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うなぎ嫌い克服大作戦!

人には越えなければいけない壁というものが存在する。

そして、ここにもまた、己の壁を超えようとしている男がいた。現在、博士はうな重と睨みあいを続けている。


「フレンチ君、これを私に食べてほしいと言うのかね」

「はい。もちろんです」


博士が溺愛する美少年は久々に彼に営業スマイルを見せる。

メープルの登場により、一気に空気が和み、仲直りした博士とフレンチは、ハニーとメープルも誘って食事に行く事にした。都会の食事処に車で向い、駐車所に止めて、歩くことになった。駐車場から食事処までほんの百メートルほどなのであるが、その最中、博士の手が前方を歩いていたフレンチの尻を鷲掴みにしたのだ。


「フレンチ君のお尻、柔らかくて最高……!」

「このド変態ッ」


博士はフレンチの裏拳を受け、ノックアウトされるというちょっとした(?)ハプニングが起きつつも、無事に食事処へ着いた。そして彼らはウェイトレスを呼んで料理を注文する事になったのだが、博士がメニューを決めようと口を開きかけたその時、博士よりも早くフレンチが言った。


「うな重を二人前お願いします」

「な……!?」


驚愕の表情をする博士に、彼は悪戯っぽく微笑んだ。そして話は冒頭に戻る訳であるが、博士はなかなかうな重に口を付けようとしない。


「どうしたんですか、こんなに美味しいのに」


彼は幸せそうな顔でうな重を頬張る。その様子を博士は青ざめて見つめている。


「早く食べないと、冷めてしまいますよ」

「そ、それは分かっているのだが……」


博士はうなぎが何より苦手な食べ物であった。小さい頃鰻の蒲焼きを食べ骨が喉に刺さって以来、鰻に対し酷い恐怖心を抱くようになってしまったのだ。彼は幼少の時から自分にとって最大のライバルである鰻を克服しようと試みた。しかし、鰻を食べると九十五%以上の確率で骨が喉に刺さってしまい、断念し続けてきたのである。それを以前に聞いていた、博士の真正面に座っている美少年は、それを利用して日頃の怨みを晴らそうとしているのである。

ここに来て博士は大好きなフレンチの目の前で大嫌いな鰻を克服しなければならないという最大の試練を迎えたのである。


「博士、僕に騙されたと思って、一口食べてみてください」

「しかしねぇ……」

「僕は完食したから分かるのですが、このお店は骨なしの鰻を使っています。ですから、小骨が喉に刺さる心配はありませんよ」

「本当!?」

「本当です。美味しいから食べてみてください。ホラッ、ホラッ」


フレンチは箸で鰻を切り分け、蓮華で蒲焼のタレの染み込んだご飯と鰻をすくうと、博士の口の前まで持っていく。それを見た博士は、目をキラキラと輝かせ、


『まさか……これは恋人同士でやる定番のアーンと言う奴ではないのか!?』


彼は興奮し、鼻息を荒くしながらも、ニコッと愛くるしい顔で微笑む美少年を見つめる。


『せっかくのフレンチ君の好意を無駄にしては彼が悲しんでしまう。彼の言った言葉を信じてみよう!』


博士は口を開け、フレンチが蓮華の中身を口に運ぶのを待つ。彼は嫌な顔ひとつせずに、中身を彼の口へと放り込んだ。


「……美味しい」

「でしょ!?さ、もっと食べてくださいっ」


フレンチは次第に蓮華でうな重をすくうスピードを上げていき、彼が反芻し飲み込む間も与えず、どんどん彼の口の中に放り込んでいく。しまいには重箱を持ちあげると、それの中身を一気に彼の口へと注ぎいれた。ついでに水を飲ませ、目を回した彼に可愛くも冷たい微笑みで、膨れ上がった彼の腹に渾身のボディーブローを見舞って口に含んだ物を吐き出させ、失神させると口を開いた。


「さっきのセクハラと三日前、僕のアソコを見たお返しですっ」


その地獄絵図のような光景を静観していたハニーは、彼を怒らせない方が身のためだと感じだ。

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