遠くから見つめる怪しい男
フレンチとリヨンが対抗意識を燃やして散歩を始めた頃、何も知らない博士とハニーは都会にあるスポーツ場でバトミントンをしていた。
行きたいと思っていたケーキ屋に向かう最中でスポーツセンターを見つけたので、歩くことに加えバトミントンをすればより体を動かしてその分ケーキが美味しくなるのではないかというハニーの考えで、博士もバトミントンに付き合うことにしたのである。バトミントンは一言で説明すると西洋風羽根つき。
観ている方は楽しいのであるが、やり始めると意外と体力を使うことを博士は実感した。十点マッチを三セット行ったのであるが、結果は博士の惨敗であった。
「ハニーちゃん強いねぇ」
彼が彼女の頭を撫でると、ハニーは満面の笑みを見せた。
その様子を遠くから眺めているひとりの人物がいた。
黒い軍服を着た見るからに異様な中年男性である。
彼は悔しそうに歯ぎしりをして開いていた拳をこれでもかというほど握りしめた。
「ハニー嬢……」
その男の名は、この小説を読んだ読者ならば察しが付くかもしれないが――ハニーを一途に愛するロリコン中年俳優、ジュバルツ=ブラックロー将軍である。




