろう?


 「異界にいって化け物と戦えと?

 悪くしたら人間でも無い物に転生しろと?」

 そう言うと、あたしは締め上げたまま螺髪の男を殴りつけた。



 「痛い!バチがあたりますよ!」

 「ど~ぞ ご勝手に。

 どうせ、あたしは既にあんたらに殺されてる訳だし!

 しかも手違いでね!!」


 更に螺髪を殴りつけると、その突起の数が増えた気がする。


 「痛い痛い!

 私にどうしろと?」



 「沙織さんの意見を聞いてみてはどうでしょう?」

 背後から救急箱を持った優男の仏様が現れた。



 「最初から、そうしたら良かったのよ。

 あたしの希望はね……」

 

 あたしが彼の耳元で囁くと、螺髪の男の顔が引きつった。


 「薬師さん、まだあの図書館の司書、空きはありますよね?」

 「まだ有った筈ですが、大日さん……」

 「沙織さん、其処に転生で良いですね」



  にやっ。

  悪役(性格だけは)令嬢のスキルで司書の椅子ゲット!!

  そう思うと、自然と笑みがこぼれた。

  意外な所でスキルが役に立つものね。


 「よし 其処で手を打ってあげる。

 チート並みな能力込みで転生お願いね。

 もし少しでも違ったら、さっきの知ったあんたの秘密バラすからね」


 螺髪の髪の男は青ざめている。

 「お前はマーラか?

 お前はロクな死に方しないぞ」


 「いえ、ただの天界司書の結城沙織よ。

 それにもう既に死んで居ますからご心配なく、あんた達に殺されてますからね」

 そう言うと、あたしは意地悪く微笑んだ。



 「とっとと、ヴァルハラに行ってしまえ!

 この罰当たりが!!」

 ついに螺髪の男が怒りだした。


 元はと言えば、お前らの手違いだろ?

 と言いたくなったが別れは綺麗にしたいから、

 あたしは二人の仏に会釈した。



 「じゃ またね。仏様」


 そう言うと、あたしは振り帰らずに扉に向かって歩き出した。

 二度と来るな!と言う声は聞こえない振りをして。


こうして、あたしは司書の職を手に入れた(強奪とも言う)。

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