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ぬいぐるみ

「ハニーちゃんの髪、もっふもふだねぇ」

「そ、そうかなぁ?」

「うん、とーっても柔らかくて気持ちがいいよ」


博士は、ハニーの黄髪のセミロングを触るのが好きだった。

そして今も彼は、彼女のボリュームのある髪を触りながら口を開く。


「女の子って凄く羨ましいと思う事があるんだよね」

「えっ、どうして?」

「だって女の子って髪が長いから、いつでも自分の髪を触って癒される事ができるかと思いと羨ましいなって思って……」

「うーん、そうなのかなぁ。他の女の子はどうか分からないんだけど、私は街を歩いている時に見かける女の人は自分の髪を触っているイメージはあまりないんだけど……」

「やっぱり髪の毛を触って癒される人は少ないのかな。私は人間は生まれつき柔らかいものが好きだと考えているんだけどね。例えば子供って、ぬいぐるみをよく抱っこしているイメージがあるんだよねぇ」

「ぬいぐるみかぁ。私もぬいぐるみ大好きだよ♪」

「やっぱり女の子は可愛いものが大好きなんだね。でも、そこが女の子の可愛いところだと思うな」


ふたりの会話をこれまで冷静に聞き流してソファで読書をしていたフレンチであるが、ぬいぐるみという単語が出てきた途端に、つい集中力が彼らの話を聞く事に傾いてしまっていた。


『実は僕もぬいぐるみが好きなんです、なんて間違っても言えない……』


すると博士が彼に訊ねた。


「ところで、フレンチ君はぬいぐるみとか好きなの?」


その問いに彼は、一瞬ドキッとしたものの、動揺を見せないようにクールな表情で口を開いた。


「バカな事言わないでください。十四歳にもなってぬいぐるみを愛するなんて、幼すぎるにもほどがありますよ」


本当は自分が一番その言葉に当てはまっているフレンチであるが、それを敢えて棚に上げていかにも無関心であるかのように振る舞う事で、ハニーと博士に彼は「フレンチはぬいぐるみが嫌い」という印象を与えたと確信した。


「でも、フレンチ君の家にはぬいぐるみが沢山置いてあったよ?」

「そうなの!?」


博士が訊ねると、彼女は頷いた。彼はこのままでは自分の恐れていた展開になるかも知れないと察し、ふたりの話をこれ以上聞かないように耳を両手で塞ごうとする。しかしながら、それをするよりも早く、博士が次の一言を言った。


「今日はみんなでおもちゃ屋さんに行こう!」


フレンチはあまり乗り気ではなかったものの、ハニーのうるうる瞳の懇願に負け、彼も一緒にデパートに出かける事にした。

普段博士達が買い物に利用しているコンビニとは違う規模の大きさに、デパートにはあまりなじみのないハニーはキャッキャッと興奮していた。彼女の様子を少し横目で見つつ、フレンチは目的であるおもちゃ売り場を探す。


「えーっとおもちゃ売り場は……二階の端の方にありますね。早速行ってみましょう!」


彼が先頭を切ってエスカレーターに乗り、博士とハニーがその後ろについていく。

そして、いざおもちゃ売り場についてみると、博士やハニーよりもフレンチの方が興奮して瞳をキラキラ輝かせていた。

それを遠目で見ていた博士は、隣のハニーに口を開く。


「フレンチ君って意外とおもちゃとかぬいぐるみとか好きだったんだね」

「そうだね♪」


この事実を前から知っていたハニーは、あえてそれを打ち明けようとはせず、ニコニコの笑顔で彼が心から喜んでいる様子を見て、一緒に連れてきてよかったと思った。

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