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フレンチのママ

「あーん、ぱくっ」


「ダメだよ、博士!それは食べ物じゃないのーっ!」


彼女は博士が口へ運ぼうとしているリモコンを取り上げる。

赤ん坊になった博士は、目につくものを何でも噛みつこうとする、かなり凶暴な赤ん坊であった。ハニーも腕やら肩やらを噛みつかれゴスロリは唾液でべとべとになっている。

しかし、ここでベビーシッターを放り投げる訳にはいかないと自分に言い聞かせ、心の奥底にある根性で、彼が噛むよりも早くその物を隠して唾液で汚れる被害を最小限に抑える。彼は自分の思い通りにならないので、手足をバタバタとさせて暴れる。ハニーはそれを見て、なんとかあやせないかと彼を抱っこしてみる。

彼は初めのうちこそ彼女の頬を引っ張って遊んでいたが、次第に彼女の肩を枕にしてすやすやと寝息をたてて眠り始めた。それを確認して安心した彼女は、隣の家であるフレンチの母親の家に行って、食事をご馳走になりに行くことにした。


「あの博士も面白い発明品を作るわねぇ」


彼女に昼食を振る舞いながらフレンチの母は、赤ん坊と化した博士とフレンチを見ながら口を開いた。その思いもよらない返事にハニーは困惑する。

どうして面白いのだろうかと思い彼女に訊ねると、フレンチの母は温かい微笑みを浮かべて言った。


「久しぶりにフレンチが生まれた時の事を思い出したわ。あの時はパパも生きていて……本当に懐かしいわ」


彼女はどこか遠くを見るような目で言った。


「私の子、少し冷めたところがあって普通の子より大人びた雰囲気だけど、アレでも意外と子どもっぽいのよ。あのね、ハニーちゃん。私があの子を博士の助手にしたわけは、子供の時に思い出をたくさん作ってほしかったからなの」


「そうなんですか……あの、実は私、フレンチ君と一緒に過ごしているけど、過ごしてまだ間もないから彼の事あんまりよく分からなくって……それで、彼の事色々教えてくれませんか?」


すると彼女は息子に似た可愛らしいウィンクをして、


「彼の部屋を見ればあの子の事がよく分かるわよ。見せてあげるわ」


本邦初公開であるフレンチの部屋は、一体どのようになっているのであろうか。

フレンチの部屋には、くまの可愛らしいぬいぐるみや馬のぬいぐるみなど、たくさんの柔らかなぬいぐるみが飾られてあった。苺模様のベッドにまでも、抱き枕と一緒にぬいぐるみが置いてある。


「フレンチ君ってぬいぐるみが好きなんですね」


「ええ、ちょっと乙女チックでしょ。あの子はクールを気取っているようだけど、ぬいぐるみで遊ぶのが大好きな可愛い一面もあるの」


彼女の話を聞いたハニーは、笑顔でぬいぐるみと遊んでいるフレンチを想像し、心がほっこりと温かくなった。その後、一階に降りたふたりは、博士とフレンチを見て仰天した、なんと博士がフレンチの頭に大口を開けて噛みつこうとしているのだ。ハニーは慌てて博士を持ち上げよしよしとあやす。


「博士、お腹空いてるの?」


「フレンチ君食べるー!」


「だーめっ、フレンチ君は美味しそうな名前だけど、食べ物じゃないんだよ。分かったー?」


「いーやぁーだぁー!たーべーるのぉー!」


彼が次第に泣き始めようとするので、ハニーは困惑した。するとフレンチの母が先ほど買ってきた粉ミルクを哺乳瓶に入れて、彼にちゅうちゅうと飲ませてあげた。彼は満足したのかハニーの肩で寝息をたてて眠ってしまった。


「助かりました、ありがとうございます♪」


「こちらこそ、どういたしまして。何かあったらいつでも電話してね。すぐ駆けつけてあげるから!」


彼女はフレンチの母の優しさに感謝しながら帰宅した。数日後に博士達はもとに戻ったが、彼女は母親の大変さが少しだけ分かった気がした。

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