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喫茶店を覗いたら

「フフフフ、店員よ。当店自慢のコーヒーをいただこう」


「あの、コーヒーはあまり自信がないのでございますが……」


「それでも構わん。俺は今、猛烈に喉が渇いている。できればいますぐに持ってきていただきたいが……できますかな?」


スフレの顔を覗きこむのは、亡霊のように痩せた青白い顔にオールバックの髪、軍服姿が目立つ不気味な中年男性。最初彼を見た時は、コスプレでもしているのであろうかと考えたスフレであったが、男性の風貌から察するにそのような趣味は持ち合わせていなさそうな雰囲気が漂っていた。彼はひとり用のテーブル席に腰かけると、彼がついだばかりのコーヒーが注がれたカップを受けとり、まだ湯気が立っているほど熱いのにも関わらず、そんなことを一切顧みないように男性はゴクゴクと一気に飲み干してしまった。そして再度殺気立った瞳でスフレを見て、低く有無を言わせぬほどの貫禄と威圧のある声で告げた。


「店員よ。お前の淹れたコーヒーは自信がないという割には実に美味だ。もう一杯いただこう」


『俺の淹れたコーヒーを美味いと言ってくれる人がいた!』


彼は中年紳士の言葉に感動し、目の前が急にパアッと開けたかのような感覚に陥った。彼が喜びのあまり放心状態になっていたところに、その幸せをブチ壊さんばかりの勢いで店のドアを蹴破って入ってきたのは、西部開拓の保安官のような恰好をした若い男だった。


「イーハー!西部開拓時代の正義の味方、ロディ参上!!」



ハニーは昨日行った喫茶店にまた行きたいと思い、散歩をするついでに店の様子を覗いてみようと外へ飛び出した。

博士の家とオ=ルボワールからはわずか数百メートルしか離れていないため、彼女はすぐに店に到着すると、音を立てないようにそっと窓を開ける。ハニーは中の光景を見て思わずあっと息を飲んだ。彼女が見たのは、ジャドウとロディが互いの武器を取り出し、戦闘状態に入っているところであった。ふたりが暴れてしまえば間違いなく店は被害を受けてしまう。それに気づいた彼女は扉を大きく開けて店に入ると、ふたり目がけて雷を放つ。ロディはそれをまともに受けて気絶したからよかったのであるが、ジャドウは素早く体を霧にして難を逃れると、ハニーに対しわざとらしくうやうやしく頭を下げた。


「これはこれはハニー=アーナツメルツ。お前のような小娘が、高校生などがデートスポットとして利用することで知られている喫茶店などに、何の御用かね?」


「私昨日このお店で飲んだ紅茶をもう一度飲もうかと思って来たの。そしたらあなた達がいて――」


「喧嘩をしようとしていたからとめたという訳ですな。フフフフ……やはりお前は何も知らぬようだ。仕方がない。この俺が直々に教えてやろう」


彼の瞳が怪しい光を放ったのを見て、彼女は臨戦態勢に入る。


「何をする気!?」


「決まっているではないか。男同士の決闘に水を差すような真似をしたらどうなるかお前に嫌と言うほどたっぷりと教えてやろうと言う訳だ、ブサイクなハニーよ」


「!」


彼の一言が、普段から可愛いと言われ続けられてきた彼女の心にショックを浴びせた。その威力に彼女は開けっ放しにしていたドアから吹き飛ばされる。

立ち上がろうとすると、悪意ある笑みを浮かべたジャドウがサーベルを引き抜き、戦闘態勢に入った。


「フフフフフフフ、俺は女だからと言って手を抜くような真似はしない。なぜなら俺は悪だからだ」


ハニーは彼と間合いをとってVサインを向けた。


「喫茶店の平和を乱す悪党め、ハニーの勝利のVビームを受けてみろっ!」


こうしてついに「シナフレ」史上初のジャドウとハニーの対決が開始されてしまった。その行方は、作者にもわからない。

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