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夢の中での会話

人の疲れを取る方法は数多く存在する。その中でも風呂(温泉)は疲れを癒すのに最適なものである。そして、ここにもまた、風呂で疲れを癒そうとする人物がひとりいた。


「やっぱりお風呂はいいですねぇ~」


フレンチは風呂が大好きである。彼はシャワー派ではなく、バスタブ派で浴槽にゆっくりと浸かる長風呂を好む。

彼の風呂好きはかなりのもので、一日に朝、夕、そして夜の三回は最低入るようにしている。そんなに入って石油料金は大丈夫なのかと思う読者がいてもおかしくはないが、彼はそんな事は気にしない。

風呂を満喫した彼は丁寧にしっかりと体を拭いて服に着替えて風呂場を出た。彼が出た後は博士とハニーが入る。これは気づかないうちにある種の決まりのようになっていた。

彼らが風呂場に入ったのを確認して、彼は牛乳をコップに入れ、腰に手を当ててゴクゴクと音を立てて美味しそうに飲む。


「お風呂が終わった後の牛乳に勝る飲み物はありませんね」


そう呟き、牛乳のついた口を洗面所で洗って拭いた後に博士の部屋にある漫画を取り出し、読み始める。そこでふと、ある疑問が生まれた。


『博士はハニー君に危ない事をしていないでしょうか?』


フレンチはハニーの身を案じたが、彼は特に危ない事をされるわけでもなく、博士と一緒にお風呂場から出てきた。彼が安心したのを知って疲れが出たのか、フレンチは急に眠くなってきた。


「僕はもう寝ますね。お休みなさい」


「ウム、お休み」


「お休みー!」


ふたりに寝る事を告げ、自室に入った。歯磨きは既にしており、パジャマに着替えているのでいつでも眠れる体勢だ。


「今日こそはいい夢が見られますように」


毎晩身の毛がよだつほどの悪夢にうなされている彼は小さく呟いた後、すやすやと寝息を立てて眠ってしまった。果たして彼は無事にいい目覚めを迎える事はできるのであろうか。



彼は夢の中で星空を眺めていた。

キラキラと輝く美しい星たちの輝きに心を奪われていると、高らかな笑い声と共に彼の隣に闇野髑髏が現れた。彼は穏やかに笑い、口を開く。


「――フレンチ君、きみはシナモン博士にキスされる夢に毎晩うなされているね」


「どうして、そんな事が分かるのですか?」


「私だからだよ」


身も蓋もない発言であるが、この時彼は髑髏の言葉に納得してしまった。

少しの沈黙の後、彼は再び語り始めた。


「きみは博士に夢の中でキスされた後、彼の顔が段々豚に変化していく夢を見て、その度に全身冷や汗をびっしょりとかいて飛び起きる。きみは豚肉に触れただけでじんましんが起きるほどの重度の豚肉アレルギーであるため、幼いころからじんましんを引き起こす元凶である豚を極端に恐れている」


「あなたの言う通りです、髑髏さん。僕は豚が怖い」


フレンチは少し伏し目がちになり、いつもより少し低い声で言った。

髑髏は体育座りをしている彼と目線を合わせるために、自身も大鎌を置いて体育座りをした。するとフレンチはそれを見て思わず吹き出してしまった。


「私が体育座りをするのがおかしいかね」


「はい、とっても。なんだか自然と笑顔になれます」


「フフッ、それはよかった。ところでフレンチ君、もう朝だ」


彼が立ち上がり、指さした方向を見てみると、迫力満点の赤い太陽が昇ってくるところだった。彼は紳士的にフレンチに手を差し伸べ立ち上がらせると、


「今日の夜から毎晩私が夢の中できみを守ってあげるから、大丈夫だよ。では、今日の夜にまた会おう」


その声と共に彼が消えると、それと同時に彼は目を覚ました。

彼は昨日の願い通り、いい夢を見る事ができ、スッキリと目を覚ます事ができた。

フレンチはもう一度目を閉じて、心の中でお礼を言った。


「髑髏さん、昨日はどうもありがとうございます」

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