薬の調合
「千歳ちゃん、どうかね。彼の目は覚めると思うかね?」
彼女は博士の問いを聞いて、片頬だけをあげた笑みを浮かべた。
「フレンチは呪いをかけられたお姫様じゃないんだ。こんなのは、私の薬で簡単に治る。要するに疲労回復の薬を調合すればいいだけだ」
自信満々に言う彼女に、博士とハニーは彼女に頼んでよかったと安心する。正確には彼女に頼みに行って家に連れてきたのは亜月なのであるが、彼らはそんな小さい事を気にするような性分ではなかった。千歳が薬の調合を初めて十分後、薬が完成したらしく、彼女は緑色の液体が入ったフラスコを片手に高笑いを始めた。その悪の科学者を彷彿とさせる笑い声のあまりの大きさにハニーは耳を塞ぐ。
「さぁて、早速フレンチにこの薬を飲ませるとしようか」
彼女は意地悪く微笑むと、眠っている彼の口を強引に開け、中身を全部注ぎ込んだ。すると彼が薄らと目を開けたのである。そして「ふあぁ」と猫のような欠伸をした後、
「おはようございまーす!」
彼の元気のよい挨拶に、ハニーと博士はハイタッチを交わし、千歳はどんなもんだとばかりに胸を反らす。この時までは誰もが千歳の薬の調合が成功したかと思った。この時までは。




