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遥かな星からはるばると

「気に入らん」


東京の一角にある本屋で、男は眉間に皺をよせ、呟いた。

百九十六センチの長身に引き締まった体つきの若い男だ。着ているシャツからは、はちきれんばかりに鍛え上げられた筋肉が覗き、腰まである茶色の長髪と般若のように凶悪な顔立ちに猛禽類のように殺気を帯びた瞳を見た高校生は、彼を一目見るなり、買いたい本を手に取り、一目散に会計に駈け出した。


「ガキめ」


彼はいまいましそうに言って、改めてライトノベルのコーナーを穴が開くほどに見つめる。


「星野に勧められ地球の本屋まで来たのはいいが……コレが奴のいうライトノベルというものなのだろうか」


彼は試しに美少女のイラストが載っている一冊のライトノベルを読み始める。

一通り読み終えた彼は、クワッと目を見開き、


「この軟弱なガキ共!!」


彼の名は不動仁王ふどうにおう、隠れオタクである美少年の弟、星野天使ほしのてんしに勧められ、遥か彼方にある神の惑星エデン星からライトノベルを読みに来た宇宙人である。



事の発端は、彼の弟である星野の発した一言であった。

それを書く前に彼の事を知らない読者もいるはずなので、彼の弟である星野天使について説明をしておくことにしよう。

星野天使は茶色の髪と白い肌と黒い半眼が特徴の、不動の弟である。顔は可愛いと綺麗の中間で、美形が多いエデン星人からすれば中庸の顔立ちであるが、地球人からすれば相当な美形である。服装はいつも白いシャツに灰色の半ズボンに首に愛用のヘッドホンをかけており、基本年中服装を変える事がない(本人曰く同じ服装を何着も持っている)。名前は違うが、同じ母の元から生まれた実の兄弟である。しかしこの兄弟、髪質を除いて何から何まで正反対であった。弟は穏やかで冷静なのに対し兄は短気で直情的、兄は辛い物好きで弟は甘いものが好き……などなど、違う部分を上げればきりがないが、仲はとてもよかった。

その日、いつものように星野は漫画を読んでいたが、兄は畳で瞑想をしていた。


「不動兄さん、体を鍛えるのはいいですが、たまには読書もした方がいいですよ」

「読書など、俺には無意味だ」

「そんな事言わずに、せめて漫画のひとつでも読んでみたらいかがですか?

あんまり世俗を離れすぎると、地球人にバカにされてしまいますよ」


彼は少し瞳を光らせ、弟を睨む。


「俺が地球のガキ共にバカにされるだと?」


その時星野は心の中でこんな事を考えていた。


『もう少し兄さんをうまく誘導すれば、もしかすると兄さんは僕の好きなライトノベルを読みに地球の本屋さんに行って、ライトノベルにはまって僕との会話が増えるかも知れない』


彼は言葉巧みに上手く兄を誘導して、一緒に本屋へ行く事にしたのであるが、本屋に到着して早々兄がライトノベルコーナーで大暴れしたため、彼は修復光線を放ち彼の尻ぬぐいをする羽目になった。

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