亜月の憧れ
「うわーっ、ハニーちゃんマジ天使!抱きしめてもいいよね!?」
亜月は二階から降りてきたハニーに、いきなり抱き着いてきた。
戸惑い気味の彼女に構わず、嬉しそうな表情で亜月はぎゅっと抱きしめる。下手をするとプロレス技のベアハッグに等しい威力を持つ強烈なハグをしながら、彼女は瞳を輝かせ口を開く。
「私は鈴原亜月。フレンチ君の幼馴染で、日本人です!」
テンションの高い彼女の自己紹介に、さすがのハニーは冷や汗を浮かべ少し引いていた。
「よ、よろしくね……」
「うん、よろしく!」
差し出されたハニーの手を握るなり、ブンブンと力いっぱい上下に振る。
「可愛いって噂の高いハニーさんに出会えるなんて感激!サインくだサイン!」
『なんてベタなダジャレなんでしょうか。彼女のギャグセンスはゼロですね』
心の中でツッコミを入れるフレンチを無視し、彼女は憧れだというハニーにしか集中していない。その様子に少し安堵した彼は、彼女の座っているソファから離れ、博士に買い物に行くように言って家を出た。彼はテンションの高い亜月が苦手なため、買い物に行くという口実を作り、彼女がおとなしくなるまでの間、外で買い物をするついでにブラブラと散歩でもしようかと考えたのである。
しかしながら、平凡な散歩を書いてもあまり面白くないだろうと思う作者がそんな事を許すはずもなかった。そんな作者の考えを読み取ったのか、フレンチは背中にヒヤリと何か冷たいものを感じる。気になった彼が恐る恐る背後に振り向いてみると、そこにはバイクに乗った暴走族がいた。
「オラオラオラオラオラ、どけどけどけどけどけぇ!!」
「ヒイィィッ」




