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天然メルヘンお嬢様メープル登場

「日本はいいわね」


空港に、ひとりの美少女が降り立った。彼女の名は、メープル=クラシック。金髪のショートカットに全てを見通すかのように澄んだ切れ長の緑の瞳、ふっくらとした肌に桜色の頬が特徴の美人顔、赤いナポレオンコートにピンクのシャツに青いスカーフに茶色のズボンに白手袋という、中世の貴族のような服装をした彼女は、その優しい微笑みで周囲を癒しながら、空港を出る。しばらく歩いた後に乗り込んだバスのしかめっ面の運転手も、彼女が乗り込んだとたん、ほんわかとした優しい空気に包まれ、自然と頬が緩み、笑顔になっていく。

彼女はバスの中いっぱいに甘く優しい空気を漂わせながら、バスに乗る乗客たちを次々と笑顔にさせていった。すやすやと静かな寝息をたてて眠っていた彼女は、やがてゆっくりと瞳を開ける。アナウンスは、田舎の住宅街駅に到着する事を告げる。彼女はバスの停車ボタンを押して、ピンクの旅行かばんを引きずってバス停を降りた。


「ついに来ましたわ。ハニーさんに呼ばれてきたけれど、なんて素晴らしい住宅街なのかしら。川のせせらぎは聞こえ、豊かな自然の山々に囲まれ、美味しいお米が収穫できる田んぼやお野菜のとれる農家まであるなんて、感激だわ……!」


彼女は緑の瞳をキラキラと輝かせ、嬉しさのあまりその場で愛用のヴァイオリンをケースから取り出して演奏し始めた。すると、その美しい音色を聞いた大小様々な鳥たちが彼女の元へと集まってきた。一曲引き終わる頃には、彼女の周りには数えきれないほどの鳥が止まっており、一種のハーレムのような状態になっていた。


「聞いてくれてありがとう、可愛い鳥さんたち。また演奏すると思うから、その時も、よろしくね!」


鳥たちは分かったとでも言うように口々にさえずると、そのまま羽ばたいて行った。彼女はその様子をうっとりした顔で眺めていたが、急に用事を思い出し、ヴァイオリンをケースにしまい手を叩いて口を開いた。


「ハニーさんのお家に遊びにいかなくちゃ」


彼女は鼻歌を歌いながら、住宅街を好奇心旺盛にあちこちと目をやりながら、ハニーの家へと向かった。


「ハニーさぁん」


博士の家に着いたメープルはインターホンの存在に気付いておらず、外から大きな声で彼女の名を呼んだ。彼女の声に気づいたハニーは、二階の窓から顔を出す。そして急いで一階に降りると玄関を開けて彼女を中に入れた。荷物を置くように言って、座り心地のいいイスに腰かけさせる。そして紅茶を沸かしながら、お菓子を用意して、お茶をしながら彼女と楽しくおしゃべりをする事にした。


「メープルちゃん、よかったぁ、来てくれたんだね♪」

「この街は本当に素晴らしいところね。招待してくださってどうもありがとう」

「いえいえ、こちらこそ、オーストリアから来てくれてありがとう。実はメープルちゃんに頼みがあって……」


彼女が博士とフレンチの仲が悪くなったので仲を取り戻してほしいとお願いしようとすると、メープルはニコッと微笑んで、


「説明しなくても大丈夫。あなたの瞳を見たら、何が言いたいのか大体分かったわ。この家にあなたと一緒に住んでいる人たちの仲が悪くなっているので助けてほしいのね」


説明しよう。彼女は読心術が得意なのである。

彼女はハニーの入れた紅茶を一口飲み、


「そういえば、ここに来る途中で、私の異母弟がこの家の人の助手になったと聞いたけど、本当なの?」

「異母弟?」

「フレンチ=トーストと言う名前なんだけど、知らない?」

「ええええええええええっ!?」


ここにきて、誰もが予想だにしなかった衝撃の事実が明かされた。

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