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闇野さんと博士

男は、ベンチに腰かけため息をついた。その背中かが「何も語りかけるな」とそっと語っているようだった。人は皆、彼の姿を見かけると、ひそひそと内緒話を始める。地獄耳である彼の耳にはちゃんとそれらの声も聞こえていた。公園で遊ぶ子どもたちも、彼の姿を見ると、指を差して笑っていた。


「人の世は所業無常とは言えども、これはさすがに悲しいものだな……」


金ボタンの黒革のロングコートに黒のブーツ姿の彼、闇野髑髏やみのどくろは、宇宙人たちが経営するヒーロー集団兼プロレスジムである、スターレスリングジムのOBである。無敵の強さを誇り、今だかつて誰にも負けたことのない男だった。スターレスリングジムに所属しているものは、不老長寿が多いが、彼の場合は文字通り不老不死の肉体であった。人類が生まれる遥か前から生存しており、これまでずっと陰ながら地球を守ってきた、いわば守護神である。しかし彼は、時代の変化について行けなかった。


「なぜ私のコスチュームは、人から好かれないのだぁああああああああああっ!」


魂の叫びとも言える絶叫を大空へ向かって放った彼は、ため息をつき、再びベンチに腰を下ろした。


「あなたはもしかして闇野髑髏さんじゃありませんか?」


不意に彼に訊ねたのは、ほかならぬシナモン博士だった。彼は負けたストレスの発散にとジョギングをしており、その途中で彼を発見したのだった。


「博士、私もあなたに会えて光栄です。ジョギングをしていて、その途中で私を見つけ、世間話をするついでに、私にフレンチ君に対抗するために格闘技を教えてほしいとお願いしにきたのですね」


彼は人間であっても年長者であれば、敬語で話す事にしていた。

そこに彼の紳士的な性格を見る事ができる。


「すごい、よくわかりましたね」


「偶然ですよ。そうだ、そろそろお昼も近いですし、一緒にお昼ご飯でも食べに行きませんか?」


「それはいいですね」


そういう訳で、ふたりはランチを取りながら話をする事にした。

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