歌声の起こした奇跡
アップルは元故郷オランダのアイドル歌手であった。そのため、歌は得意中の得意である。しかしながら、自分が歌ってしまうと目立ってしまい皆に迷惑をかけてしまうだろうと考えていたため、滅多に歌うことはなかった。けれど皆が勧めるので人の親切を断ってはいけないと感じ、彼はマイクを受け取って歌い出した。
その歌声はまさに神の声と言っても差し支えないほど見事なものであり、カラオケボックスにいる仲間全員が羨望の眼差して彼の歌声に聴き入っていた。それを聴いていたのは実は彼らだけではなかった。トイレに行こうとしていた客や、飲み物を入れに彼のいる部屋を通りかかった客達も中から聞こえてくる世界レベルの歌声に夢中になった。部屋からは溢れんばかりに後光が差しているが、熱唱している彼は気づいていなかった。しばらくして歌い終わった彼は、何やら外が騒がしいのが気になり、店の外に出てみることにした。
「うわっ!」
彼が仰天の声を上げたのも無理もない話であった。なぜなら彼の歌声に呼び寄せられた牛や馬、犬や猫などの動物達が大挙して彼のいるカラオケ店にやってきていたのだから。アップルの歌の効果で、ヨハネスとフレンチのいがみ合いの感情も消えて仲良くさせることに成功したスフレであるが、高額なカラオケ代を払う羽目になってしまった。




