甘い芋の戦利品
博士の家の庭に設置されたプロレスリング。そこでふたりの美少年美少女が死闘をしていた。フレンチはリヨンに裏拳を放つが、彼女はそれを受け止める。彼は体を反転させて拳を見舞うが、避けられてしまう。
「さすがに僕と同じスターレスリングジムで鍛えただけあって、一筋縄ではいきませんね……」
彼は額に流れる冷や汗を手の甲で拭きながらも、少し嬉しそうに笑顔を向ける。
彼女はロープにバウンドし、そこから必殺のローリングソパットを炸裂させ、フレンチをダウンさせる。なんとか気力で立ちあがろうとする彼に、彼女は訊ねた。
「あなたの人力は何万ですか?」
人力とはスターレスリングジムにおける強さの単位であり、それが高ければ高いほど強いということになる。
「僕の人力は四〇〇〇万人力です!」
「フッ……私の人力はあなたの一〇倍の四億人力です!」
一〇倍という絶望的な数値に打ちのめされた彼は、ついにがっくりと膝をついた。
「私の勝ちですね。それでは遠慮なくいただきます」
彼女はリングを降り、戦利品である残り一個のスイートポテトを口に運ぼうとする。
「やめてーっ!」
彼の悲痛の叫びも虚しく、スイートポテトは彼女に食べられてしまった。
リヨンが新しい家族になってからというもの、フレンチと彼女のデザートを巡る闘いは毎日のように繰り返されている。




